第1話:前置きという名のひとり語り
チートコード。
そう呼ばれる機能を知ってるだろうか。
たとえばRPGならレベルをMAXに変えて、ステータスをカンストさせる。
アクションなら戦闘中無敵にして、超高速で移動可能にする。
シミュレーションなら全フラグを解放させて、イベントを好き放題見れる。
ゲームの改造ツールをそう呼ぶのだ。
ソフトの仕組みに介入して、一人俺TUEEEEEを成し遂げる違法コードだ。
チートコード使用者は、どうしても倒せなかった敵を瞬殺し、高難度のダンジョンを無双し、到達困難なトゥルーエンドを余裕で迎えられる。
そうして最強の悦楽にひたり、ゲーム世界の神様となった後で、しかし一方でこうも思うことになる。
何だか強すぎて飽きてきたなぁ、と。
チートコードの使用はゲームの寿命を縮める。
ベリーハードのステージを一発クリアできたところで、それはプレイヤーの実力ではない。チートコードのお陰だ。クリアが一瞬ということは、攻略までの苦労もゼロってことだ。
そんなエンディングは死ぬほど虚しい。
もしそのゲームを愛するプレイヤーなら、そんな時どうするか?
きっと電源を切り、チートコード無しで再プレイするはずだ。
本当にそのゲームが好きならば……。
ゲームならそれができる。
リセット。
ソフトの初期化機能が、プレイヤーにゲームのやり直しを許可する。
だが、人生は違う。
人生はゲームと違う。
リセットはないし、セーブもロードもない。
「最初からはじめる」なんてコマンドは、死んでも用意されてない。
このお話はシンプルだ。
Level.99999というギャグみたいな数字をもってる男の冒険譚だ。
いや、冒険譚ではない。俺は冒険しない。
それは「死ぬほど虚しい」だけだ。
この物語はただの日常系ゆるふわコメディだ。この俺が、女の子達と仲良くゲームしたりアニメを見たりして過ごす、当たり障りのない、学園ハーレムストーリーだ。
「なーユート。いつになったら、私と世界を救ってくれるのだ?」
「ふふふ……遊人君は我と共に世界を破壊する存在。終焉を導く悪の化身なのだ!」
だから、俺は冒険などしない。
絶対、絶対だからなっ!
「もし一緒に冒険してくれたら、私に何でも好きなことしていいぞ?」
えっ、マジで?