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私in俺!〜悪役憑依と転生ちゃんねる〜  作者: 吉祥 瑞喜
2部2章 楽園にて

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62/76

062 2-2-10 転生者の病

元悪役なラグルスくんと1のスレ 17


462:名無しの転生者さん ID:5PZyVgBL

 で、抱きつき祭りのあとは騒然とした食堂から出て犬と遊んで犬と町中走り回って楽器演奏しながら犬と歌って宿に戻ってた

 そこで書き込みが途絶えておそらく寝落ち


464:名無しの転生者さん ID:uqKO/6oH

 散々モフったり吸ったりペロペロされたりしてたぞ

 ワンちゃんのいない世界に生まれた身からすると羨ましくて仕方ない


468:1 ID:V1lLa1n+

 全然覚えてないけどなんか楽しかった気がする!


470:名無しの転生者さん ID:BWLm/h+z

 >>468

 この酔っ払いタチが悪すぎる


471:名無しの転生者さん ID:wCqsy9zr

 反省の色ゼロじゃん

 ちゃんと自分を省みて


475:名無しの転生者さん ID:4SYXSMAq

 >>468

 周りの人(特にラグルスくん)は別に楽しくなかったと思います


478:1 ID:V1lLa1n+

 犬ちゃんのフルモッフな毛並みをなでつつ部屋を出たらラグルスくんがやってきた

 ラグルス「俺は一生酒を飲まない」

 開口一番なに?


480:名無しの転生者さん ID:wCqsy9zr

 >>478

 たぶん自分の肉体で散々痴態を見せつけられたラグルスくんの魂の叫び


481:名無しの転生者さん ID:uqKO/6oH

 草


485:名無しの転生者さん ID:qJfRGTx3

 ラグルスくんカワイソw


482:名無しの転生者さん ID:5PZyVgBL

 >>478

 体はラグルスくんのものだからな

 飲んだらこうなるって見せつけられたんだろ


484:名無しの転生者さん ID:9C5y+U4x

 >>482

 あー肝機能はラグルスくん由来か……


487:1 ID:V1lLa1n+

 >>482

 なるほどそれが原因か!

 もし私の体ならアルコールもジャバジャバ分解できてたはず!つまりラグルスくんのょゎょゎ肝臓のせい!


489:名無しの転生者さん ID:BWLm/h+z

 >>487

 本日の他責思考


490:名無しの転生者さん ID:oQyvScqi

 >>487

 ちゃんと反省してもろて


500:1 ID:V1lLa1n+

 >>489>>490

 一応今後はラグルスくんと共に断酒の予定


 そんなこんなで出発の時間なので宿屋の手続きしに行ったらオーナー(夫)に嫉妬されました

 オーナー(夫)「道具屋のナンナン以外にここまで尻尾振ってるところ、見たことねえよ……。くそぉ、あんたいったいどんな手を使ったんだ?」

 私「ドヤァ……(モフりながら)」

 今日は私のモフ運が高い可能性あるな……町を出る前に道具屋のナンナンちゃん(看板猫)に会うのが楽しみ!


 しかし出会いの前には別れがある……犬ちゃんと別れの挨拶をした

 私「じゃあね。元気でね」

 犬「キュン……(しょんぼり)」

 私「キュンしてるのは私のほうだよ~!!(スーパーなでくりタイム)」

 ラグルス「何を言っているんだ貴様は……」

 [動画ファイル]


502:名無しの転生者さん ID:Mc9G8tiy

 >>500

 ションボリーヌ


505:名無しの転生者さん ID:NOyRit2T

 >>500

 カワイーヌ


503:名無しの転生者さん ID:9C5y+U4x

 >>500

 ほんとに何言ってんだこいつ


507:名無しの転生者さん ID:Ldh7TgdZ

 ラグルスくん犬は好きじゃないの?


509:1 ID:V1lLa1n+

 >>507

 多分わりと好きだと思う

 この前通った国で王家が管轄って感じの犬たちを「国家の犬め」って言いながらなでてたし


510:名無しの転生者さん ID:ga+SlRKR0

 >>509

 草

 好きなら素直にかわいがればええやんけ


513:名無しの転生者さん ID:ZaYM4VEH

 国家の犬(文字通りの意味で)



*****



 聖女とほぼ二人であの大瓶二本を空け、酔って散々好き放題したノナが、今はベッドに寝そべり犬を撫でている。ひどかった。俺は決して酒を飲まない。

 同程度飲んでいたはずがまったく酔っていない様子の聖女と共に彼女を運び込んだ。噂に聞いたことがあるが、強大な神聖力を持つものは稀にその能力に似た体質を得るという。聖女が素面と変わらない様子なのも、おそらく癒しの能力と同じ体質で酒精の影響を受けなかったのが理由だろう。

