小噺【菊花vs荷葉】
活動報告からの再録ですw
彼らの相性ははっきり言って悪い。
第一印象で自分と合う合わないを判断する彼らは、一目見た瞬間から互いを最悪の宿敵と定めたようだった。
広い屋敷に住んでいるのだから、少し努力すれば顔を会わせる回数は減らせる。
しかしながらお互い意地になるように彼らは自分の道を突き進んだ。
そして、今日もバトルが始まる。
「・・・天使ごときが。お嬢さまに侍るなど片腹痛いわ。さっさと天国へ帰りなさい」
「残念ですね。私は伽羅に望まれてこの場に居るのです。望まれるどころかストーカー行為で拒否される貴方とは比べ物になりません。貴方こそ地獄へ帰りなさい」
「おいおい、地獄も天国も死んだ後の世界だろ?何でそこに帰る事になってんだ?」
「さぁ。遠回しに死ねと互いに言ってるんじゃないですか?」
「大体私と貴方、キャラが被ってる気がするんですよね。怜悧な美貌のですます使いは一人で十分です。眼鏡キャラは私一人で十分です」
「何を仰るのやら。言うに事欠いて私と貴方のキャラが被っているですって?聞き捨てならない言葉ですね。報われないストーカー執事の癖に、気色が悪いことを言わないで下さい。貴方は伽羅に詰られて悦ぶ真性Mでしょうが、私の属性はSです。詰られて悦ぶ趣味はありません」
「愛の深さの違いですね。私はお嬢さまが私に与えるものなら全てを悦びに変換できるのですよ。あのか細い足で踏み躙られる快感を理解できないなんて憐れなものですね」
「愛の深さで私が負けるとでも?普段強気の伽羅がこちらを睨みながら涙目で震える愛らしさを理解できない愚か者が。平時は付き従い、情事の際には力関係が逆転する。男として、捕食者として、その愉しさが理解できないなどは真性のマゾですね」
「黙りなさい。SとMをサド、マゾと表現するものも多いですが、Sをスレイブ、Mをマスターと呼ぶこともあると知らないのですか。MこそがSをSたらしめると知らないのですか?」
「ふん。貴方如きに伽羅が操れる訳がないでしょう。伽羅の上位に立とうなどお笑い種でしかありませんね」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「おい、梅香」
「何です、師匠?」
「あいつらと伽羅を二人きりにさせるなよ。キャラ被りがどうとか以前に生粋の変態だ」
「同意ですね。白檀様にも報告します」
「そうしとけ。・・・にしても、結局似た者同士だな、あいつら」
「そうですね」
『何か言いましたか?』
『何も言ってないです』