悪役令嬢とヒロインのゲームの世界なのよ?楽しんで頂けたかしら?『目の前の皆様』(◯神の声より)
とある学園の卒業パーティの最中であった。
「私、ミスリル王国の王太子レイン・ミスリルはシオン・ルビーレッド公爵令嬢との婚約を破棄させてもらう!」
格式ある学園の卒業式でこの国の王太子が婚約者の令嬢に婚約破棄を突き付けた。
レイン王子の腕には別の女性がいた。
「理由はわかるな!貴様がこのマリアに酷い嫌がらせをやったことを!」
ザワザワッ
ザワザワッ
パーティー会場の視線がシオンに集中した。しかしシオンは扇を広げて口元を隠しただけで、不敵な態度だった。
「あらあら?何を言い出すかと思えば。いったい何のことかしら?」
「シラを切る気か!」
レイン殿下の周りには側近達もついており、同時に非難した。
「はん、最低な奴だな!」
「公爵令嬢ともあろう者が、言い逃れですか?」
「ここまで愚かだとは嘆かわしいですね」
殿下の側近である
騎士団長の子息・ソード
宰相の子息・ブレイン
魔法師団長の子息・マジック
この三人が殿下に追従した。
『あら、これでは公爵令嬢が不利ね?さて、どうするのか見物ね』
クスクスッと『傍観者』に徹する者がいた。
「まず、どの様な嫌がらせをしたと言うのですか?」
堂々とした態度でシオン令嬢は言った。
「ならばこの場で明らかにしようではないか!まずはマリアが男爵令嬢という事で、お茶会など招待せずに仲間外れにしたと言うではないか!それは他の貴族を束ねる公爵令嬢として、相応しい行いと言えるのか!」
「はぁ、私のお茶会は『派閥』の家名のみ招待しております。彼女は我が派閥のものではありませんので招待しないのは当然ですわ」
「貴様、私はお前に命令したはずだ。まだ貴族になったばかりの慣れぬマリアの面倒を見よと、その命に背いたのだな」
マリア様は男爵の娘でありますが、メイドに手を付けてできた婚外子なのです。それが、母親の死をきっかけに男爵に引き取られたとか。市井で育ったマリア様は、良い意味で自由奔放なお方。悪い意味でマナーのなっていないお方です。
男性ウケはよく、女性には疎まれるような人物でしたね。
「殿下、私は面倒を見ろと言われたので彼女に、礼儀やマナーを教えました。いえ、教えようとしても、彼女が拒否したため、教える事が出来ませんでしたの。もしマナーの未熟な者をお茶会に誘えば、恥ずかしい思いをするのは彼女自身ですので、殿下にお願いされても表に出すことは出来ませんでしたわ」
マリアはギリッと歯を噛み締めたのが見えました。しかしすぐに殿下にウルウルと泣きながら訴えたのです。
「レイン様、シオン様は私にマナーを教えると言って虐めてきたの。だからそれ以降シオン様にマナーを教えて頂く事が出来なかったのです」
殿下はなにっ!?と言ってキッとシオンを睨み付けました。
「他にも多くの嫌がらせの案件が上がっていると言うのに、この一件だけでも許しがたいぞ!貴様がマリアの貴族社会へのデビューを妨害していたのではないか!」
だからこちらの話を聞いて証拠を集めてから言って下さいよ。とシオンは思ったが、顔には出さずに微笑んだ。
「さて?仰っている意味がわかりませんわ。『彼女』は学ぶ気が最初からありませんもの。こちらもやる気のない方で、さらにこちらの足を引っ張るような方を仲間として迎え入れる訳にもいきませんので」
シオンはずっと名前を呼んでいない。
最初に礼儀を教える為に対面した時、自己紹介すら無視した為に今の所、初対面の状態になっているのだ。そして、敵対派閥のスパイ容疑のある者を派閥に入れる訳にもいかず、放置したと言う事である。
「貴様!よりにもよってマリアを侮辱するとは!しかも認めたな?この冷徹な公爵令嬢よ!」
側近達もここぞとばかりに追及した。
『あら~これはマズイのでなくて?王族と側近VS公爵令嬢では分が悪そうね?』
公爵令嬢と言っても王族より権力がある訳がないのだから。傍観者は楽しげに『画面』を見ながら呟いた。
「では、こちらからも反論をさせて頂きます」
「なんだと?」
シオンは手を上げるとシオンの後ろから複数の令嬢が前に出てきた。
「き、貴様らは───」
前に出来てきたのは、側近達の婚約者達だった。
騎士団長の子息・ソード
の婚約者・サーヤ令嬢
宰相の子息・ブレイン
の婚約者・ブロン令嬢
魔法師団長の子息・マジック
の婚約者・レジスト令嬢
この三人がシオンの隣に立って言った。
「「私達は貴方達の婚約を破棄させて頂きます!」」
!?
