表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

エピローグ:ふたりの日々


 


 朝、目を覚ますと、私はクラリスの腕の中にいた。


 ぬくもりと静かな呼吸に包まれながら、しばらく目を閉じたまま、ただその存在を感じていた。

 こうして目覚める朝が、どれほど尊く、愛しいものか――肌をなぞる指先の余韻が、まだ身体に残っている。


 


 そっと寝台を抜け出すと、クラリスも目を開けた。


 「……もう朝か?」と低く呟くその声に、胸の奥がくすぐったくなる。私は小さく頷き、キッチンへと向かった。


 


 朝は、パンを焼いて、ハーブ入りのスープをつくる。

 クラリスは庭の井戸から水を汲み、薪を割り、朝の見回りに出かける。

 この村の守備を任された彼女は、どこへ行っても子どもたちに囲まれていた。


 


 この辺境の村にたどり着くまでには、長くて過酷な旅路があった。

 都を出てから、街道を外れ、森や山を幾日もさまよい、獣に怯え、食糧を探しながら生き抜いた。

 クラリスが怪我をしたとき、私は夢中で薬草を探し、手当てをした。


 


 それがきっかけだった。

 私は生きるために薬草の知識を学びはじめ、旅の途中で出会った旅人や老婆たちから、草の名や効能を少しずつ教わっていった。


 


 今では、村の小さな薬草園を手入れし、読み書きを学びたいという若者たちに筆を教えている。

 時には、おばあさんに頼まれて手紙を代筆したり、隣村へ薬を届ける人の相談に乗ったりする。


 


 昼には、ふたりで簡単な食事をとる。

 畑の野菜、ハーブ入りのチーズ、クラリスが釣ってきた魚を焼いたもの。

 彼女は料理が苦手だけれど、皿を拭いたり手を貸したりする姿が不器用で、だからこそ、愛おしい。


 


 夕暮れには、クラリスと手をつないで散歩をする。

 村の外れの、小さな丘。風がよく通るその場所からは、金色の夕陽が世界を包むのが見える。

 ふたり並んで、それをただ静かに見ているだけで、胸がいっぱいになる。


 


 夜。薪のはぜる音と、ほの暗いランプの灯りの中で、私はクラリスの膝に頭をのせ、本を読む。

 ときどき、彼女が髪に口づけを落としてくると、読んでいる行がわからなくなる。


 


 「リセル」


 


 名前を呼ばれるたび、身体の奥が熱を帯びる。

 私は顔を上げ、そっと彼女の頬に手を伸ばした。


 


 言葉はいらない。ただ、見つめ合って触れるだけで、すべてが伝わる。


 


 寝台に入り、静かな夜がふたりを包む。

 互いの鼓動と息遣いが重なり、指先が肌をなぞるたび、そこに確かな愛情があることを知る。


 


 この人の隣にいられる。

 それだけで、私は幸せだった。


 


 王宮でのすべてを手放しても、私は今、自分の人生を手にしている。


 


 クラリスの手を握り、私は小さく囁いた。


 「愛してるよ」


 


 彼女の答えは、深く、あたたかい口づけだった。


 


 こうして今日も、私たちの一日が終わる。


 そして、また明日もふたりで目覚めるのだ。


 


 ――何も、足りないものなんてない。

 この手の中に、すべてがある。






ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。


この作品は、「百合が好きすぎるのに、絵も小説も描けない私」が、

どうしても自分の“理想の百合”を読みたくて、

AIの力を借りて、たった1日で書き上げた物語です。


自分が読みたい百合を、自分のために、自分で創る。

そんな最初の一歩として、この物語が生まれました。


これからも、私は“自分だけの、見たい百合”を形にしていきます。

もしどこかで、またふたりの姿を見つけたら――そのときも、どうぞよろしくお願いします。


なお、おまけとして、後日談の短編を予定しています。

タイトルは未定ですが、「ミレイユ女官とザビーネ魔導士、険悪な(?)ふたりの魔法茶会」になるかも……?

あのふたりの関係も、まだまだ描きたいことが山ほどあるので。


百合が好きな方に、この物語が少しでも届きますように。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