第一話 普通、こんな事ありますか?
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やぁ、どうもこんにちは。僕の名前はマーリン、辺境のド田舎にあるアノネ村に住む、ただの魔法使い!
一時期は国に勤める国家魔法使いとして仕えてたけど三十歳を待たずに、貯めたお金で田舎暮らしを始めたのが去年の話。今までの目的を失い、彼女も居なければ、職も無い。もう人生どうでもいいやなんて思ってた僕だが、まさかこんな唐突に死ぬなんて思わなかった。
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それは、夕方に今日の晩飯でスープに入れるキノコを森へ探しに行ったときの事。日頃から村の近くにあるこの森には入りなれており、魔物に出くわした場合腐っても国家魔法使い、まぁ低レベルの魔物しか居ないって事もあるが難なく排除できていた。
「ヒューヒュヒュー、アオダケ見っけ」
今日もいつも通り、もうすぐ夜だというのに口笛吹きながらキノコをまさぐってた時、突然頭に鈍痛と共に視界が真っ暗になる。
死んだ。
全く気配を感じなかった。最初は感知耐性スキルや隠密スキルを使う優秀な盗賊に襲われたんだと思ったんだ。でも、僕は金目の物なんて持ってないのは見れば分かる。持ってて『アオダケ』、だとしたら何で僕?
ステータス確認するまでもなく、体力が一気に0になったのが嫌でも分かる。あぁ、人ってこうやって死ぬんだな。でも、死ぬことは嫌ではない。むしろ無駄に続く僕の人生もようやっと終わる、そう思った。
せめて、次の人生があるならば子供が欲しいな。愛する人と家族を作りたい。真っ暗で何も見えないのに不思議と周りには天使が見える。きっと今から、天に召されるのだろう。
ふわりと身体が浮く感覚、空へと昇っているかな?
周りの音や景色は遮断され、ただ真っ暗の世界でしばらく時を過ごした。
『…………あれ?』
ん? 天国にまだ着かない? そして今、聞こえた声、まさか僕から?
死んで動くはずの無い瞼をゆっくりと開く。何故か開けれた。そして足元には死体が頭から剣を刺され無惨に横たわっていた。
この後ろ姿は僕だ。だとするとこれは僕の死体で……… あーなるほど、頭を剣で一突きか、これは一瞬で死ぬわな。
ん? でも待てよ?
だとしたら今の僕の状態は何なんだ?
咄嗟にいつもの癖で自らのステータスを念じた。
名前:マーリン 種族:ゴースト level:1/9
体力:50/50 魔力:420/420
力:0 拒絶:5 敏捷:9 思考:383 安定:356 運:100
スキル
鑑定:2→4up 光魔法:5 闇魔法:0→1new 回復魔法:3 神聖魔法:5 杖技術:3 剣技術:1 念力:0→1new 隠密:0→1new 光耐性:3→1down 闇耐性:2 物理無効new 毒無効new 睡眠無効new 気配感知:2 魔力感知:4 危険感知:0→1new 料理:3 採取:1
EXスキル
浮遊new 幸運new 記憶の知識new 回復の知識new 気配の知識new
称号
元九賢者 聖職者 蘇りし者new 亡霊キラー 幼天使の加護《賭博》new《智慧》new《癒合》new《存在》new
何じゃこりゃあ!?
突っ込みどころ満載のステータスにもうどこから突っ込んだらいいのか分からん! 一度落ち着け、まず今の状態だ。辛うじて生きていると言えよう、しかし種族がゴーストと言うことは僕は死んだのは間違いない。
そして、ゴーストと言うことは僕は魔物になってしまったと言うことだね。うんうん。
それで生前の僕のスキルや能力はある程度残っていて、新しくゴーストの浮遊スキルや闇魔法スキルに物理無効が追加されたと。何となく理屈は通っている。いや、普通は死んでゴーストの時点でありえないんだけどね?
で、それよりも一番の分からない所…………
――――いつの間に天使の加護が付いた?
天使の加護と言えばまぁ、勇者や、賢者、その他諸々物語に出てくるような人が持っていたと言われる伝説上の称号。実は知り合いに天使の加護を持っていた人を知っているけど、まぁ彼女の事は置いといて。
普通は一つ付けば英雄、二つ以上は伝説の人物レベルなのに僕に四つも付いているのは何かの冗談かな?
僕に一体何が起こったんだ。
考えに考え、数十分悩んだが答えなど出てこない、何せ全く見に覚えに無いのだ、当然である。まぁ一応新たに得たスキルは確認しようと思う。
《闇魔法》LV1:《シャウト》
《念力》強さは思考と安定に左右される
《隠密》気付かれず行動する技術
《危険感知》この身におよぶ危険を早くに感知する技術
《浮遊》飛行スキルの一つ。宙を漂う
《幸運》不運を無くし運を100に固定する
《記憶の知識》スキルLV上昇率小up。スキル取得率小up。魔力、思考、安定上昇率小up
《回復の知識》回復魔法の再利用時間が3/1になる。魔力、思考上昇率小up
《気配の知識》気配系スキルLV上昇率、取得率小up。安定上昇率小up
《蘇りし者》一度死に至り、蘇った者に送る称号
スキルが凄すぎて言葉も出なかった。
特に知識シリーズは天使の加護で必ずと言って良いほど習得するスキルで、成長に補正がかかりかなり強力なスキルだ。それを三つ?
あー何も考えたくないな。とりあえずこのグロテスクな僕を片付けようかな。
現実逃避の為、何かしようと思ったがゴーストになったわけで直接自分の死体には触れらず、透き通るだけだ。
『実体が無いのか、まぁゴーストだし当たり前だけど、どうしたものか。そうだ、ゴーストと言えばあれだ!』
そこで昔ゴーストを倒していた時を、思い出す。奴等はあれを使う。新しく取得したスキル念力だ。さっそく―――
『おっ、持った感覚がしない、身体があるときより便利かもしれないなこれ』
楽チン念力だが死体を持ち上げるほどの力は無く、やむなく死体を引きずってどこか良い墓場を探して森を彷徨う。こう死体を引きずってると何だか悪いことしている気分だ、どうにかこの死体が人の目に写らないような良い所があれば良いんだけど。
本物の魔物、ゴーストさながら彷徨うこと一時間。小屋を見つける。
『お邪魔しまーす、って埃だらけだなー』
きっと誰も使ってないのだろう。隠し場所としては好都合だ、その小屋の中に死体を入れる。そして、新たな発見をした。
名前:マーリン 種族:ゴースト level:1/9
体力:50/50 魔力:399/420
力:0 拒絶:5 敏捷:9 思考:383 安定:356 運:100
スキル
鑑定:4 光魔法:5 闇魔法:1 回復魔法:3 神聖魔法:5 杖技術:3 剣技術:1 念力:1 隠密:1 光耐性:1 闇耐性:1 物理無効 毒無効 睡眠無効 気配感知:2 魔力感知:4 危険感知:1 料理:3 採取:1
EXスキル
浮遊 幸運 記憶の知識 回復の知識 気配の知識
称号
元九賢者 聖職者 蘇りし者 亡霊キラー 幼天使の加護《賭博》《智慧》《癒合》《存在》
念力って魔力使うんだね。