続 立て直しに必要なこと
今回はちょっと長め(本作比)です。
本当は毎回これぐらいの量にしたいのですが・・・
―気づいたら朝でした。
悩んでいるうちに椅子に座ったまま眠っていたらしい。
結構意気込んで挑んだはずなのに睡魔に負けてしまうとは。
自分の意志の弱さが情けない。
しかしこの寝落ちパターン2回目だな・・・。
というか、こっちに来てからこのパターンでしか起きてない。
自分の駄目さ加減に打ちひしがれつつ部屋を出ると、階下からいい匂いが漂ってきた。
今日もアルメリアが朝食を作ってくれているらしい。
昨日のことも気になるので、少し速足で1階に降りる。
こっそりとダイニングを覗くとフフンと鼻歌を歌いながら料理をしている姿が見えた。
思ったよりも元気そうで良かった。
「おはよう。」と声をかけて中に入る。
「おはようございます!」
振り向いたアルメリアは笑顔だ。
安心して昨日と同じようにテーブルのセッティングを手伝う。
準備が終わったころにフラン君もやってきて3人で朝食を摂る。
ちなみに、今日もフラン君は僕に冷たい。
挨拶はしてくれたものの、それ以降一度も目を合わせてくれないのだ。
アルメリアとは打ち解けてきただけに切ない。
頑張って話しかけてはみるものの、「はい。」「そうですか。」など短い言葉しか返ってこない。
食べ終わるころには心が折れていた。
「ごちそうさまでした。」
手を合わせて挨拶をしたフラン君はさっさと仕事に向かっていった。
アルメリアも食事を終えて片付けに取り掛かっている。
それを見て一度自室に戻り昨日借りた宿帳を取って戻る。
「アルメリア、片付けが終わったら少し話していいかな?」
結局、この宿にとって付加価値となる良いアイデアは出なかった。
そこで、知恵を借りようというわけだ。
何せ、僕はこの世界に来たばかりの新参者だ。
勝手が分かる人の意見を聞いたほうが良いだろう。
向かい合って座り、冒険者をターゲットにしようと考えていること。
そのうえで、どうすれば集客が見込めるか一緒に考えてほしいと説明した。
「なるほど。冒険者を呼び込む方法ですか・・・。」
首をかしげながら、うーん。と唸るアルメリア。
「やっぱり、難しいかな?」
そんなにすぐ解決策が見つかるならこんなに客足は遠のいていないはずである。
「そうですねぇ。冒険者は基本的に宿では寝るだけなので泊まれればいいと思ってる方が
多いですから・・・。」
そういうものか。
僕にとって宿泊は観光の一環というイメージだからその発想はなかった。
でも、冒険者は仕事で来てるわけだから当然か。
要は元の世界でいう出張先の泊まりみたいなものだ。
まぁ、僕は働いたことないけど。
「じゃあ、ただサービスを向上するだけでは駄目ってことだね。」
そもそも、部屋は綺麗だし、食事もおいしいのでそのあたりにこれ以上力を入れるのは難しい気がする。
ガタリと椅子を引く音に前を向く。
「3人寄ればなんとやら、です。フラン君にも聞いてみましょうか。」
そう言って止める間もなく呼びに行き、すぐ近くにいたのかフラン君を連れて数秒で帰ってきた。
「連れてきました!」
思いっきりのどや顔でアルメリアが言い、こちらを見ている。
可愛いけど、僕がフラン君に嫌われていることに配慮して欲しいです。
まぁ、猫の手も借りたい状況なので事情を説明してみる。
すると、
「・・・冒険者の方に聞いてみたほうがいいのではないですか。」
もっとも根本的な解決法が導き出された。
アルメリアもおおー。と拍手をしている。
これ以上の解決策が出ることもないだろうというわけで、実践してみることになった。
とはいえ、宿を無人にするわけにはいかず、アルメリアには店番をしてもらいフラン君と二人でお出かけです。