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第26話 悪役だけど、何かやらかしました?(違う)

 5、6限目が終わる。

 科目は現文と数学。どちらも前世で受けていた内容と変わらなかった。

  

 とはいえ、元の世界では僕は男子校に通っていて、先生も男性が多かった。

 女性の先生といえば、保健室の先生とALTの先生は女性で男子からの人気が凄かったよね。


 しかし、ここではどちらも綺麗な女性の先生だった。

 うむ、実に眼福である。

 元々女子校ってこともあって、女性の先生が多いのかもね。

 

 授業は全て終わったということで、帰りのホームルームの時間へ。


「――以上が連絡事項だ。お前ら、くれぐれも問題は起こすなよ? じゃあ、さいならー」


 鬼木先生がひらひらと手を振って退出する。

 

 問題を起こすな……ふむ、悪役の僕が1番気をつけないとね。


 学園生活2日目も無事終了。

 

 とはいえ……昨日以上に緊張した日だった。


 なんといっても、主人公との対面。


 天笠湊。

 爽やかな笑顔に自然な気配りができる優しい男の子。

 見た目も内面もまさしく主人公って感じだ。

 

 僕が悪役とはいえ、まだ悪さは何もしていない状態なので……今日みたいな調子でいけば、湊くんとは友好な関係を築けそうだ。

 それに、この学園は女の子が多いから男友達は欲しいところである。


 そして、新たなメインヒロインとも出会った。

 

 兎乃静音。

 清楚な見た目と気品ある佇まいの美少女。

 どことなく良い家柄出身のお嬢様な感じがする。

 あと、おっぱいがでかい。


 静音ちゃんは……色々と読めないことが多い。

 あの柔らかい微笑みの裏で何を考えているのか……。


 ここは慎重に距離を詰めるべきだろう。


 なんて振り返りながら、帰る準備をしていると……。

 

「く、クラスの親睦会やろうと思うんだけど、みんなどうかな……!」


 クラスの女子の1人がそんな声を上げた。


 クラスに一瞬、静寂に包まれたものの……。


「い、良いんじゃないっ」

「みんなと早く仲良くなりたいしね……!」

「クラスの親睦は早めに深めたほうがいいもんねっ」

「うんうん、女子と男子の交流はやるべきだと思う!」

 

 続いて、賛成の声が多数上がった。


 クラスの親睦会かぁ。

 これも学園あるあるイベントだよね。


 ただ、E組の男子は僕1人。


 クラスの人数は30人なので、もし全員参加なら……男女比1:29になる。

 

 oh……男女比バグっているね。


 まあ、この学園内限定の話だと思うけど。


「玲人さんは親睦会に参加されますか?」


 隣の席の菜子ちゃんがこそっと聞いてきた。


 きっと、サポート役だから担当の男子の行動を把握しとかないといけないみたいなものだろう。


 菜子ちゃんは真面目にサポート役をこなしていて偉いよね。


 僕的には、情報収集やクラスの女の子と仲良くなるために参加してみたいけど……。


 僕は菜子ちゃんを見る。


 僕が参加するってなると……菜子ちゃんも参加するってなりそうだ。


 でもそれだと、菜子ちゃんが疲れちゃうよね。


 親睦会でも僕が上手く馴染めるように気を使うわけだし、屋敷に住み込みで働いているわけだから帰ってからも、専属メイドとして僕のお世話をしないといけないし……。


 やはり、菜子ちゃんに無理させることになる。


 破滅ルート回避のために情報必要だけど……今は菜子ちゃんのことを気遣うべきだね。


「私は玲人さんに合わせますが……」

「いや、僕は親睦会には参加しない。今日は真っ直ぐ家に帰る」

「そ、そうですか……!」


 僕がそう告げれば、菜子ちゃんはどこかホッとした様子の表情であった。


 おや、やはり菜子ちゃんは疲れているのかな?

 今日は早めに屋敷に帰ってゆっくりしたい気分なのかもね。


「えっ、羽澄君親睦会参加しないって聞こえたんだけど……」

「羽澄君ならワンチャンあると思ったけどなぁ……」

「やっぱり羽澄くんも女のこと、警戒するよねぇ……」

「まあ、親睦会とかそういう集まり系は男子は絶対行かないもんね」

「同じクラスに男子がいるだけで、そもそもラッキーだよ」

「ん、私は諦めない。同棲生活はまだ始まったばかり」


 チラッと周りを見れば、なんだか女子たちががっくりと肩を落としている気もするが……。


 男子が参加しないからと言っても、そこまで影響はないだろう。

 参加する人数が1人減ったくらいの感じ。


 親睦会というなら男子がいないほうが変な気を使わなくていいと思うんだけどね。


 女子たちがぞろぞろ帰っていく。


 僕と菜子ちゃんはまだ席を立たない。


 昨日のうちに打ち合わせして……クラスメイトがある程度教室を出てから、帰ることにしたのだ。


 帰りの車に一緒に乗るところを見られる確率が減るし、関係性も疑われずに済むからね。

 

「菜子。そろそろ帰るか」

「はい、玲人さん」


 僕たちは鞄を肩に掛けて、教室を出ようとした時。


 下校時間にも関わらず……E組の教室に生徒が2人入ってきた。


「あっ、玲人くんまだいたっ」

「良かったですね、天笠様」

「うんっ」


 現れたのは湊くん。

 隣には、サポート役としてか静音ちゃんもいた。


 会話を聞くに、湊くんの方が僕に用事があるのかな?


