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第8話 悪役転生だけど、ちょっと安心した(違う)

 車が動き出して、数分後。


「坊ちゃま。どちらへ向かいますか?」


 運転席に座る恭子さんが、バックミラー越しに僕を見ながら尋ねてきた。


「えっと……」


 恭子さんにそう聞かれたものの……僕はとっさに答えられなかった。


 そうだよ。行き先を決めるのをすっかり忘れていた。


 というのも、僕としては適当に街をぶらぶら歩いて、気になった店に入っていく完全行き当たりばったりスタイルを考えていた。


 この世界の外には、どういうものがあるのか分からないし、土地勘など全くないからね。

 

 だから、こっちの方がいいかなって思ったし……むしろ普通のことだ。


 でも、恭子さんは嫌いな僕とわざわざ2人っきりで車移動を選んだ。


 恭子さん……すごく仕事熱心なんだな。

 僕に対しても、嫌いって振る舞い方はしないしね。

 

「坊ちゃま。もしかして、行き先を決めていらっしゃらないのですか?」

「あ……こほんっ。まあ、そうだな」


 僕は冷静な口調で認める。


 破滅フラグは回避するけど、口調と雰囲気は元の玲人と変わらないようにしないとね。


「そうですか。坊ちゃまはあまり外に出られないですから、決められないというのもありますよね」


 へぇー、元の玲人はあまり外に出なかったんだ。

 

 まあ、屋敷の中の暮らしが快適すぎるからだよね。

 あの屋敷にいたら、外に出る必要ないもん。


「では、私の方で適当に走らせていただきますね」

「ああ、頼む」


 恭子さんがそう提案してくれたので、僕は安心して座席に深く座った。


 それから恭子さんとは、会話は弾むことなく……車内は静かである。


 僕は恭子さんの好感度をまだ上げれてはいないからね。

 雑巾掛けをするぐらいじゃ、ダメか。

 嫌われているなら、なおさら簡単には好感度は上がらないよね。


 じゃあ、作戦を変えるべきなのかな?


 しかしながら、今回の目的は外の世界。

 静かな方が集中できていいかも。


 僕は、車窓から外の景色を眺める。


 そこに広がる街並みは、前世の記憶とほとんど変わらなかった。


 ビルが立ち並び、人々が行き交うその光景はどこか懐かしく感じる。


 悪役転生したけど、前世と変わらないものを見るとちょっと安心するよね。


「……ん?」


 だが、じっくり眺めているうちに……ある違和感が出てきた。


「……《《女性ばかりだな》》」


 歩道を歩くのも、楽しそうに雑談している2人組も、店に入るのも……見る限り女性ばかり。


 そして、今のところ男の姿を見ていない。


 いや、別に男なんかどこにでもいるだろうし、見なくてもいいんだけどね!

 

 それに、今まで車窓から見えた女性たちは皆、美女、美人ばかりで……目の保養になっているし!


 でも気になったので、ちょっと恭子さんに聞いてみるとしよう。


「ここら辺って、いつもこんな感じ……女性ばかりなのか?」

「はい、そうですね」

「これが普通なのか?」

「普通ですね」

「そうか。普通か」


 そんなやり取りを終えて、僕は腕を組み、考えを纏める。


 なるほど……普通だって。


 つまり、この場所は……たまたま女性ばかりが集まっているってことか!


 前世でも、地元にオジサンとしかすれ違わないエリアみたいなのあったんだよねー。

 それみたいなものだね!


「あっ、ラーメン屋に行列……しかも女性ばかり……。これも普通?」

「普通ですね」


 今は2月でまだ寒いし、女性だってラーメン食べたいよね。


「あそこはハンバーガー屋っぽい。ここも女性ばかりだ」

「普通ですね」


 ハンバーガーはいつ食べても美味しいもんね。


「牛丼屋もステーキ屋もコンビニも……あっ、出てきたお客さんはまた女性だ」


 これも普通かー。

 というか、食べ物屋しか目に入らなくなってきて、お腹空いてきた。

 

「向こうのはバッティングセンターで、少し行ったところにはジムもある。ここも……」

「はい、女性が多いです」


 うん、この世界の女性たちはガッツリ食べるし、アクティブそうだ。いいね!


「……坊ちゃま。久しぶりの外はどうでしょうか?」


 今度は恭子さんが話しかけてくれた。


「ああ、うん。車とはいえ、たまには外に出るものいいな」

「そうですか」


 やっぱり、元の世界と同じ景色を見れたのは、安心だよねー。

 

 それに、僕の視界に入るのは綺麗な人や可愛い人など女性ばかり。

  

 そういえば、屋敷にいるメイドさんも全員女性だった。

 

 セバスチャン……はファンタジー世界だからいないとして。

 それでも1人ぐらいは、ベテラン執事とかいるものかと思っていたけど。


 まあ、屋敷にいるのが可愛いメイドばかりなのは元の玲人の趣味だろう。


 この世界って、女性は美意識が高いのかな? いいねっ!


 これは、僕が春から通うという男女共学の学園も楽しみだ。

 絶対、可愛い女の子いるよねー。


 あっ、そうだ!

 

「恭子。まだ時間はあるか?」

「ありますが……」

「うむ。なら、僕は行きたい場所ができた」

「どこでしょうか、坊ちゃま」

「僕が通うことになっている学園に向かってほしい」

「っ! ……はい。分かりました。では向かいます」


 ん? 恭子さんが返事の前に妙な間があったような気がしたけど……気のせいかな?


 それにしても、僕としたことが1番行かないとけない場所を忘れていた。


 悪役転生にとって、学園は1番重要な舞台だ。


 今はまだ入学前でヒロインにも主人公にも会えないだろうけど、事前に下見しとかないとね!


 僕が通う学園は一体、どんなところなんだろうなぁー。


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