第4話 悪役転生といえば、学園か!(違う)
「僕は、君にもう酷い態度は取ったりはしない。だからこれからも――僕のメイドでいてほしい」
そう告げると、恭子さんは驚いたように目を見開いた。
けれど、すぐに冷静さを取り戻し、考え込むような仕草を見せる。
数秒の沈黙の後……彼女は、小さく頷いた。
僕は、「やった!」と思ったのも束の間……今のやり取りを冷静に振り返る。
恭子さんは目を合わせるでもなく、声に出して了承したわけでもなかった。
ただ、小さく頷いた。
それは僕の言葉に賛同して頷いたとも取れるし、言われたからとりあえず頷いたとも取れる。
いずれにしろ、ハッキリとした言葉をもらえないってことは……僕のことが嫌いという予想は当たっているっぽい。
うん、これは厳しい。
嫌われているなら、なおさら慎重に行動しないとね。
それでも――
「反応してくれてありがとう、恭子」
僕がそう声をかけると、恭子さんはビクリと肩を震わせた。
あれ、そんなに警戒しなくても……。
でも、僕のことが嫌いでも反応してくれたのは、恭子さんが優しいから。
そこにお礼は言わないとね。
それに、小さくでも頷いてくれたってことは挽回の余地があるってことだ。
よし、これからが勝負だ!
恭子さんに迷惑を掛けるのではなく、好感度を上げられるように頑張るぞー!
自分に言い聞かせるようにして、拳を握りしめる。
「……では、私からも1つよろしいでしょうか?」
と……恭子さんが真剣な面持ちで口を開いた。
僕は思わず背筋を伸ばす。
聞く覚悟は決まった。
「い、いいよ!」
「では……」
恭子さんはこほんっと咳払いをしてから。
「今更、そのように態度を変えられても……」
その始まり方に、僕は一瞬で固まった。
というか、どこか聞き馴染みのある言葉で嫌な予感がした。
これってまさか、『今更気づいても、もう遅い』的な展開じゃない?
いやいや、嘘でしょ!?
僕、もう破滅フラグ確定なの!?
頭の中でパニックが広がる僕をよそに……恭子さんは続けた。
「――《《男女共学校》》への入学だけは変更できませんよ?」
「男女共学校?」
唐突なワードに、僕は目を丸くする。
恭子さんはクールな表情のまま続けた。
「坊ちゃまは羽澄家の次期当主です。15歳となってからは、ある程度のコミュニケーション能力と常識を身に付けていただきます。そのため、これまでのように家庭教師を雇って屋敷での勉学ではなく……春からは高校へ通っていただきます。それも、女性が在籍する共学校へ」
女性が在籍する共学校……?
え、それ最高じゃん!
女の子と一緒に勉強できるなんて、夢のような環境じゃないか!
実は、僕は前世は男子高校だったのだ。
僕が望んでいたのでなく、親に勝手に決められて入らされた。
「分かっているよ、恭子。僕は変わるって決めたからね!」
思わず声が弾んでしまったが……まあ大丈夫だろう!
ただし、高校生活は僕のような悪役転生者にとって、最大の試練の場でもある。
そう、高校や学園こそが物語のメイン舞台であり――無数の破滅フラグが待ち受ける場所。
そして、そこには原作の主人公とメインヒロインがいる!
彼らとの関わり方次第で、僕の運命は天国にも地獄にも転ぶ。
でも入学まではまだ2ヶ月ほどある。
やはり、恭子さんの好感度を上げるのが第一目標だ。
とはいえ、何をして好感度を上げるか……。
女の子にモテたこともなく、男子校だったので女友達などおらず、前世の記憶は全く当てにならず、ずっと頭を悩ませていたが……。
『男女共学校』『悪役転生』『好感度アップ』の3つのワードで閃いた!
というか、悪役転生といえばまず取り組むべきことはコレだよね!
「入学に向けて……体づくりだな!」
「……は?」
ん? 恭子さんが声を漏らした気がしたけど……もう好感度が下がったわけじゃないよね!?