「湊、どうしたんだ?」

「えっとね、玲人君」

「ゆっくりでいいからな?」


 湊くんはどこかソワソワした様子だったので一応、そう声を掛けておく。


「その、校門を出るまで一緒に帰れないかなと思って……。ダメ、かな?」


 湊くんはこてんと首を傾げて僕を見つめた。


 湊くん……主人公のはずなのに今のところ1番ヒロインムーブしてるよ。

 

 それにしても、まさか主人公から一緒に帰ろうのお誘いがくるなんて……。


 学園では女子だらけだし、同じ男子といたいってやつかな?

 それなら僕も気持ちがわかる。


「ダメじゃないよ。僕も湊と話したいと思っていたからな」

「本当! じゃあ、一緒に帰ろっ」

「ああ、もちろんだ」

「えへへっ」


 僕の大きな頷きを見て、頬を緩める湊くん。

 

 僕と帰れることを喜んでくれているみたいだ。

 湊くんはいい子だね。


 ……いや、いい子で納得していいのかな、これ?


 どのジャンルに置いても主人公が笑みを見せたり、帰る約束をする相手といえば、ヒロインが1番多いものじゃないのかな?

 

 えっ、僕がヒロインの可能性ある?


 なーんて、そんな可能性はないか。ハッハッハッ……。


 破滅フラグの中に悪役メス堕ちルートとかないよね?(真顔)


 変な思考になり始めたので、他のことを考えようと……視線をずらせば、静音ちゃんと菜子ちゃんが話していた。


「天笠様と羽澄様が一緒に帰るということで、わたしたちも途中まで一緒に帰ることになりますね、菜子様。短い間ですがわたしとお話してくださると嬉しいです」

「私も静音さんとはもっと話したいと思っていたから是非っ」

「ふふっ、ありがとうございます菜子様」

「こっちこそだよっ」

 

 静音ちゃんと菜子ちゃんが笑い合う。


 ヒロイン同士の対面ってことになるけど……今のところは微笑ましい雰囲気だ。


 これからヒロインレースとかになるのかな?

 関係がキズキズしないと良いけどね。


 となれば、湊くんがどのヒロインを選ぶかによっても、僕の破滅ルートに繋がっているのかな?


 思わず、湊くんをじっと見つめてしまう。


「? 玲人くんどうしたの?」

「いや、なんでもない」


 まあ、湊くんの選ぶヒロインならいい子だろうし、2人とも幸せになるだろう。

 

 悪役の僕はそれを邪魔するつもりはない。


 つまり、湊くんは絶対ハッピーエンドルートだ。


 一方の悪役の僕も、自分の進むべきルートを選ばないとなぁー。




「……」

「? 菜子様どうされましたか?」

「っ、ううん。なんでもないよっ」



◆◆


「はぁ、もう校門出ちゃうのかぁ」

 

 湊くんがどこか名残惜しそうにそう呟く。


「なんだ、湊。僕と離れるのが寂しいのか?」 

「うん」


 冗談っぽく言ってみたが、湊くんは真顔で頷いた。


「お、おう……そうか。まあ、話し足りない分は明日に取っておこうな?」

「うん、そうだねっ」


 それから湊くんと静音ちゃんは迎えらしく、それぞれの車で帰っていった。


「2人とも、いい子そうだな」

「そうですね、玲人様」


 僕と菜子ちゃんは朝車を降りた人気のない静かな路地を目指して足を進める。


「玲人様」

「ん? なんだ?」

 

 呼び方が戻ってちょっと驚いたけど……まあ今は戻しても大丈夫か。


「玲人様の好みは……天笠さんのような方なんですか?」

「え? まあ、湊はいい子だと思うが……好み?」

「はい。天笠さんは玲人様の好みなんですか?」

「いや、友達にはなりたいと思うが……」

「そ、それ以上の関係には……?」


 それ以上の関係……?


 というか、なんで菜子ちゃんに詰められているの?

 

 僕は何かやらかしたの?


 そんな無自覚主人公じゃあるまいし……。


「菜子、いきなりどうしたんだ?」

「い、いえ、その……。いきなりすいませんでした。玲人様が天笠さんと仲良くなるスピードが早いなと思いまして。……私は全然なのに」

「? まあ、同じ男だしな。話しやすいっていうものあるかもな」

「そ、そうですよね。同じ男子の方が接しやすいですよね」

「ああ」


 僕がそう言えば、菜子ちゃんは顔を少し俯かせた。


 ん? 菜子ちゃんがどういう意図で質問してきたのかは分からないけど……。


「湊以外にもクラスの女子や……菜子とも仲良くなりたいと思っているよ」


 破滅ルート回避のためでありつつも、僕自身の本心である。


 そのために、菜子ちゃんの好感度を上げていかないと!


「そ、そうですか。わ、私も……」

「ん?」

 

 菜子ちゃんの頬が少し赤いような……?


「わ、私も玲人様と……仲良くなりたいですっ」

「!!」


 耳に入ってきた言葉に思わず、僕は目を見開く。


 菜子ちゃん今……僕と仲良くなりたいって言った?

 聞き間違いとかじゃないよね? 言ったよね?


 菜子ちゃんは僕のことが嫌い、もしくは苦手意識があるはずだ。


 初めて会ったあの時だって、僕とは話さないようにしていた感じだったし……。


 そんな菜子ちゃんが僕と仲良くなりたいって言った。


 てことは、菜子ちゃんの好感度は上がっているってこと?

  

 一体……どうして??





簡単な人物紹介◇


兎乃静音(うさのしずね)


さらりとした栗色の髪に大きな胸。

可憐さと清楚さを兼ね備えた文句なし美少女。

しかしながら、謎多き人物。


男性の接し方には慣れている様子ながらも、玲人の無自覚な言動には驚くことが多い。

また、玲人とは初対面ではない様子で……。

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