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旅立ち

 アイリスは故郷を出てまだ日が浅かった。

 だがこの数日間。いや、ライアに出会ってからの一日。

 それはアイリスの人生において貴重な体験であった。

 楽しいことがあった。大変なこともたくさんあった。

 それでも、この一日はアイリスにとって大事な一日になるであるだろう。だからこそ、その時間が終わるのが寂しくも感じた。

 

 二人は街の外へ出ていた。あの事件があった後だ。ここへはしばらく来ない方が無難といった感じだろう。街の外は木々に囲まれてて自然の空気を感じる。

 

「じゃ、ここまでだね」

「そうですね」

 

 ライアはアイリスより数歩前にいた。二人は街の外まで一緒に行きそれから別れることにした。

 

「この度は本当に、ありがとうございました。感謝してもしきれないです」 

「だからそんないいって。わたしはただ個人的な考えのもとやってるだけだから」

 

 アイリスはペコリと頭を下げる。その後気になったことを言う。

 

「これからどこに行くんですか?」

「うーん、そうだなぁ。とくに決めてないねぇ。気ままにのんびり、わたしは旅をするよ」

「そうですか……」

 

 アイリスは少し寂しそうなそんな顔をしていた。もう、会うことはないのだろうか……。するとポンと頭をライアに撫でられる。

 

「そんな顔しないで。旅をしてればまたいつか会えるよ」

 

 彼女は優しく微笑んだ。

 

「それじゃね」

 

 彼女はそういって手を振り、背を向き先を行く。少しずつアイリスの側から離れている。

 

 アイリスは悩んだ。このままでいいのか。   

 

 アイリスは気になっていた。ライアの行く道を。目的を。

 ただの興味本意ではある。

 だが自分の旅の目的も、また興味本意なのだ。

 彼女と一緒にいるのは楽しかった。

 同じ魔女なのに自分の知らないことをたくさん知っていて。

 魔女なのに人間のように生きて。

 ずっと人と魔女のために戦っていた彼女に尊敬をしていた。

 

 アイリスはその場に立ち尽くしたままで、ライアの姿はだんだん小さくなっていた。 だが勇気を出す。アイリスは走り出す。

 小さくなっていたライアの姿がだんだんと大きく、等身大になっていった。

 

「ま、待ってください!」

「うん?どしたの?」

 

 アイリスは追いつき呼ぶとライアは不思議そうにこちらを見た。

 

「あの……お話があるんです。大事な話が」

 

 アイリスは息を少し切らしながらも言う。

 

「身勝手なことかもしれません……ただ、私の気持ちを伝えたくて……私を……ライアさんの旅に連れていってもらえないでしょうか!」

 

 アイリスは勇気を振り絞り言った。ライアはそれを聞いて今までふやけていた顔を真剣な表情に変え耳を傾ける。


「ライアさんといるのは大変でしたけど楽しくて……私には充実した時間でした。ライアさんと一緒なら私、自分がやりたいことを、すべき事を見つけられる気がして……」

   

 彼女と一緒にいれば自分の中での何かが変わるかもしれない。

 16歳という成人になった歳に故郷を出て旅をすることにした、本当の目的のためにも。

 人と魔女の行く末を。ライアと一緒にいればそれが分かる。そんな気がしていた。

 

「迷惑をかけるつもりはありません!私ができることならなんでもします!もし邪魔だと思ったらそこまででいいです。だから……」

「うん、いいよ」

「やっぱり駄目ですか……そうですよね……えっ?」

「だからいいよって」

 

 あっさりした回答にアイリスはきょとんとする。

 ただ気持ちを伝えられればそれだけでいい。後悔をしたくなかった。それだけなのに。ライアはいいと、話してる途中に割り込んで言った。

 

「いいんですか、そんなあっさり」

「別にいいよ。わたし去るもの追わず、来るもの拒まず精神でやってるし。一緒に来たいならおいでよ。でもそうだねぇ……一つ忠告しておこうか」

 

 ライアは右手の人差し指をぴんと伸ばし顎にあてて言った。

 

「わたしと一緒に来るなら危険な事もたくさんあるよ。それと、真実だと信じてたものが本当に真実とは限らない……何を真実と信じ偽りと信じるか……それが出来るようになりなさい。分かった?」

 

 ライア真剣な眼差しをして話す。アイリスにはライアの言ってる事が少し難しく感じた。

 

「無理強いはしないよ。ゆっくりでいい……それが出来るようになればアリスは成長する。ただそれだけだからね」


 ライアはアイリスの左肩を手で叩きにししと笑った。アイリスはそれに笑顔で返し言った。

 

「はい!私、頑張ります!ふつつかものですが、これからよろしくお願いします!」

「いやそれ使い方間違ってるよ」

「え……ふにゃ!?」

「ふふっ……あははっ」


 アイリスは自分の言ったことに気が付き、顔を赤くして変な声を上げた。それを聞いたライアはおかしくて思わず腹を抱えて笑った。

 その後ライアはアイリスに向かって右手を伸ばす。

 

「そんじゃ、これからよろしくねアリス」

「はい、よろしくお願いしますライアさん」

 

 アイリスも右手を伸ばし二人は握手を交わす。

 

 ここからはじまる二人の物語。

 二人はまだ知らない。

 それぞれの偽りを。

 それぞれの真実を。


 〈第一章 魔眼の魔女 完〉

登場人物


ライア

挿絵(By みてみん)


アイリス

挿絵(By みてみん)


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