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056 2-2-4 職場見学

 こつこつこつ。敷き詰められた白い石が円形の模様を形作る廊下に、2人分の足音が響く。

 研究所を案内されているノナは兄妹の兄の方、キュリノに与えられた研究室へと向かっていた。


「食堂のご飯、美味しそうだったなぁ~。ラグルスくんが戻ってから一緒に行こうかな」

「その時はボクもご一緒させてもらっていいですか? 食事しながらラグルスさんの話も聞きたいですし」


 あの不本意な勘違いを訂正したのち、ノナは妹の方と別れキュリノに研究所内を回っているところだ。先ほどまでに事務室に図書館、休憩室、そして食堂を見たところである。

 楽園の街並みと同じく白を基調とした空間を歩いてゆき、少年が近距離に並ぶ扉のうち1つを前に立ち止まった。扉を開ける。


「どうぞ! ここがボクの研究室です!」

「おぉ……!」


 他の施設と同じく、扉の中には廊下から見るよりもずっと大きい部屋だ。扉から覗いて右側の壁には本棚が並び、その前に椅子と机、上には積まれた数冊の本と数枚の紙にペンがある。左側の空間は何か実験器具のようなものが乗った大きな机と椅子があり、壁ぎわの棚には色とりどりの薬品や容器が見えた。

 いかにも、という風情である。ノナは少し興奮して目を輝かせながら感想を話す。


「すごい! なんか、こう……なんか魔術師って感じ!」

「ええと、魔術師って感じが何を指すかはわからないけど、ありがとう! 見てわかると思うんですが、あっちのスペースで研究をしています」

「薬品とかの研究?」

「どちらかといえば毒の研究ですね。結果的に薬品ができることもありますが、あの棚の中身はほとんど毒といって差し支えないですよ」


 棚の中、瓶に詰まった液体を眺めながら彼は続ける。


「薬ならむしろラグルスさんの方が詳しいと思いますよ。外に出る少し前からは神や聖物のことを調べていて、あまりそちらは手をつけていませんでしたが……」

「そういえばラグルスくん、結構長い間ここを出てたと思うんだけど、そんなに長く外出してて大丈夫なものなの? あれでわりとえらい人なんだよね?」

「外部調査も重要な仕事ですから。ラグルスさん、ある日いきなり外部調査に手を挙げて、手をつけてる研究はどうするのかと思ったら論文を他の研究員に投げてましたよ」


 キュリノが当時を思い出しているのか、目を閉じる。少し困った顔だ。


「まだ形になってなかったはずなのに急に完成してるから話題になってました。それでそのまま出て行って、残された論文は下の人員があわただしく検証してましたよ」

「わぁ、人使い荒いなぁ」


 おそらくはその時期にラグルスが巻き戻っていたのだろう。そして元々完成形を知っている研究を他者へと投げて外へ出たのだ。ノナは一人納得した。


「そういえばラグルスくんってここの人たちからはどう思われてるの? なんかみんな反応が変な感じなんだけど……やっぱり怖がられてたり?」

「あー……まあ、そうですね」


 ふと気になったことを聞いてみると、苦笑いが返ってくる。


 ここに来るまでの間に何人か一般の研究員だろう人々とすれ違ったが、皆一様に緊張や軽度の怯えが見てとれた。とりあえずにこやかに挨拶などしてみたが、反応は妙なものを見る目をされるか、そそくさと立ち去るかというものだった。

 特にひどかったのは、キュリノが一度何かの手続きで離れた時に近くの廊下を通りがかった者だ。彼女を見たとたんに抱えた大きなカバンを落とし、それを拾ってやるとひどく緊張した面持ちでひったくるように荷物を取って逃げていった。かなりの怯えられようである。


 そんな研究員たちの様子を思い返し、今度ラグルスくんイメージアップ作戦でもやってみようか、などとノナが考えていると困った顔でキュリノが話を続ける。


「ラグルスさん、実戦指導の時すごいからなぁ……。一応まともに教えを乞う相手なら導く気はあると思うんですけど、求めるレベルが高いというか……」

「私も前に一度指導してもらったことがあるけど、たしかにスパルタ——えと、厳しかったよ。まあ私が魔術下手くそなのが大きいとは思うけど」


 ノナが過去のラグルスの態度を思い返し少しげんなりとした表情をすると、目の前の相手が苦笑いする。


「初めての魔術でラグルスさんの指導はちょっときついかもしれませんね。もしよければ、ボクと練習しませんか? 元々この次は演習場へ行くつもりでしたし」

「いいの? じゃあお言葉に甘えようかな」

「妹がご迷惑をおかけしてしまったので、その埋め合わせということで。あの子も普段はあんな感じじゃないんですが……」


 こうしてキュリノに魔術を見てもらうことになった彼女は、そのまま演習場へと向かった。そこで彼に魔術を使って見せたり、まだ恐れを知らない新人たちに絡まれ試合をした。したのだが……。



