5話 モラルブレイカー
翌日のこと。
HMDを自宅に置き、買い物にでる。
衣服、食糧。数日間必要な物を買い揃える為だ。
行きつけの店、鼻にピアスを付けた馴染みの店員。
最近姿を見てなかったけれど何か有ったのかとか、相変わらずのゲーム三昧かとか。
他愛のない話しは三十分ぐらいだろうか。
突然、道から悲鳴があがる。ショーウインドゥの割れる音。そして聞き慣れたタタタタタタという銃の射撃音。
「正気か?」
馴染みの店員は急いで警察に電話を掛ける。俺は携帯で消防署に。
ー 繁華街で大きな事件が起きている。ー
奇しくも『LO』プレイヤーにとって、悪夢の始まりだった。
繁華街で圧縮ガス式モデル突撃銃を乱射する『ヘルメット姿の集団』。
「殲滅だ。」
と、叫び声も聞こえる。
集団の数人が店に入り、商品を壊しつつレジのお金を強奪する。完全に犯罪者だ。
スタッフオンリーと書かれた扉に鍵を掛け裏口へと店員共々逃げる。
「店、閉店しなきゃいいけど。無事に逃げてくれ。」
その襲撃映像は報道ヘリコプターによって、中継されることとなった。
警察は暴徒集団の鎮圧、消防は負傷者の救出、治療。
あまりにも広い範囲で負傷者が出ていた為、救急車も医師も足りない。
もちろん交通網も混乱を生じた。
家電量販店のテレビに速報中継が映った。
災害級。
それ以外の表現が見つかりません。
こんな事が、日本で起きています。
暴徒の手にある銃が実弾で無いのが唯一の救いです。
そうレポーターはニュースを締める。
そして、HMDのプレイヤー画面と思われる画像も映し出された。
あの集団は機関銃を装備し破壊して廻っている。
人気ARゲーム『World Lost World Order』の影響か、とテロップに映る。
報道されると、一気に『LO』は社会的に悪性遊戯とされ、あのヘルメット姿はテロリストに直結する。そんなイメージがついてしまった。
もちろんこの事件の報道と共に開発、運営、端末販売を行う各会社への問い合わせは止まらない。
運営会社から異例の発表も中継される。
「今回の事件は当社にとって誠に遺憾であり、被害を受けた皆様には当社が責任をもって対応させて頂きます。なお該当プレイヤーはゲーム内で『地獄蟻』を名乗っており、先ほど権利追放となりました。位置情報など機器詳細は関係機関に提供する次第です。時期など詳細は後日詰めさせて頂き、まずはその被害確認から」
画像が乱れ、再び繁華街に替わる。
「今、特殊機動隊及び自衛隊の出動が確認されました。今、特殊機動隊及び自衛隊の出動が確認されました。」
暴れているのは極一部のプレイヤー。
だが、社会はそう思うだろうか。
ゲームと現実の混在は社会的な問題として横たわるのである。
見えない脅威として。
こんな未来は嫌です。
連載して言うのはなんなのですが。