 別の部屋を取った聖女を見送りノナを見ると、彼女はだらしなくこちらの気が抜ける顔をしていた。


「ん~ふへへへ……いい子だね~……」

「ワン」


 褒められているのがわかるのか、犬が満面の笑みで激しく尾を振っている。たしか彼女の記憶の中にこんな犬がいた。たしかあれは『サモエドスマイル』という種族だったか。

 ただしノナが元居た世界のものとこの犬は異なる。目の前にある白毛玉からは、独特の魔力を感じた。近い血縁に魔獣か何かがいるはずだ。ちょうどこの近辺は犬型の魔獣の生息地があるから、おそらく野犬との間に生まれたのだろう。

 そんなことを考えながら彼女を見れば、普段よりさらに気の抜けた表情でへらへら笑っていた。俺の顔はあんな笑い方もできるようだ。俺は生涯酒を飲まない。


「ラグルスくん……?」


 じっと見ていることに気づいたノナが聞いてくる。……今なら、普段は逃げられるような話ができるかもしれない。試してみるか。


「ノナ」

「なぁに……」

「怪我の話の際は戦い方の違いを出したが、そもそも貴様はむやみに他人を庇いすぎだ。楽園でもミュリノの奴の前へと出ていただろう……そんなことをしなければ、もっと傷が少なくて済むというのに」


 肉体を手に入れる以前も今も、とっさの時には身を挺してかばう傾向が見られる。そして過去に見た記憶にも、同様の出来事がいくつかあった。

 別に俺の体に傷がつこうとさして気にならないが、彼女にとってこの癖は良くない。今はまだ俺が気をつけることができる。だがいずれ体を取り戻し彼女と離れたら、あっけなく死んでしまうのではないかと少し不安だった。


「んん……治してるから……許してほしいなぁ……」

「……そんなことは問題にしていない」

「えぇ~……じゃあ……ん……?」


 彼女は思考がまとまらないようで、だんだんまぶたが落ちてきていた。なにやら不明瞭な言葉をつぶやきながら白い毛並みに埋まっていく。毛皮の持ち主が相変わらず尾を動かしながら、さらに彼女の毛づくろいまで始めた。


「とにかく自分の命を大切にしろ。……俺が言えたことではないがな」

「ん~……」


 以前見た掲示板でのやり取りを思い出す。転生者たちにとって命は軽く、そのうえ自覚が薄い——『転生ガチャ』などと言っている奴らは特に。そういったある意味病とでもいうべき傾向が見て取れた。それを指摘した俺の忠告に対し、ノナは是とも否ともつかない声を発しながら、結局そのまま眠りに落ちてしまう。……あまり届いていないどころか、朝になれば忘れていそうだ。


「回復魔術についても聞いておきたかったんだがな……」

「ワフン?」

「貴様には言っていない」


 先の精神汚染事件において、ノナが回復の魔術を使った相手は精神汚染の度合いがかなり改善されていた。何か今後の対策へ転用できる方法がないか、と食事前に聖女の確認を経たが、結局ノナの回復の秘密は解き明かせないままだ。

 そして聖女に機会があれば、と彼女の指導を頼んでおいた。うまくいけば、この入れ替わり問題が終わる頃には今よりノナの生存率が上がるだろう。


「この先、入れ替わりが解決したら……」


 この問題が解消されれば。そうして予後の観察もひと段落すれば、その頃には彼女の悪癖も多少は改善されているだろうか。あるいは今日聖女と交流したように、人間性に問題がないと知っている相手と繋がりを持っていけば、その者たちの誰かが今の俺と同じことをするかもしれない。

 どちらにせよ、いずれ離れる時が来る。楽園へ立ち寄った当初はノナに所属を勧めようかとも考えた。だが今回起きた騒動を思い返すに、やはりこのまま俺の近くにいるとろくでもないことに巻き込まれるだろう。

 聖剣のことも楽園での問題も、俺のせいで彼女が苦労している。共にいるべきではない。


「……これが解決した時は」


 そうなった際にはきっと今のような騒がしさは消え、もっと静かになることだろう。その時を想像し胸の中に冷たい空気が流れ込んだような感覚を覚えた。しかしこれ以上、情が湧いてしまっては困る。その感覚を意識しないように努めた。


「んわ!! ……んへへへへ……へへへ……」

「ワフッ!」

「……」


 ……努めたとたん、感傷的になった心情を吹き飛ばす声が聞こえた。自身の眉が寄っていくのがわかる。俺の顔で彼女がこれ以上ないほど間抜けな表情をし、犬になめられていた。俺は絶対に酒を飲まない。


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