表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/39

第2話 悪役転生だから、好感度上げだよね!(違う)

 二度寝から目覚めると、さっきと同じような光景。

 恭子さんがいて、メイドさんたち十数も部屋の端の方に控えていた。

    

 違うところと言えば、白衣姿の女医さんがいて……すぐに診察となった。


 どうやら恭子さんたちが一斉に去ったのは、お医者さんの手配をしてくれていたからのようだ。


 破滅フラグ満載の悪役の割には、大事にされているんだなー。


 女医さんはベテランって感じで、診察はスムーズに進んでいった。


 でも女医さんの頬がずっとほんのりと赤いのはなんでだろう?


「――診察は終わりです。では、いくつか質問にお答えいただきますね」


 簡単な問診もされた。


 名前や年齢、血液型、家族構成。

 今日は何年の何月か、好きな食べ物や趣味などなど……。


 問診の結果?

 名前以外、全問不正解。


 おかしいなぁー。

 いつまで経っても、悪役転生したキャラの情報や世界観とか諸々のことが思い出せないし、ピンともこない。


 でも、収穫はあった。


 質問されるということは、その答えを聞けるということ。


 僕の名前は、羽澄玲人。

 15歳で有名資産家の1人息子。

 父親はおらず、母子家庭。

 現在は、この広すぎる屋敷でメイド数十人と暮らしている。


 そして、この世界は剣や魔法が溢れるファンタジーではなく……前世と同じ現代ということも分かった。

 

 なるほど……。


 僕は現代ラブコメを舞台とした物語の悪役に転生したみたいだ!


 悪役転生って、ラブコメジャンルでも流行っているもんね!


 ファンタジー世界で剣や魔法を扱えないのは残念だけど……現代なら悲惨な殺され方はしないだろうし、そもそも簡単には殺されないだろう。

 だって現代だと、犯罪になっちゃうし。


 命の危機が遠のいて、ちょっと安心する。


 だが、油断は禁物だ。


 転生したのは悪役。

 いつどこで破滅フラグに突っ込むかわからない。


 なんて1人で整理していれば、ペンを走らせていた女医さんの手が止まった。


「目が覚めたばかりということで、記憶が曖昧な部分もあるようですが……体には特に異常はありません。日常生活にも支障はないでしょう」


 女医さんの診断結果に、部屋の端で控えていたメイドさんたちは安堵の表情を浮かべていた。


 だが、1人だけ……。


「……」


 僕のすぐ傍に控えている恭子さんだけは険しい顔を崩さない。


「記憶が曖昧……やはりそうですか。坊ちゃまの言葉遣いや雰囲気がいつもとは違うと思っておりましたが……」


 恭子のその言葉に、僕はギクッと肩を強張らせる。


 僕は悪役に転生した。


 つまり、中身は元の羽澄玲人ではない。

 当然、言葉遣いや態度に違和感が出る。


 さらに僕は、元の羽澄玲人がどういう人物かを知らない。

 なんで思い出せないの?


 とはいえ、このままでは怪しまれる。

 

 現に、恭子さんは僕に心配と疑いが混じったような視線を送っている。


 でも、そんなに心配はいらないかも?

 

 悪役転生モノは前世では流行になっており、小説や漫画もたくさん出ていて僕もめちゃくちゃ読んだし、好きなジャンルだ。

 だから、どんなシナリオか分かっていなくとも、悪役転生系主人公の口調と雰囲気は似せることはできそう。


 それに、僕な悪役転生したのだとすぐに分かったもの、前世の記憶のおかげだ。


 やっぱり、前世の記憶は役に立つね!


「し、心配でしたら……病院にて詳しい検査もできますよ? なんだったら、入院されるのはいかがでしょうか、玲人様っ」

「へ?」


 そんな考え事をしていたら、女医さんにいきなり話を振られて、呆気ない声が出てしまった。


「入院……?」


 悪くないかもと思った。


 入院している間に、今後の立ち回りの作戦をじっくりと立てるのもアリだ。

 

「もし、入院されるならその……私が隅々までお世話してさしあげますよ? そ、その夜のお世話の方も——」

  

 女医さんは僕から視線を外して、身体の方に視線を向けた。


 ん? 女医さんの目がなんだがギラッとしたような?

 それに、息も少し荒いような……。


「――そこまでです」


 横から冷静ながらも力強い声が。

 恭子さんだ。


 恭子さんは……少し怒った雰囲気を纏いながら、女医さんを見据えた。

 

「この度は玲人様を診察していただきありがとうございました、先生。しかしながら……それ以上のことは不要ですよね?」

「で、ですが……」

「これ以上、坊ちゃまに不要な処置をするなら……こちらも容赦はしませんよ?」

「ひっ……!」


 恭子さんの圧に押されてか、女医さんは小さく悲鳴を上げた。

  

「では、気をつけてお帰りくださいね」

「うう……せっかく男性患者のお世話をできるチャンスがぁ……」


 何やらブツブツ呟きながら、女医さんは荷物を纏めて部屋を出たのだった。


 と……恭子さんがゆっくりと口を開いた。


「貴方たちは彼女がちゃんと屋敷を出たか確認してきてください」

「「「はい」」」」


 恭子さんの指示で、メイドさん3人が速やかに部屋を出た。


 相変わらず、テキパキと連携が取れてすごいなーと関心しつつ……。


 詳しい検査や入院を勧めてくれた女医さんを追い出すとは……。


 まるで、僕を病院に行かせたくないみたいだ。


 愛され坊ちゃまなら、絶対に病院に行かせている。


 やはり、僕は悪役に転生をしたのは間違いなさそうで……。


 さては、恭子さん……僕のこと嫌いだなぁ?

 

 いや、ある意味当然かもしれない。


 ここまでの様子から察するに、元の玲人のお世話を1番しているのは恭子さんだ。

 それに、メイドたちを纏めるリーダーって感じもするし。


 1番お世話しているということは……1番の苦労人。


 つまりは、僕を嫌っている可能性が非常に高いということ。


 しかしながら、メイドといえば、悪役転生した主人公のその変化ぶりを1番に目の当たりにして、見直し……1番最初に味方となる人物。


 恭子さんは間違いなく、この世界においてのキーパーソンのはずだ。


 なら、僕がまずやるべきことは……恭子さんの好感度を上げることだ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