036 1-5-1 決戦へと駆けてゆく
彼女がラグルスを問い詰めてから1週間ほど後のことである。
とある国の王都、人も物も仕事も集まる街、その喧騒から少し離れた場所。そこには勇者アーク・シェインナがリーダーを務めるクランの拠点があった。
建物の近く、高い木の枝に身を隠した彼女は窓の中を見る。窓辺では、勇者が聖剣の手入れをしていた。彼女の目に映る勇者はどことなく覇気がない。
彼女はこれからの行動を改めて確認した。
「……よし」
その瞳には闘志が燃えている。絶対にやってやるぞ、と今までの生の中で一番心が奮い立つ。
彼女は作戦を開始した。
*****
【生きたい】悪役魔術師ラグルスになった女のスレ 13
111:1 ID:V1lLa1n+
ここがあの男のハウスね……!
[画像ファイル]
113:名無しの転生者さん ID:uqKO/6oH
ハウスっていうか拠点な
114:名無しの転生者さん ID:5PZyVgBL
確かに家っぽいけども
116:名無しの転生者さん ID:a7d8VEnt
いよいよ戦うのか
手汗かいてきた
119:名無しの転生者さん ID:8g5rJ5Gm
ほんとに決戦までショートカットしてええんか?
失敗したらワイも困るんやが
120:名無しの転生者さん ID:uqKO/6oH
街滅びイベントを飛ばさなかったらもっと時間稼げるよな
街は滅ぶけど
124:名無しの転生者さん ID:ZaYM4VEH
>>120
街滅ぶのをサラッと提案するの怖い
たしかに時間は稼げるけど人の心ないんか案件
125:1 ID:V1lLa1n+
街滅びイベントをカットしてもなんとか時間は足りるはず
時間足りなくても最悪何日か戦いつづければいいし
大惨事になるのわかってて放置できるほど割り切るのも難しいし、心情的に
あと私たちのせいにされて無駄に恨みを買っても面倒だし……
というわけでラストバトルまで巻いていきます
127:名無しの転生者さん ID:wCqsy9zr
たしかに一度犯人って思われると聖剣止めた後もなんかごたごたしそう
128:名無しの転生者さん ID:qJfRGTx3
イベントこなさなくてもラストバトルできんの?
131:名無しの転生者さん ID:9C5y+U4x
聖剣的には一行だけとはいえ原作に一応あったイベントならこなそうとするのでは
133:名無しの転生者さん ID:RCUT9dEx
時間はまあ、たぶん足りるだろ
この勢いなら
136:1 ID:V1lLa1n+
聖剣くん色々ガバいし、多分大丈夫じゃないかと思ってる
この前の聖剣貫かれ事件の時もまだ街滅びイベント前なのに勇者くん本気でこっちを殺そうとしてたし
「勇者がラグルスを倒してめでたしめでたしハッピーエンド!」をやれるなら割と他は適当でいけそう
137:名無しの転生者さん ID:wCqsy9zr
で、勇者くんと今から戦うと
139:名無しの転生者さん ID:ZaYM4VEH
どっかおびき出す感じ?
その辺まだ人通りとか建物あるよな
141:名無しの転生者さん ID:8g5rJ5Gm
イッチから見て勝算はどれぐらいあるん?
145:1 ID:V1lLa1n+
データから言えば、私の勝率は90%といったところかな(メガネクイッ)
ちなみに勇者くんを近くのだだっ広い草原に呼び出す予定
導かれて錯乱中な勇者くんにその場で襲われたら嫌なので近くのごろつきにお金を握らせてお手紙を渡します
[画像ファイル]
147:名無しの転生者さん ID:oQyvScqi
>>145
データキャラやりたいならもっとかしこさの数値あげてもろて
149:名無しの転生者さん ID:NOyRit2T
金貨見せながらゲスな笑顔するのやめよう
150:名無しの転生者さん ID:RCUT9dEx
>>145
ラグルスくん眼鏡かけてないだろ
その確率もどっから計算したんだよ
152:名無しの転生者さん ID:wCqsy9zr
>近くのごろつきにお金を握らせて
手法がチンピラムーブ感あって草生える
そんなんで勇者くんおびき出せるか?
155:名無しの転生者さん ID:ZaYM4VEH
>>145
なぜこの状況で悪役っぽい顔をしてしまうのか
しかも悪役にしてもキャラの方向性変わってるし
156:1 ID:V1lLa1n+
>>150
ラグルスくんの所持品の中に眼鏡あったから普段はともかくかける時はかけてるはず
>>152
聖剣はクソガバだしまあ大丈夫っしょ
小説では一対一で最後の戦いしてたし場所も似てるし指定した時間帯も合ってるし
それなりに再現度はあるはず
ダメだったらまた考える
158:名無しの転生者さん ID:qJfRGTx3
>>156
行き当たりばったりじゃん
まあダメでもまだ街滅ぶイベント終わるまでは多分イッチは殺されないだろうけど
159:名無しの転生者さん ID:uqKO/6oH
ぶっちゃけ聖剣くんのガバ具合ならいけそうな気はする
162:1 ID:V1lLa1n+
というわけで今やることは終わったし指定時間まで適当に雑談しよ
テーマは「神経がわからない話」で
163:名無しの転生者さん ID:Ldh7TgdZ
この状況でサラッと雑談に移行できるイッチの神経がわからない
165:名無しの転生者さん ID:fa1nEB/X
私の一番神経がわからなかった経験は近所の本屋でやってたこの叙述トリックがすごい!フェア
その日帰ったら読むつもりだった本がそこに平積みされてて俺は僕は私は
166:名無しの転生者さん ID:oQyvScqi
もはや作品に対するテロやんけ
168:名無しの転生者さん ID:wCqsy9zr
>>165
ネタバレフェア開催するヤバ書店で大草原
169:名無しの転生者さん ID:RCUT9dEx
作品を殺す気か?
171:1 ID:V1lLa1n+
並べられた本のいいところを台無しにするフェアで草も生えない
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勇者アークの拠点からいくらか離れた草原で、日が暮れてゆくのを眺める。
彼女が予想していたよりも、その心は凪いでいた。
ゆっくりと姿を消していく太陽を見つめていれば、ふと近づいてくる気配を感じる。気配の方向を見やれば勇者が向かってくる姿。
その表情はラグルスへの殺気により歪んでいた。顔だけを見ればどちらが悪役かわからないだろう。
「来たか。まあ、怖気づくようなことなどないとは思っていたが……」
一言、声をかけただけでこちらへ向かう殺気が一気にふくれあがる。どうやらこちらの一挙手一投足がお気に召さないらしい。
ピリピリと感じる殺気を気にもしない彼女が構える杖、その先には魔力が渦巻く。
「さあ来い、遊んでやろう」
相対する勇者の表情とは全く異なる自身ありげな笑みを浮かべ、合図のごとく派手に魔術を投げつける。
こうして、彼女は決戦の幕を切って落とした。




