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Level.99999なので冒険せずに学園ハーレムを楽しみます  作者: ケンコーホーシ
第一章:終わらない異世界学園編
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第4話:優しすぎる幼馴染さん(前編)

 時間は今日の朝にさかのぼる――。

 うららかな春の陽気。5月も終わりの季節。

 俺は二階の自室で柔らかい羽毛布団の中で、まどろむような二度寝をしていた。


 目覚ましタイマーはセットされていない。

 20分後には、朝飯抜き&遅刻ギリギリが確定する。

 だが俺は焦ってなかった。


 寝続ける理由があった。


「……」


 とん、とん、とん。

 階段を上がる軽快な音がする。

 とん、きぃ……。

 音が止まり、扉がゆっくりと開けられる。

 外の空気がやんわりと入ってくる。


 と、と、と。


 絨毯をやさしく踏む音がする。

 俺がくるまった羽毛布団の前で止まる。


 ぴた。


 触れられる感触。

 触れられる感触があった。

 手のひらで、さするように優しく撫でられた。


 すっ…。


 まるで優しすぎるマッサージみたいに、俺の身体をさする。

 そろそろ反応を返そうかな?

 と思うと、背中に当たる熱量が増えた。


「……」


 これは、頬か?

 両手が置かれ、机に突っ伏すように、柔らかい頬が背中に密着する。


「……」

「…………ユート君」


 声がした。

 天使の声だった。

 俺は救われた思いがした。

 

 いろいろと世知辛い世の中、嫌なニュースも多い、事件は尽きないし悩みは絶えない、高校の勉強は大変だし夜更かしした朝起きるのは面倒だ。

 でも天使はいた。

 会えたよ、素敵な天使に。

 

 ……と、妄言思考してると、

 天使は「ふぅ…」と小さくこぼして(ご満足したのかな?)


 キリッとマジメな口調で、でものほほんとした雰囲気を隠せない声で、

 俺の身体を揺らしはじめた。


「ユート君、朝だよー」

「ん……うぅん、……っん」

「朝だってばー、学校いくよー、起きてー」


 しゃあない。

 俺は返事をする。

「……んんっ、おはようしの」


「………………ユート君やけに起きるの早いね?」


 何でそこだけ鋭いんだよ。自分で地雷踏むなよ。


「……んー、しのもう少しだけ寝かせて」

「だめだよ遅刻しちゃうよ」

「だいじょうぶ」

「大丈夫じゃないよー」


 しのは困ったような声をだす。

 しのは本名、東雲篠しののめしの、俺の近所に住む幼馴染の高校一年生の女の子だ。


 はい。

 はいそうです皆さん。

 さっそくですが自慢行きます。



 俺 に は 朝 起 こ し て く れ る 幼 馴 染 が い る !!