*****



元悪役なラグルスくんと1のスレ 11


127:1 ID:V1lLa1n+

 あっさり全勝した私「えぇ……?」

 さっきまでイキイキイキってた新人たち「くっ、あんな魔術、おかしいだろ……!」

 私「ラグルスくんには滅茶苦茶ボロクソに言われてたのに……?」

 耳長兄「それは多分ラグルスさんの基準がおかしいからですね」


 ラグルスあの野郎(怒)


128:名無しの転生者さん ID:wCqsy9zr

 >>127

 怒ってて草


130:名無しの転生者さん ID:8g5rJ5Gm

 >>127

 まあ世界滅亡したるで!レベルの奴からすりゃ世の大体の相手はカスなんやろな


131:名無しの転生者さん ID:ZaYM4VEH

 つまり今のイッチなら屋内でも強い魔術バンバン使えたってこと?


135:名無しの転生者さん ID:5PZyVgBL

 >>131

 兄たちから見て充分できてたとしてもどのみち屋内使用の制限は必要だったんじゃないか?

 たしか入れ替わった後も1回なにか盛大に吹き飛ばしてたし

 今回はそこまでの魔術は使ってないし場所も強魔術ぶっぱなせる仕様になってるだろうけど他の場面じゃ厳しいだろ


134:名無しの転生者さん ID:oQyvScqi

 イッチもうすうす自分でわかってたんちゃうん?

 魔術のレベル


137:1 ID:V1lLa1n+

 >>134

 確かに、たまに「これもしかしてラグルスくんの魔術が強すぎて要求レベルがおかしいってことなのでは?」と思うことはあったけど!

 旅の途中で見かける魔術師たちの姿にうすうす「私のレベル別に低くないのでは?」と思いつつも魔術のプロで部下の指導もやってるっていうラグルスくんが言うならって、そう思って納得してたのに!

 それで毎日がんばって、日課の体操の後に魔術の特訓もやってたのに!

 ラグルスくんのばか!!


139:名無しの転生者さん ID:uqKO/6oH

 >>137

 このタイミングで「私の魔術がおかしいって、弱すぎって意味だよね?」とか言おうぜ

 チャンスだろ


142:名無しの転生者さん ID:qJfRGTx3

 >>139

 ラグルスくんにおこでそれどころじゃないんじゃねw


140:名無しの転生者さん ID:KeCy8LvA

 >>137

 そこで「もしかして?」と思っちゃうあたりスレ主は無自覚つよつよ主人公の素質がないな


147:名無しの転生者さん ID:5PZyVgBL

 >>140

 無自覚系主人公は自覚した時点で成立しないからな

 自覚してしまう主人公は主人公たりえない

 これを無自覚のジレンマという


145:1 ID:V1lLa1n+

 ここでラグルスくんのあほ登場

 ラグルス「新入りと遊んでいたのか?」

 私「今ラグルスくんの魔術の要求レベルが高すぎるって判明したところ(怒)」

 ラグルス「以前は聖剣を相手にしていた、今は依頼中に何があるかわからない。要求が高すぎるなどということはないだろう」


148:名無しの転生者さん ID:9C5y+U4x

 >>145

 まあそれはそう


150:名無しの転生者さん ID:wCqsy9zr

 でもラグルスくんの魔術スパルタは「俺の体でそんな低レベル許さん」が理由じゃなかったっけ


151:名無しの転生者さん ID:5PZyVgBL

 実際イッチ自身の肉体じゃない以上物理攻撃もちょっと威力ダウンしてるんだろ?

 いちおう魔術もレベルアップしといたほうがいいだろ


153:1 ID:V1lLa1n+

 ただでさえラグルスくんの恋愛模様に巻き込まれがちなのにここでも問題起きてるし(怒)

 どっか行ってた耳長妹も帰ってきたし(怒)


155:名無しの転生者さん ID:I/sDmlbO

 >>153

 恋愛に関してはラグルス本人も不本意だと思うけど…


156:名無しの転生者さん ID:RCUT9dEx

 >>153

 怒りで違う問題も出してくるのはよくないぞ


158:名無しの転生者さん ID:qJfRGTx3

 恋愛模様って他にもなんかあったん?

