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私in俺!〜悪役憑依と転生ちゃんねる〜  作者: 吉祥 瑞喜
4章 不本意ながら世界の真実

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32/76

032 1-4-6 彼の心当たり

【生きたい】悪役魔術師ラグルスになった女のスレ 10


521:1 ID:V1lLa1n+

 光で若干目を焼かれつつ、混乱に乗じ無事生還

 [画像ファイル]


522:名無しの転生者さん ID:hEr0iNE/

 イッチ生きとったんかいワレ


524:名無しの転生者さん ID:qJfRGTx3

 おめでと


525:名無しの転生者さん ID:ga+SlRKR0

 どうやったんや


527:名無しの転生者さん ID:8g5rJ5Gm

 >>521

 成仏してクレメンス…


528:名無しの転生者さん ID:f4lkrxnU

 ☆☆☆☆転生者が死んだら書き込むスレ一覧☆☆☆☆


 【成仏させて】死因報告スレpart303【クレメンス】

 [URL]

 苦しかった死に方昇華スレ 114☆彡

 [URL]

 そろそろ輪廻を終えたい人のスレ その158

 [URL]


530:1 ID:V1lLa1n+

 >>527

 まだ死んでない

 異教の信徒たちにもらったペンダント、瀕死状態の時に治してくれる聖物だったんだってさ

 もう壊れちゃったけど(´・ω・`)


 それでなんか周りがビッカビカになったから魔術でさらに光を追加しつつ逃げてきた

 視力は死んだ 一時的に

 逃げ足に定評があるスレ主です


533:名無しの転生者さん ID:wCqsy9zr

 >>530

 神殿ダンジョンでお礼にもらったやつ?


535:名無しの転生者さん ID:5PZyVgBL

 >>533

 >なんか感謝されて異教に伝わる宝物とかいうペンダントまでもらったんだけど

 >命を救ったとかいう伝説が伝わってるアイテムらしい

 >実際どのくらい効果があるかわかんないけど保険にって


 これか


538:名無しの転生者さん ID:8g5rJ5Gm

 >>530

 情けは人の為ならずみたいな展開になっとるやんけ

 かゆくなってきたわ


539:名無しの転生者さん ID:Samw2rAi

 生きてて良かったでござる


541:名無しの転生者さん ID:Ldh7TgdZ

 しかし勇者くん正気を失いすぎでは?

 イッチが親でも殺したんか?


