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私in俺!〜悪役憑依と転生ちゃんねる〜  作者: 吉祥 瑞喜
2部2章 楽園にて

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60/76

060 2-2-8 ノナと兄妹と出発

 楽園で事件が発覚した翌日、ラグルスがその後始末で駆け回っている時のこと。ノナは彼に割り当てられている研究用の部屋で、二人の人物を迎えていた。


「すみませんでした……」

「この度は妹が申し訳ありません」


 ノナは耳長の兄妹たちのつむじを眺める。形がそっくりだった。ミュリノが兄と共に、精神汚染中の態度や楽園のルールに巻き込み決闘となったことなど、一連のことを謝罪しに来たのである。キュリノがバッグから紙の束を取り出し、ノナへと手渡す。


「こちら、ボクたちから今すぐお渡しできる物品のリストです。ここから欲しいものがあれば、いやこれ以外にも何か必要なものや金銭などご要望があれば、代償としてできる限りご用意します」

「わあ、わりと分厚い……あとで見て選んどくね」


 受け取った書類をしまいこみ、彼女は話を切り替える。


「とりあえず謝罪は受け取っとくとして、あとラグルスくんにいろいろ調査を頼まれたんだっけ?」

「はい。ラグルスさんの話だと、ノナさんに治療された者と他の魔術師から治療された者。それぞれで精神汚染からの回復速度が異なる、と」

「それでこれが一番精度の高い観察器具。これ、魔力の相性が良い魔術師が二人いないと使えないの」


 そう言って、ミュリノがバッグから何か魔術の道具らしきものを取り出して並べていく。その横ではキュリノが、専用のスペースにチョークに似た棒で陣を描いている。

 なんだかファンタジーな作業が進められていくさまをソワソワしつつ眺めていれば、さして時間が経たないうちに準備が整った。


「ノナさん、始めてもいいですか?」

「あっ、うん……回復する対象は?」


 なんか実験動物みたいなのいたりするのかな、と思いノナが聞く。するとミュリノが兄に小さいナイフを手渡し言った。


「はい、お兄ちゃん」

「うん」


 キュリノが迷いなく腕を切りつける……わりと深い。そのまま傷が差し出された。


「どうぞ、お願いします!」

「わぁ……」


 いきなり流れるように行われた自傷行為へ引きつつ、検査が始まった。



*****



元悪役なラグルスくんと1のスレ 12


110:1 ID:V1lLa1n+

 兄「わからん(意訳)」

 妹「お手上げ(意訳)」

 目の前で痛そうな光景繰り返されてこの結果(´・ω・`)


111:名無しの転生者さん ID:exAziFas

 切る時躊躇ゼロすぎて怖いわ


112:名無しの転生者さん ID:k/ngWZ8e

 徒労に終わっててかわいそぉ


115:名無しの転生者さん ID:KeCy8LvA

 >>110

 イッチの魔術チート(?)的な現象は相変わらず謎のままか〜


114:名無しの転生者さん ID:5PZyVgBL

 転生者特典かなんかか?

 その世界にそういうのがあるか知らんが


116:1 ID:V1lLa1n+

 >>114

 どうだろう……古代帝国の話でもそういうの聞いたことないけど

 転生者利用も知識を搾り取って首輪つけて働かせるのが基本だったぽいしこの世界で「謎の能力が発現するのでそれを使う」みたいなケースは知らない


119:名無しの転生者さん ID:I/sDmlbO

 >>1だけ転生チート的なヤツかも

 そんな例ちゃんねるでもほとんど見かけないけど


122:名無しの転生者さん ID:8g5rJ5Gm

 >>119

 未来のイッチ「すまん転生チート無い奴おりゅ???」


125:名無しの転生者さん ID:uS/snMxj

 >>122

 前それ言ってたカスがろくでもない事になってるの見たわ

 チートゲットしても油断は禁物という教訓をちゃんねる民に与えてくれたあのカス今どうしてんだろ


127:名無しの転生者さん ID:Samw2rAi

 昔呪いかけられても弾かれる奴が転生特典ドヤァしていたものの

 蓋を開けたら強力な呪いをかけられてて他の呪いが効かなかっただけというオチだったパターンもあるでござる


130:1 ID:V1lLa1n+

 そもそも転生自体がわりとチートな気がする、良いか悪いかはさておき


 そして成果無しな兄妹がなんか悔しそうな顔してる

 妹「くっ、色々トラブルに巻き込んだあげく何もわからないなんて……いっそ私を殴って!」

 私「いや別に殴りたくはないからやだ」

 あと絵面が事件すぎるし……


132:名無しの転生者さん ID:265chUaK

 10歳ぐらいの女児(見た目)を殴る青年の図

 通報一択


133:名無しの転生者さん ID:oQyvScqi

 >>130

 人間換算なら同年代ぐらいやけど見た目が完全にアカンやつ


138:1 ID:V1lLa1n+

 そんなこんなで妹がしょぼしょぼした顔で結果を持っていって検査が終わったよ

 今は兄のほうから昔のラグルスくんのお話聞いてるところ


 兄「外に行く前と比べて、ラグルスさんの雰囲気が少しだけ柔らかくなってますね」

 私「前の様子を知らないんだけど、そんなにとげとげボーイだったの?」

 兄「そうですね……ノナさんとのやりとりを見ていると、以前のラグルスさんなら拒絶していそうな事でも受け入れている気がします」


141:名無しの転生者さん ID:9C5y+U4x

 >>138

 ループしてるうちに丸くなったんかな?