なんと!
三人の令嬢が逆に婚約破棄を言い渡してきた。
「な、なんだと………?」
「バカな………」
「ふ、ふざけるなよ!?」
動揺した側近達はお互いの顔を見渡しながら呟いた。
「どういうことだ!」
1番最初に立ち直ったのは騎士団長の子息であるソードだった。
「どうもこうもありません。私という婚約者がありながら、複数で1人の令嬢に入れ込む婚約者など不要だからですわ」
元々武勇の家系のサーヤ令嬢はソードの威圧に怯む事なく言った。
「それに本来、婚約者として家から出ている交友費も、マリア様に使っていたそうではありませんか?本当の婚約者を放っておいて他の令嬢に使った家の交友費は慰謝料に上乗せして返してもらいます」
「右に同じくですわ」
「まったくです。1人の令嬢に複数の男性が集まるなんて汚らわしい」
残りの令嬢も同意した。
「そんな勝手なこと認められるか!これは家同士の契約だぞ!」
「ええ、その契約を破ったのがあなた達なのですからそちらの有責で婚約破棄という訳です」
婚約者を放っておいて1人の令嬢に熱を上げていた。それは周知の事実である。言い逃れはできない。
『まぁ!素晴らしいわね!いつの間にか、王族VS公爵令嬢の図式から、婚約者同士の対決にすり替わっているわ!』
クスクスッと予想外の展開に傍観者は喜んだ。
さて、結末はどうなるかしらね?
「さて、私がそちらの彼女に嫌がらせをしたとでも??身内の証言以外の証拠はありまして?」
「ば、馬鹿な、何を………」
シオンは指をパチンッと鳴らすと、黒い服を着た者が現れた。
「そなたは!?」
それは王家の影と呼ばれる存在だった。
王族の為に文字通り影から警護する者。
シオンは影に視線をやると影は顔を左右に振った。
「影の報告は正確です。そちらの証言は全て嘘らしいですわ。女にうつつを抜かして、こんな当たり前の事を忘れている殿下に王位を継ぐ資格はありませんよ?」
「何を言っている!王家には私しか王子は、子供はいないのだ!貴様に指図されるいわれはない!」
ええ、王家にはね。
「影の報告から私の、我々の潔白は証明されています。そして、そこの女狐には相応の罰を。後、王家には子供が居なくても、王位継承権を持っている者は目の前におりますので、ご心配いりませんわ」
!?
「なっ!?」
「あら?公爵家とは王家の血筋を受け継ぐ者の家系ですわ。祖母が降嫁した王女である私にも王位継承権がありましてよ」
レイン王子は冷や汗をかきながら、立場が逆転した事に気付いた。マリアもヤバい空気を察したのか笑みが消えていた。
ドンッ!
「そこまでだ!」
国王陛下と側近の親達が扉を派手に開けて慌ててやってきた。
「あら?国王陛下、もう話し合いはほとんど終わりましてよ?」
シオンは不敵に言った。
「これは………遅かったか」
国王陛下も影から自分の息子である王子が婚約破棄をする情報を得て、慌ててきたのだろう。
シオンに妨害され、来るのが遅れたが。
バカな真似をしても自分の子供に王位を継がせたいと思うのは親心というものだが、しかし、多くの貴族が集まる卒業パーティーで失態を犯せば揉み消す事が出来ない。
目の前の状況を見て国王は深いため息を吐いた。
「あの程度のハニートラップに引っかかる様な者に王位は荷が重過ぎますわ」
扇をパチンッと鳴らして閉じた。
『なるほど。国王の横槍が入らない様に手回しまでしていたとはね。私も予期していなかったわ。今回は悪役令嬢側の勝利のようね』
傍観者はまだ目の前で行われている話し合いから一度目を逸らすと、ワインを口に含んでから『画面』に目を戻した。
さて、リセットしましょう。
傍観者が『指を鳴らす』と画面の中の卒業パーティーの断罪劇の世界が消えた。
いや、背景が消えて真っ白な世界になり、登場人物達が意識を失いそこに存在していた。
「今回の『人形』は優秀だったわね。でも、ヒロイン役は無能過ぎたかしら?」
傍観者は立ち上がると、目の前にある『画面』の中に吸い込まれるように入っていった。
そして、真っ白な世界にて、登場人物達を横一列に並べて考え込んだ。
「ふふふっ、今回の悪役令嬢役の『魂』は良い拾い物でしたわ♪この後もしばらくは悪役令嬢の役をお願いしましょう。でも、ヒロイン役は無能過ぎね。実力が拮抗していた方が試合は面白いもの。この『魂』は処分して新しいものに入れ替えましょう」
傍観者はヒロインの胸に手を入れると簡単に手は身体に入り、抜き出すと『青白い炎』が手に握られていた。
「いただきまーす」
パクリッ!
