気づけよ令嬢さん
めっさ短いっす。
それは突然だった。
というか、突然すぎてそれ以外の言葉で説明をするのが難しい。
ページを捲るといきなり最弱主人公がハーレム男になるぐらいのスピードに似たストーリー展開現象に私は頭を悩ませた。
急転直下、走行不能、ハイスピード、幕間なしの土壇場。
つらつらと頭をよぎっていく意味があっているようで掠っているだけの言葉の羅列達。
弾幕のように流れる脳内の言葉達と、目の前の劇場型婚約破棄を俯瞰できるぐらいの冷静になれた時、
(ああ、そうか。私は今、混乱しているのか)と理解した。
それは仕方ない事だ。私の人生は平々凡々、山も無ければ谷も無い。
何処かの神級モデル並み、もしくは平凡なご令嬢の恋愛物語みたいに裏工作、間諜、頭の切れる才能なんて超スキルは持ちえてないのだ。
そんな人間にいきなり、
「お前とは婚約破棄する!!」
と怒鳴られてもどう切り返していいのか、というかなんと言えばいいのか、凄く困るものであるのだ。
対応に困って、
「・・・・ああ、はい」
としか言えない。フォロー?無茶だろ、そんなの?
私の言葉に彼は目を見開いて固まる。
(・・・・いや、そんな目で見るな。君が言い出した事じゃ無いか。傷心した風は止してくれないか?)
「・・・・本当にいいのか?」
「え?」
「・・・・婚約破棄だぞ?」
「え?あ、はぁ。はい?」
「別れ話だぞ?」
「ええ、そうみたいだな?」
(なに言ってんだコイツ)
「引き止めないのか!?」
彼は腕にすがりついていた女生徒をベリッと引き剥がすと階段を勢いよく降りてきた。
ドジっ子属性の彼だ。私が止める間もなく、案の定転けた。
バナナの皮でも転けれる彼だ。空中で前方1回転斜め落ちとなかなか素晴らしい転け芸で床下へ落ちた。
パラパラと周囲から拍手が聞こえたが、私も同じ様に拍手をしたい。
不謹慎だとは思うが、拍手をしたい。
拍手、していいですか?
あ、拍手をした人達が気まずそうにしている。止めとこう。
しかしいつもの事ながら、イケメンも形無し、とはならないのは何故だろう。無駄なキラキラのお陰か?日頃の慣れでか?
「う、ううっ」
「はいはい、痛かっな」
悔しそうに這いつくばる彼の頭を撫でるのも、まぁ慣れなんだろうな。
小さい頃からの付き合いだとこうなる。これが幼馴染ってものだ。
頭に触れていた手を彼は握る。若干涙目
の顔が近づいて、・・・・て!?近い!?
引くぐらいの近さだ!?
「パーソナルスペースってのが無いのか君には!?」
「知るか!なんで了承したんだよ!普通は嫌ですって言うんじゃ無いのか!?なんで普通の顔なんだよ!?せめて、縋り付いてよ!?」
(縋り付いてって、えええ〜)
「・・・・いや、なんかすまない。というか、君こそなんで言ったんだ?」
「うっ!・・・・それは、その、確かめたくて・・・・」
「はぁ?確かめる?」
「その、僕と君が通じ合っているかっていう」
「・・・・ああ、そういう事か」
「ようやく気づいてくれたのか!?」
「いや、君が言っている事は分からなかったが、つまり何らかの事象を解明する為の検証作業という事だろう?この場を見る感じだと、集団心理を調べていたんだろう?」
「・・・・・。」
「いや、実に面白いアプローチの仕方だ。前回の論文は一対一でのシックスセンスについてだったが、テレパシーは少々話が飛躍しすぎていると感じていたんだ。その問題を踏まえた上で今回は共感力をによる意思の疎通なのだろう?」
「・・・・・。」
「違うのか?」
「いや、はい、ソウデス」
「やはりそうか。次の論文も面白そうだ。期待しているよ」
何故か、ガックリと肩を落としている彼が気になった。
補足
論文=ラブレター。
続編=予定ナッシング。