542:名無しの転生者さん ID:9C5y+U4x

 >>541

 聖女に手を出したと勘違いしてたとしてもあの状態は異常だよな

 仲間の声も全然聞こえてなかったっぽいしはたから見てもヤバいぞあれ


545:1 ID:V1lLa1n+

 >>541

 勇者くんは両親ともにご健在のはず

 これからラグルスくんに心当たりないか聞いてみるつもり



*****



「アーク、いったいどうしてしまったんだ? あんな風になるなんて……」


 虹の洞窟の入り口で、勇者アークの仲間である眼鏡をかけた学者の男が言う。

 ラグルスが姿を消した後、学者と王女の2人はとりあえず勇者を落ち着かせて、彼から事情を聞き出していた。


「……」

「アーク、私は彼に害されたわけではありません。むしろ彼に助けられたのです」


 うつむいて血に濡れた聖剣を見つめる勇者アークに対し、ようやく意識の戻った聖女が話す。

 勇者アークは仲間たちの言葉にも反応を示さない。


「アーク?」

「……どうしたんだ、アーク?」


 様子のおかしい彼に対し仲間たちがさらに問いかけると、勇者はゆっくりと顔を上げる。


「……い」

「え? なんだ?」


 何かをつぶやいた勇者に仲間が聞き返す。

 勇者は憔悴しきった目で、静かに言葉を落とした。


「……わからない。自分がわからないんだ……」


 そう言ったきり、彼は手で顔を覆い沈黙する。

 その横では聖剣がラグルスの血によりてらてらと光を反射していた。



 *



 全てが灰色の空間、精神世界にて。

 逃げた先の町、そこにある宿で彼女は眠りにつきラグルスと対面している。


「ラグルスく~~~ん! 教えて教えて教えてよぉ~~~~~!!!」

「ああもう鬱陶しい! 俺は何も知らないと言っているだろうが!」


 彼女は全力で駄々をこねていた。ラグルスの足元にしがみついている。


 彼女がラグルスに話をしようと顔を合わせたその時、その様子がいつもと違い、どこか気分が沈んでいるように見えた。

 そして勇者アークのあの異常な様子に心当たりがないのかを聞いてみたところ、ラグルスは明らかに何かを知っているようなそぶりを見せたのだ。

 しかも一瞬ではあるが彼の動揺が伝わってきた。これは黒である。

 ラグルスから情報を聞き出そうにも交渉術など彼女は知らない。なのでひたすらしつこく質問していた。


「おりゃ!」

「う゛っっ!」


 堂々巡りの会話についにしびれを切らした彼女が、一度離れふたたびラグルスにとびついた。

 勢いが強く2人とも倒れこむ。

 そのまま全身を使って彼の体をぐいぐいと締め上げる。


「話してくれないなら人前でと~ってもスペシャルな駄々こねを見せるし、派手な格好して私が兄ですって看板持って町を練り歩いてやるからな!」

「っぐ、ふっふざ、けるなよ、っき、さまァ……ッ!」


 彼女はもともと物理攻撃の方が得意であるせいか、あるいは現在ラグルスの魂が弱っているゆえか。

 特に技などを用いずに純粋な筋力だけで締め付けているのにもかかわらず、彼の呼吸がかなり圧迫されている。

 しかし彼女も多少手加減をしていたのか、彼が全力で振り払うと離されてしまいべちゃりと床に落ちた。


「んぎゃっ」

「ゴホッ、と、とにかく、俺は何も知らない……!」

「……嘘つき。ラグルスくんだって本当はわかってるんでしょ、お互い伝わってるってこと」


 咳き込みながらなおも否定する彼を、彼女がじとりと見つめる。

 彼は視線をそらした。

 よっぽど話したくないらしいが、彼女には諦めるつもりなど微塵もない。


「私は長生きしたことないし、人生経験があんまり多くはないけどさ。それでも回数こなした分だけ多少人を見る目はある、と思う」

「……」

「それが言っている……ラグルスくんは何かを抱え込んでいる、と!」


 びしっ、と彼女は人差し指を突きつけた。

 相手はぴくりと眉を動かしただけで、他には反応を見せず目線も合わない。

 彼女は真剣な顔をして続ける。


「その抱え込んだ何かを、話してほしい。きっと力になれると思う」


 ——難しい問題が飛び出てきても、スレで相談したらなんかいいアイデアだって出てくるだろうし。


 彼女は手に負えない事をスレッドに丸投げする気満々で楽観的に考えていた。

 説得している間にうつむき、額をおさえていた彼が顔を上げた。


「……力になれる、だと?」


 ようやくラグルスと視線が絡む。

 彼女の言葉のうちいったい何に神経を逆なでされたのか、その目は険しい。


「ははっ、……貴様にいったい何ができるというんだ? つい先ほども奴の攻撃を防げなかっただろうが!」

「何ができるって、そんなの事情を聞いてみないとわかんないよ!」


 言外にお前には何もできないと言っていることを理解し、彼女がむっとしながら答えた。


「貴様に話すことなど無いし何の意味もない!」


 ひたすらに頑ななラグルスに、段々と腹が立ってきた彼女はラグルスに詰め寄る。

 彼女もラグルスもその目に怒りの色が浮かんでいた。

 2人とも声量は大きくなり、お互い怒鳴るように言葉を投げつけている。


「無意味とかやってみないとわからないでしょ! なんでそんなこと言うの!?」

()()()()()()糸口さえつかめなかった! それを貴様に話そうが解決するわけもないだろう!」

「……何度死のうと?」


 彼女が聞き返す。

 ラグルスは自分の口にした言葉を理解すると、さぁっと顔を青くした。

 血の気の引いた顔、上がった息、焦点の合わない目。彼女から見て、ラグルスはとてもひどい顔をしている。

 まるで何かに怯えているかのような、あるいは何か大変なものを意図せず壊してしまったかのような。


「ラグルスくん……?」


 尋常でないその様子に、怒りのしぼんだ彼女がおそるおそる呼びかけた。

 するとラグルスは我に返り、突然彼女の肩をつかむ。


「おい、……っ大丈夫なのか? 何か異常は?」

「え、っと、どこも何もないけど……」


 初めて見る必死な彼の様子に、へどもどしながら彼女が答える。

 返答を聞いて自分の目でも彼女の状態を確かめたラグルスは、ずるずると地面にへたり込んでしまった。

 深く息をつく彼に、何が何だかわからない彼女が問う。


「ラグルスくん、さっきから一体どういうこと? 何度死のうと、とか大丈夫か、とか……ちゃんと説明してほしい」


 静かに落とされたその質問に、彼はしばらく視線をうろうろとさまよわせた。

 そして彼女と目を合わせ、さらに無言の時間が続きようやく、しぼりだすように言葉を放つ。


「長い話になる。そのうえあまり気分の良い話でもないが。……聞いてくれ」


 今までで一番真剣な顔に、彼女は真面目な顔をして頷いた。

 彼は語りだす。


「まず、俺が()()()()()()()のことだ。あの時、俺は勇者と相打ちになった」


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