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第3話 悪役転生だから、セクハラしたのか?(違う)

 さて、恭子さんの好感度を上げようと思うけど……その前にやるべきことがある。


 好感度を上げるためには、まず相手のことを知らないと。


 先ほどの女医さんの問診で、僕が転生した悪役、羽澄玲人のことが少し分かった。

 

 しかし、恭子さんのことは……僕のことを1番お世話している美人メイドという以外は分かっていない。


 こんな状態で恭子さんの好感度を上げるなんて、無謀もいいところ。

 

 それどころか、好感度を下げてしまうかもしれない。

 

 なので、恭子さんの情報が欲しい。

  

 本当は、『このメイドさん……ハッ! メインヒロインの1人で〜』的なことを思い出すはずなんだけどなぁー。


 まあ、僕の記憶を待つより聞いた方が早そうだ。

 

 幸いなことに、恭子さんは今から出かける用事があるらしい。

 おそらく、1時間くらいは戻らないだろう。


 これはチャンスだ。

 恭子さんについての情報収集を急ごう!


 僕は屋敷のメイドさんたちに片っ端から話を聞いて回ることにした。


 恭子さんはどんな人物か。

 僕のお世話はどんなことをしているのか。

 

 聞きすぎるのもよくないので、この2つを重視。

 

 「なんでそんなことを聞くのか?」と怪しまれたとしても、「記憶が曖昧だから再確認したい」と言えば大丈夫だろう。


 それに、メイドさんたちとコミニュケーションを取ることで、その態度や反応によって、僕がどういった感じの悪役かを知る狙いがある。


 と……可愛いメイドさんたちと話したいっていうのもある。

 やっぱりメイドっていいよね!


「ふむふむ、なるほど……。ありがとう。助かった」

「ふぇぇ……坊ちゃまがお礼を……」

「ん?」

「い、いえ! しし、失礼いたします!」


 小柄なメイドさんはぺこぺこお辞儀すると、慌てるように去っていった。


 これで、恭子さん以外のメイドさん全員に聞き込みができた。


 そして、恭子さんのことも分かった。


 二条恭子。

 年齢は20歳。

 大学に通いながら、若くしてこの屋敷のメイド長に抜擢されたらしい。


 加えて、玲人の身の回りのお世話や教育係など……恭子さんはありとあらゆる面で玲人を支えている。

 いわば、メイド長と専属メイドの両立をしているのだ。


 それにしても、恭子さんを専属にするとは……玲人くん、中々見る目あるじゃないか。

 いや、悪役って女の子を選ぶの得意そうだからかな?


 話したメイドさんはみんな可愛いかったけど……やっぱり恭子さんは中でも際立っている。


 専属メイドを誰にするかと言われたら、僕も恭子さんを選ぶ気がする。


 まあ、今は僕の専属メイドだけどね。


 だからこそ、恭子さんの好感度を上げて……可愛いメイドさんとイチャイチャしてみたい!


「ねぇ、今日の坊ちゃまって……」

「ええ、そうよね……」


 ふと、メイドたちの視線が僕に集まっていることに気づく。


 廊下で聞き取りをしていたから、みんな様子が気になったのかな?


「今の坊ちゃまは穏やかというか、目の保養になるというか……」

「ばっかっ。目を覚ましなさい。ほら、普段の坊ちゃまを思い出してっ」

「普段は男性特有の態度だもんね。でも今は……」


 メイドさんたちはヒソヒソと何かを話して、妙にソワソワしている。


 そういえば、聞き込みをしている時にも……。


『すまない。君に聞きたいことがある』


 僕としては、悪役の口調を意識した上で、話しやすい雰囲気をちょっとは出したつもりだったけど……。


『ひゃい! な、なんでしょうか坊ちゃまっ』

『あぁ、坊ちゃまが普通に会話をしてくれている……』

『ちゃんと目を合わせている……』

『メイド長のことだけじゃなく、アタシのことも知ってくれたら……な、なーんてっ』


 やけに挙動不審であったり、ボソボソっと独り言を言っていたり……かと思えば、いきなり早口になって去っていったり……。


 うーん、みんな様子がおかしかった。


 まるで、僕と話すことに慣れていないといった感じだ。


 この様子……元の羽澄玲人にセクハラでもされていたのか?


 だって、屋敷にいるメイドさんはみんな可愛い。


 ……まるで、可愛い人だけを集めたかのように。

 

 となれば、セクハラ説にも納得がいく。


 相手がお金持ちの息子といえど、セクハラするやつとは当然、関わりたくないし、気に入られたくないだろう。


 普段はメイドさんたちは僕に話しかけたり、話すことは少ないのかも。

 だから、メイドさんたちは僕と接することに慣れていない。

 

 特に、セクハラが多かったのは恭子さんだろう。


 おっぱいを鷲掴みにしたり、スカートをめくったり、食事は全部「あーん」じゃなきゃ嫌だとか、お風呂も背中を流してくれないととか、添い寝とか……。


 そりゃもう、元の玲人はセクハラを堪能しただろう!


 くっ! なんて羨まし……。


「いや、けしからんな!」


 やっぱり、セクハラはダメだよねー。

 

 それに、悪役に転生した僕がセクハラをすれば、破滅ルートまっしぐらだ。


「坊ちゃまがけしからんって……」

「「「す、すいませんでした〜〜!!」」」

「えっ? あ、ちょっと……!」


 メイドさんたちはまたもや逃げるように去っていった。

 

 うーん、これはよほど嫌われていて、避けられているようだ。

 さすが悪役。いや、さすが悪役じゃ困るな。


 これは、恭子さんの好感度上げも大変そうだなぁー。


◆◆


 広い自室の中を物色していると、ドアがノックされた。

 

 相手は予想がつく。


「ん、入れ」

「失礼いたします、坊ちゃま。ただ今戻りました」


 礼儀正しくお辞儀をして入ってきたのは、恭子さんだ。

 

「坊ちゃま。お医者様からは問題ないとは言われましたが、今日は目覚めたばかりですし、安静にした方が良いかと」

「ああ、そうだな」


 転生してまだ初日。

 今日のところはこれぐらいにしようかな。

 

 それにしても、恭子さんは平然と振る舞っているけど……内心は僕に怯えていたりするのかな?

 

 だって、相手はセクハラしてきたり、嫌な態度を取ってきたり……。

 でも、逆らえない相手だ。


 中身が違うとはいえ、僕はそういう人物なのだ。

 

 僕は酷いことはするつもりはない。

 

 でも恭子さんから見れば、変わらぬ姿。


 だから……先に恭子さんの不安を減らしたい。

  

「恭子。君に言いたいことがある」

「はい、なんでしょうか坊ちゃま」


 恭子さんは表情を崩さず、僕を見つめる。

 その瞳に……微かに警戒を感じる。

 

 僕が元の玲人ではないと怪しまれたとしても……これは僕の言葉で最初に言うべきだ。


「僕は、君にもう酷い態度は取ったりはしない。だからこれからも――メイドでいてほしい」





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