 今起きてるってのは耳長妹のことだろうけど


162:名無しの転生者さん ID:uqKO/6oH

 >>158

 変なヤツに好かれる体質なのかたまにトラブルが起きてる


165:名無しの転生者さん ID:5PZyVgBL

 >>158

 最初憑依してた期間に大変に気持ちの悪い変態が襲ってきたことがあったぞ

 すぐ殴り飛ばされてたけど


166:名無しの転生者さん ID:I/sDmlbO

 >>158

 入れ替わってちょっと後ぐらいにラグルスを屈服させたい奴とラグルスに屈服させられたい奴に出会ったりしてた

 同時にかちあったからそいつらが喧嘩しだしてその隙に逃げてたわ


160:名無しの転生者さん ID:lfRpeaxo

 エルフ妹はなんか言ってる?


162:1 ID:V1lLa1n+

 >>160

 ラグルスくんの恋愛トラブルの話からなんか耳長妹がアプローチしてる


163:名無しの転生者さん ID:NOyRit2T

 >>162

 おっ恋バナか?


164:名無しの転生者さん ID:ga+SlRKR0

 >>163

 kwsk


166:1 ID:V1lLa1n+

 一部スレ民の期待するような話にはなってない

 ラグルスくんがわりとばっさり斬ってる感じ


 ラグルス「そもそも貴様にそういった感情を抱いていない」

 耳長妹「……あいつとそういう仲だからですか?」

 とばっちり なぜ 検索


169:名無しの転生者さん ID:wCqsy9zr

 >>166

 まだ疑われてて草


167:名無しの転生者さん ID:ZaYM4VEH

 流れ弾がイッチを襲う


170:名無しの転生者さん ID:9C5y+U4x

 二次元と現実の区別をつけてもろて


173:1 ID:V1lLa1n+

 ラグルス「仮にそうでなかったとしても貴様とどうにかなることはない」

 私「いやちゃんと否定して」

 耳長妹「~~~!!」

 顔赤くなってる……現場の雰囲気悪いぜ……

 [画像ファイル]


174:名無しの転生者さん ID:RCUT9dEx

 >>173

 ほぼ公開告白からの公開失恋だからな

 そりゃ空気も悪くなる


177:名無しの転生者さん ID:uS/snMxj

 >>173

 公開プロポーズ失敗の動画みたい

 こっぴどくフられるやつ


180:1 ID:V1lLa1n+

 えっ決闘?


181:名無しの転生者さん ID:NOyRit2T

 決闘?


183:名無しの転生者さん ID:qJfRGTx3

 >>180

 決闘ていきなり何


186:1 ID:V1lLa1n+

 耳長兄「楽園のしきたり、その35!6人以上10人未満の眼前で告白に失敗した者は、恋敵と魔術決闘をしなければならない!」

 ラグルス「くっ、まさかそのルールに触れてしまうとは……!」

 耳長妹「……どうやら決着をつける必要があるみたいね」

 新人ズ「おお!サブマスターの決闘だ!」

 私「そのしきたりは何を目的にしてるの?そんなピンポイントで抵触することある?というか今の告白してるうちに入ったの?そもそもなんで皆普通に受け入れてるの???」


 なんか私だけノリについていけてないんですが……


187:名無しの転生者さん ID:9C5y+U4x

 そんなことある?


191:名無しの転生者さん ID:5PZyVgBL

 >>187

 イッチの世界にはあるみたいだな


189:名無しの転生者さん ID:uS/snMxj

 土地独自の文化ってわりと謎なやつあるよね

 俺は手袋投げるやつがよくわかんない


192:名無しの転生者さん ID:NOyRit2T

 >>189

 手袋てどういうやつ?


195:名無しの転生者さん ID:oQyvScqi

 >>192

 文化によっては手袋投げつけが決闘申し込みでそれを拾うと決闘受付になるんやで

 平穏に生きたいなら異世界で落ちてても拾うべきでないアイテム第3位や


201:名無しの転生者さん ID:uqKO/6oH

 >>195

 異世界だけじゃなく地球にもある文化だけど知らん奴もちょいちょいいるよな>手袋

 この前手袋を拾えって言われて「自分で投げたんだから自分で拾いなさい!」って怒ってた転生者いたわ


203:名無しの転生者さん ID:NOyRit2T

 へーじゃあ時々道に軍手落ちてるのってそういうことか


206:名無しの転生者さん ID:KeCy8LvA

 >>203

 それは多分ちがうと思う


199:名無しの転生者さん ID:qJfRGTx3

 イッチ告白決闘がんばw


200:1 ID:V1lLa1n+

 なんかやだぁ……


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