傍観者はその青白い炎……『魂』を一口で食べた。
「あら?期待してなかったけれど、なかなか美味しいじゃない?悪役令嬢に負けて処刑されそうになっていたから、その時の『絶望の味』がなかなかイケるわね」
満足した様に舌で口周りを舐めると、新しい『魂』を呼び寄せた。
「人間が昔より繁殖して増えたから、魂が喰い放題になるなんて良い時代になったわ。天界の神達も増えすぎた人間を管理しきれなくなったから、はぐれた魂を盗み食いしてもバレないし」
いや、あえて数を減らす為に見逃しているのかしら?
そして───
「何度見ても飽きないわね。ヒロインと悪役令嬢の対決は。余興として始めたけれども、世界中でここまで流行るとは思わなかったわ。今も、プロも素人も、ネット小説に新しい話を書き続けているものね。今回の【私】の話も楽しんで頂けたかしら?目の前の皆様?」
傍観者は美しい女性の姿をしていた。髪が腰まであり、出るところは出ていて思わず見惚れてしまう容姿だ。ただ、頭の左右から黒い角が生えており、肌の色が紫でなければだが。
「うふふっ、私の作った『人形』に『人間の魂』を入れて仮初めの記憶を植え付けて動かす、ヒロインと悪役令嬢の話は最高のエンターテイメントね。完全なシステムで動くのではなく、ある意味AIの様に、制作者にもわからない予期せぬ行動をしてくれるから、結末がわからず楽しませてくれるわ」
傍観者はパネルを操作して、人形達の容姿や服装を変えていった。
「さーて、今度はどんな結末になるのか、皆様も楽しみにして下さいね♪我が配下のヘタレ作者naturalsoftに命じておきますので」
傍観者は空を見上げて言った。
「数多の物語の中で、いったいどれだけの人々がこの残酷で甘美なストーリーに魅了されて読んでいるのか。物語の中の登場人物達は『本当』に生きているということを、わかって読んでいるのかしら?まぁ、この物語を読んでいる者からランダムで魂を貰っているのだけれどね?うふふっ」
世間ではスマホやパソコンを触っている者が突然、心臓発作で死んだ事になっているだろう。
傍観者は愉快そうに嗤った。
「さて、この物語も終わりよ。次の物語の準備をしなさい。下僕のnaturalsoftよ」
「はい。邪神様の仰せの通りに」
傍観者は次の準備をする様に、人形達に役割を与えていくのだった。
『ダークエンド』
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【あとがき】
最後までお読みいただきありがとうございます。
その他にも『多くの小説』を投稿しているので読んでいただけると嬉しいです。
それが私の『糧』となりますので。
【作者の作品のオススメ】
コミカライズ化作品
これは出版社の都合上、なろうの方のみ投稿あり
『婚約破棄されました。私の親友が!必ず阻止します!・・私が原因なのでorz』
『悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪』
『訳ありヒロインは、前世が悪役令嬢だった。王妃教育を終了していた私は皆に認められる存在に。でも復讐はするわよ?』
『【連載版】ヒロインは元皇后様!?~あら?生まれ変わりましたわ?~』
『悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!』
『聖女は寿命を削って王子を救ったのに、もう用なしと追い出されて幸せを掴む!』
『復讐は合わせ鏡のように─『私』を殺してでも絶対に許しませんわ!』
読者様の評価の高かった作品です。
一度読んで頂けると嬉しいです。
上司(邪神)に褒められます。