 もしくは色々気にしてる余裕がなくなったか


142:名無しの転生者さん ID:I/sDmlbO

 ちなみに>>1はラグルスに何を受け入れさせてんの?


145:1 ID:V1lLa1n+

 >>142

 わかんない

 強いて言うなら時々いきなり飛びかかったりすることとか?

 人前でやったり、人前じゃなくてもやりすぎたら怒られるけど


149:名無しの転生者さん ID:hEr0iNE/

 何やっとんねん


148:名無しの転生者さん ID:wCqsy9zr

 >>145

 スレ主ってスキンシップ激しいタイプ?


151:1 ID:V1lLa1n+

 >>148

 いやなんかたまに野生が刺激されてつい……

 ハグとかスキンシップも好きだけど


155:名無しの転生者さん ID:ZaYM4VEH

 掲示板に入り浸ってる奴に野生なんてなくね?


160:名無しの転生者さん ID:5PZyVgBL

 >>155

 掲示板に入り浸りながらジャングルで暮らす野生動物転生者も一応いるにはいるぞ

 多くはないけどな


156:名無しの転生者さん ID:4SYXSMAq

 原作(ではない)の描写から考えるとラグルスくんスキンシップ嫌がりそうだし、やっぱ丸くなったか疲れて拒絶する気力もないか、もしくはスレ主が恩人だから許容してるかなんじゃない


154:名無しの転生者さん ID:Ldh7TgdZ

 ところでさっき渡された償いリストの中身どんなの?

 もしかすると前お嬢様から難色示された魚の生食に使えそうな術とかあるんじゃね

 もしくは「できる限り希望に添えるようにする」って言ってたし今なら寿司を作る研究を頼めない?


161:1 ID:V1lLa1n+

 >>154

 リストはこんな感じ

 [文書ファイル]

 雷の魔術応用研究と魔術の持続研究あたりが使えそうな気もする

 あとは魔術による冷蔵庫みたいなのも一応あるらしいから冷凍庫作るとかすれば寿司チャンスあるかも?

 冷凍だとちょっと品質変わっちゃうけど


163:名無しの転生者さん ID:5PZyVgBL

 >>161

 俺たちの世界のアニサキスと同じなら冷凍とかパルスパワーでいけるだろうが、その世界での生魚がダメな原因を調べるのも忘れるなよ

 なにか特有の問題があるかもしれないからな

 そもそも地球でだってアニサキスだけが問題な訳でもないし


165:名無しの転生者さん ID:NOyRit2T

 パルスパワーてなに?


167:1 ID:V1lLa1n+

 >>165

 蓄積されたエネルギーを瞬間的にぶっ放すこと

 魚の生食でいうと超短時間につよつよ電気を流して寄生虫ぶっ殺すやつ


169:名無しの転生者さん ID:NOyRit2T

 へぇ〜


166:名無しの転生者さん ID:uS/snMxj

 生魚は怖いぜ

 現地の人々「何してるんだ!?」

 俺「何って……魚を生食しただけだが?」

 アニサキス君「ワッショイ!(激痛)」

 昔ヤーロッパ的世界で刺身食ってこうなったことがある


172:名無しの転生者さん ID:265chUaK

 >>166

 この手のバカ転生者の失敗は月1ぐらいで見かける

 前世の教育でヒャッハーするつもりが九九が2桁まであって撃沈とかな


176:名無しの転生者さん ID:exAziFas

 >>172

 逆にそのつもりないのに子供の頃天才扱いされて成長するにつれて周りにガッカリした目されていったり…

 自分で書いてて胸が痛くなってきた…


175:1 ID:V1lLa1n+

 耳長兄にざっくりやって欲しいことを話して、後でちゃんねる上で集めた情報まとめ文書を渡すことになったよ

 寿司に一歩近づいたぜ

 醤油も探すか作るかしないといけないけど


177:名無しの転生者さん ID:uqKO/6oH

 >>175

 あと米もな


180:名無しの転生者さん ID:5PZyVgBL

 sushiには米も不可欠だぞ


177:1 ID:V1lLa1n+

 お米はある!わりとうるち米っぽいやつ!

