プロローグ その名を。
不定期です
僕は貴方の事が――好きです。
…………
その想いの丈を伝える事すら叶わず、僕は死んだ。
吸血鬼とエルフのハーフ。
卓越した知力と美貌。常識を凌駕する魔力と身体能力。
彼女は忌み嫌われた。
彼女の両親は相容れない種族同士で愛し合う、まさにロミオとジュリエット。
彼女を出産したのち、双方は各々の領地で粛正されてこの世を去った。
だが唯一、彼女だけは生まれながらにして姿を隠していた。
両陣営が少なくない衝突を繰り返しつつ捜索を続けたが、遂に彼女を死亡扱いとする他なくなってしまった。
それから10年。
ハイネス領(旧ルラシオン領)に一人の美少女が舞い降りた。
小柄で色白、真紅の瞳に先の尖った長耳。髪は淡い金で、誇張などではなく本当にキラキラと輝いていた。
街の人々が目を奪われる中、少女は真っ直ぐに大通りを歩いていく。
瞳には憂いも、憎しみも、悲しみも、恐怖も、不安もなく。ただ強い意志が煌々と照っている。
そしてその日、ハイネスによる統治が終わった。
新たな主人が視線を注ぐ。
「我が名はエリザ・ルラシオン。喜べ、貴様らは我が統べる」
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