 ちなみに中学生の一年までは一緒に寝たことやお風呂に入ったこともあります。やったぜ。


「ユート君、本当に遅れちゃうよ。朝ごはん間に合わなくなって、お腹すかせたまま学校にいくことになるよ」


 しのとは、俺の父さんとしのの親父さんが仲良しで、

 お陰で子供の頃から仲良くしてるのだ。

 子供の頃は、本当に冒険と称して、近くの簡単なダンジョンを一緒にめぐったりもしたものだ。

 俺が戦って、しのが回復する。

 前衛と後衛のバランスのとれた二人。


 よいコンビだった。

 もちろん今も超仲良しだけどね。


「お腹すいたら…………しののお弁当食べるからいいよ」

「えー私のおべんと自分用だからユート君でもおいしく食べれるかな?」


 あげる分には構わないんだ。


「しのの作る料理は何でもおいしいから大丈夫だよ」

「えっ、ええぇぇっ、ええぇ! そんなことないよー。お母さんのほうがお料理じょうずだし……」

「和食はしのも得意じゃん。だし巻き卵とか好きだよ」

「えっ、確かに今日もあるけど」


 そいつは朗報。

 しののお弁当の冷凍モノ使わないで、おいしく頑張ろうスタイルは労力大変そうだけど、その分クオリティはかなり高かったりする。


「しのなら良いお嫁さんになるな」

「え、ええぇー、お、オヨメ!? オヨメさんなんて……」


 何だよオヨメさんて。


 しのは顔を紅潮させて身体をくねらしてるが、

 その姿の可愛さを思う前に俺は純粋にこう思った。


 チョロすぎだろお前。

 彼女の将来が不安になった。


 ちなみにいまだに俺は羽毛布団にくるまっている。

 目も閉じている。

 しの表情や動きは、日頃の経験と、単純にしのの発する物音と室内の反響音をベースに動きを計測している。

 コウモリの超音波と同じ原理だ。


「も、もう、ユートくん話をそらさないで! 朝だよ、あさっ!」



 と、しのが布団に覆いかぶさってきた。

 ポカポカと猫パンチの如き攻撃で俺を攻め立てる。


(……)

(……)

(……あ、あ、やべ)


 マズい。


 しのの女性的側面が俺を攻撃してきた。

 具体的には、この東雲しのさん。

 以前はちびっ子な見た目をしていて女性的側面はなかったのだが、

 中学三年生頃から脅威的な第二次性徴期を迎えて、

 短期間で一部のふくらみの成長がパないことになったのだ。



 俺は生命の神秘を見た。



 故に彼女の乗っかり攻撃は、俺の自律神経――――つまりはごく局所的な肉体に対するダイレクトアタックを仕掛ける事になりかねないので可及的速やかにやめていただきたい。


(しょ、しょーがない)


 無理だ。

 俺は諦めてとっさに布団から起きあがる。


「え、きゃっ――――!」


 と、その時しのがバランスを崩す。


 いきなり起きた俺。

 驚いたのだ。

 転ぶ先は床だ。このままだと転ぶ。頭から当たる。直撃する。しのの目が一瞬呆然となる。何なのか分からない。理解不能。そんな感じ。


 このままだと衝突が迫る。マズい。だかあらその寸前。


 ……。

 ……。

 ……。



「――――――――――――っと」



 身体が先に動く。

 左脚を蹴る。

 右斜に回転する。

 落ちるしの。彼女に対し、右手を伸ばす。長く大きく大きく右手を伸ばす。

 そのまま身体を倒して、

 しのを抱く様にキャッチ。

 怪我に気をつけ、ゆるやかに速度を落とす。しのを『安全のため』両手で抱える。



「あっぶな」

「……」



 距離は近い。

 目と目が触れ合うような。

 しのの肌は透明だ。それが朱色に変わる。あ、あ。俺は爆発を察知し、



「よっと」



 

 元の場所へとリリースする。一瞬のことに困惑するしのは、

「あ、えっと、あ、ありが、と…」


 そして俺はふたたびベッドの中に入る。


「なんでまた入るのっ!?」


 冗談だった。

 ちなみに両手で抱えたのも至近距離で見つめたのもわざとだった。

 我ながら嫌なやつだった。


 俺は小さくあくびをして、寝ぼけ眼をこする。

 視界には、高校の制服姿のしのがいる。

 見慣れた黒髪のセミロング。150cmくらいの身長。

 小柄で簡単に持ち上げられそうな見た目。その割に一部はちゃんと成長してるという謎生命体。

 顔立ちは美人さんというより、かわぁいい感じ。

 ここでしののプチエピソードを一つ語ると、

 小学校時代、隣の席に座りたい女子ランキングで六年連続一位を樹立した。

 その結果、周囲からは「実家のような安心感のある女の子」としていたく人気ものになった。主にスゴい狭い界隈で。


 ちなみにステータスはこんな感じ。


 名前:東雲篠

 年齢:十五歳

 職業:高校生

 Level.180

 冒険的職業:聖職者

 属性:光・草

 生命力:800 戦闘力:200 守備力:182 俊敏性:220

 魔法力:600 精神力:900 運命力:100 ガッツ:4500

 固有スキル:天使の爆弾、浄化、救世マーク

 所属:第二図書委員会


「おはよう、ユート君」

「おう」


 そんな彼女。

 俺の幼馴染、東雲しののめしのだった。

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終わらない世界で戦う人々に喝采を
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