 遠い所から輸入するしかないからお高いし時間かかるけどね

 たまにならオムライスも炒飯も作れる


185:1 ID:V1lLa1n+

 とりあえずお刺身計画は耳長兄に丸投げ

 それで耳長兄の親族にお刺身に使えそうな研究をしてる人がいるとかで、ちょうど里帰りの予定が決まったから聞いてきてくれるらしい

 今そこから耳長族の里について聞いてる


 兄「耳長族はちょっと閉鎖的で、あんまり他所の人を受け付けないんですよね。他の種族の方を矮小な存在と見ているというか……」

 いかにも長命種な感じっぽい


188:名無しの転生者さん ID:Ldh7TgdZ

 ご長寿種族あるある

 ・「矮小な人の子よ……」


190:名無しの転生者さん ID:NOyRit2T

 >>188

 言われたことある〜!


191:名無しの転生者さん ID:4SYXSMAq

 >>188

 悪いほうだと「アリンコがなんか言ってる」ぐらいの扱いで良いほうだと「幼児がなんか言ってる」ぐらいになるやつだ!


193:1 ID:V1lLa1n+

 戻ってきた妹のほうも話に参加してきた

 妹「で、でもそのぶん里内の結束は固いの!身内には優しいし、この髪飾りだってサブマスター就任祝いで希少な石をあしらって護りの術をかけて、わざわざ楽園まで送ってきてくれたんだから!」

 故郷をかばいたかった模様


 ちなみに髪飾りは確かになんか高そうな感じ、あと複雑な魔術が使われてる

 内容まではわかんないけど

 [画像ファイル]


194:名無しの転生者さん ID:k/ngWZ8e

 >>193

 繊細な装飾で職人技なデザインだねぇ

 赤い石がオシャレ感を出してる


196:名無しの転生者さん ID:Samw2rAi

 想いのこもった一品でござるな


200:1 ID:V1lLa1n+

 私「みんな仲良しそうでいいね~」

 妹「そうなの!」

 兄「あはは、まあそうですかね」

 こんな感じで耳長族の話を聞いたけど世界の耳長族はわりとよくある感じのエルフ的な種族みたい

 寿命長い、閉鎖的で排他的で他種族より上みたいな自負、魔術に長けてる


 あと髪飾りがとれかけてたから直したら顔を赤くした妹

 [画像ファイル]

 うっかり距離が近くなったけどそういえば想い人の体だった


201:名無しの転生者さん ID:lfRpeaxo

 ありがとう……


202:名無しの転生者さん ID:NOyRit2T

 >>200

 きゃわ~


205:名無しの転生者さん ID:Ldh7TgdZ

 >>200

 罪なイッチ


210:名無しの転生者さん ID:uqKO/6oH

 写真をエルフの森スレに転載したら住民が湧き上がって草


208:名無しの転生者さん ID:KeCy8LvA

 エルフかぁ

 俺人間にしかなったことないから若干あこがれるわ


211:名無しの転生者さん ID:fa1nEB/X

 >>208

 ここの転生者は基本ずっと人間だもんね

 性別も変わらないことが多いしあんまりにも違いすぎる世界に産まれるパターンも少ないし


215:名無しの転生者さん ID:9C5y+U4x

 >>211

 1:似てない世界がほぼ存在しない説

 2:魂にも規格があって魂に合う環境・存在にしか生まれない説

 3:合わない世界に生まれても速攻で死んで記憶にも残ってない説

 4:その他

 俺は2を推してる


216:1 ID:V1lLa1n+

 こうしてお話してるうちにラグルスくんが戻ってきてお開きになった

 今日は償いリストに載ってたこの歌で疲れてる様子なラグルスくんを寝かしつけます

 [音声ファイル]

 なんか歌で魔術を使う研究があってその結果できたみたい


217:1 ID:V1lLa1n+

 あれ人いなくなった?


218:名無しの転生者さん ID:ZaYM4VEH

 >>217

 もしかしてスレ越しに歌効いてね?

 俺はそもそもファイル開かなかったんだけど



*****



 ノナが検査を受けた翌日。事件の後始末がひと段落し、ふたりは楽園を出発した。


「じゃあ、元気でね! あとあの歌効き目ばっちりだったよ!」

「妙な歌の実験台にした俺へ何か言うことは?」

「できれば普段からあのぐらいよく寝たほうがいいと思う!」

「貴様ァ……」


 耳長の兄妹が騒がしく去っていくふたりを見送る。ラグルスの小さくなっていく背中。それを名残惜しそうにを見つめる妹をキュリノがなだめた。気を落とした様子で下を向いた頭を撫でれば、彼女はムッとして手をどける。


「もう、お兄ちゃん!」

「ごめんごめん。あ、これ金具が壊れかけてるから直しておくね」


 そう言ってミュリノの頭から髪飾りを外し、足早に自室へと戻る。繊細な細工が施されたそれを半ば投げつけるように机に置き、キュリノは机にある手紙を手に取った。耳長族の里から送られてきたものだ。もうすでに目を通した内容をあらためて確認する。


『みんな仲良しそうでいいね~』


 彼の脳裏に、昨日聞いたノナの言葉が蘇った。


「……『仲良し』、ね」


 ぐしゃ。キュリノが握りつぶされた手紙を見るその目には、暗い感情が浮かんでいた。


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