モフ溺13 モフベリアン、4ヶ月目のピト
ぼくはサイベリアン。
生後4ヶ月の、パヤパヤでふわふわなモフベリアン。
ご主人様のところにきて、もうひとつき以上経つ。
ペットショップで過ごしたよりも長い。
心なしか、ぼくのモフしっぽもモフモフしっぽになってきた気がする。
あと、毛の色も少し濃くなってきた。
ペットショップのみんなも、もう新しいご主人様のところにいるのニャンかな。
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その日、ご主人様は、穴だらけのキャリーケースにタオルをしき、サメちゃんを入れ、ゆたぽん(あったかいやつ)を入れ、毛布を入れ、最後にぼくを入れた。
ンナ……。
ぼくは憮然としながら、ご主人様の腕に抱えられ、どこかにお出かけさせられた。
ちなみにこのサメちゃんとは、いつもケリケリして遊んでいるので、青かった鮫肌は白っぽくなっている。
運ばれ中にケリケリ遊ぶわけにもゆかぬので、ぼくはゆたぽんとサメちゃんによっかかり、リラックススタイルになった。
真冬のお外はぼくの冬毛でも寒いけど、このゆたぽんと毛布がぬくいので、眠たくなる。
ふぁぁ……。
ご主人様はせっせと歩き、ぼくを自動ドアの中へ運んだ。
おや、ここは……。
あ、ふわふわポメラニアンがいる。かわいいのニャン……。
ぼーー……。
ン?
あれ、ここ、きたことあるジャン。
ご主人様は、他にも席があいてるのに、わざわざポメの横に座った。
まあかわいいしな。
じゃなくて、ここは、えーと、オークション会場……じゃなくて、闇の毒針施設ニャンな?
観察していると、ご主人様は隣のポメご主人様とお話をしだした。
この場にはオークションや毒針の緊張感はなく、昼下がりのポカポカ感に満ちており、ひたすらねむたい。
ぼくはぼーっとポメのお顔を眺めた。
ポメはというと、怖がってソワソワしている。
繊細ちゃんはかわいそうニャンな。
こっちで一緒にまったりするニャンか?
うとうと……。
間もなく、例のめっちゃ狭い小部屋から呼ばれ、ぼくとご主人様は移動した。
緑服のにんげん、久しぶりニャンな。げんきしてた?
ぼくはケースからなぞの台に出される。
あ、あの時のなぞのメカの台だ。ぼくが乗せられた冷たい台のナナメ前に、なぞのメカの台があるのだ。
こんなの余裕でジャンプ届くニャン、と狙ったら、また緑服のにんげんにあわてて阻まれた。
「1.4キロですね」
ご主人様に抑えられながら、緑服のおててで、なぞの丸くて冷たいやつをピトされる。
ピト。
ピトピト。
シーン……。
なあにこれ?
「雑音が……」
「成長途中ですし、まだなんとも……」
緑服はノートに何かカキカキしている。
オークションも毒針も始まらないニャン。
クンクン。
キョロキョロ。
なんなのニャン?
かわいい猫でしょ、て自慢しに見せただけ?
あのノートにはぼくの顔とか描いてるの?
フッ、やれやれ……。
結局ピトとカキカキだけで終わり、ぼくたちは小部屋を出てきた。
なんか全然なんともなかったよ。
ぼくは怯えポメにアイコンタクトをして、またうとうとした。
4ヶ月、少し大人になったぼくは学んだ。
寒さとは、お布団の気持ちよさを味わうスパイスなのニャン。
お、これ名言ぽいからそのノートに書いといて。
ぐう。
────
「ミャ……」
わったちゃんはまだ若いから、そんなに毒針は打たれないんじゃないかな?
と、お姉ちゃんは言った。
「んーーーニャ……?」
年取ると毒針打つのかニャン?
なんでなんで?
「ミャッ……」
毒かどうかわからないけど、大丈夫だよ、ヨチヨチ……
「ンン?ンーーーナア……」
ヨチヨチじゃなくて、なんでなんで?あれなんなの?
ほかのみんなも怖がってたよ。ぼくはへいきだけど。勇者モフベリアンだもの。(褒めて褒めて。)
「ナン……」
コットンも怖かった。
「ふにゃぁ……??」
お姉ちゃんとの会話は猫語だし、猫語に細かいニュアンスの語彙があるわけでもないので、毒針についてのなぞは全く晴れなかった。
────
ぼくは大賢者、モフベリアン。
ぼくの灰色の脳細胞は、諦めない。
ご主人様は、ぼくのお爪を切るでしょ。そして、ご主人様は自分のお爪も切る。
ご主人様は同様に、ぼくの歯もみがくし、自分の歯もみがく。
ご主人様は、食べる。ぼくも、食べる。
トイレ……、おっと、高貴なぼくはここで生々しいお話しはしないのニャン。
つまり、ぼくやお姉ちゃんに毒針をうつのなら、自分にもうつのでは!?
そこから、なにかしら、ヒントが得られるのではないかニャン?
ぼくはご主人様へのガン見観察を開始した。
なぞマシンをピコピコして……、ベッドに寝転がって、なぞマシンで何かの動画を見て……、ダラダラ……。あくびをして……。寝返り……。
ぼくはご主人様へのガン見観察を中止した。
なんだ、この観察しがいのない生態は。
そもそも、あれはほんとに刺されたのかニャン?
しんじがたいニャン。
こんないたいけな子猫のモフベリアンを刺すなんて、ありえるのニャン??
でも、すごーく小さい頃も、チクッてされたような記憶がある。
うーんうーん。
ご主人様は、むくりと起きて、キッチンへ向かった。
もちろん、ご主人様が歩いたら、ぼくはその足元にまとわりつかねばならない、というモフベリアン・ルールに従う。
ごはんかな?ウロチョロウロチョロ。
ご主人様は自分のご飯をつくえに運び、それからぼくのお皿にロイヤルやわごはん(グレービーソースがけ)を入れたやつを、ぼくの檻に入れる。
そして、ぼくがもぐもぐするのを見ながら、自分ももぐもぐする。
ご主人様も、ぼくをガン見観察するのが好きなのだ。
もしかすると、にんげんも、猫のこと全然わからなくて、脳細胞を働かせて推理しているのかもしれない。
たとえばほら、このおヒゲもしっぽもないにんげん、不便ニャンな?
高いところに登ってバランス取れないでしょ?
でも、観察しても、おヒゲもしっぽも、はえないかもね。
残念だったニャーン。
ロイカナのやわごはんは、ロイヤル度マックスで、くるしゅうない。
カリカリもうまうまだけど、これはなんともよきかほりがする。
噛み心地もよい。
ぺろぺろ……。
うん、おいしいけど、ちよっと取っておこ。
ぼくはロイカナをチョイ残しして、毛づくろいして、寝てしまったので、毒針のことはわすれた。




