トラブル発生!?
「ちょっと!?なんでまだ2000キロも残ってるの??」
「いや……それはだな……」
宿場町を出発して2週間。早ければ既にンタンバラに到着していてもおかしくない。
しかし、俺達は半分の2000キロしか足を進めていなかったのだ。
今は旅人のために用意されているとされている動物が寄りつかない魔法が掛けられた休憩所にやって来ていた。
理由はハッキリとしている。
「私、結構ノンストップで走ったよね?」
うん、ミホノはここまで良く頑張ってくれたよ。夜間以外は基本走りっぱなしだったし。
「もしかして、道をわざと外して進んでいたんじゃ無いでしょうね?」
よく分かったな。まさにその通りだ。
「なんで?」
ミホノは俺の心を読んで目を細めた。馬の状態でも目を細める事が出来るんだな。
何で馬の姿なのかというと単に変身するのが面倒だからだ。魔法だし普通に体力を使う。
「その、山の幸をたくさん採ってるうちにもっと欲しくなって、ちょっと遠回りしたくなっちゃったんだよ」
「その結果がこれって訳ね」
俺の手の中にある地図を鼻先で指した。うん、宿場町とンタンバラのちょうど真ん中……ホントおっしゃるとおりです。
「私、宿場町で2週間分の食料しか買ってないんだけど……もしかして」
「ほぼ0だ」
ちょうど今朝の分で俺達2人用の冷蔵庫・冷凍庫はすっからかんになったよ。新品のようにね。
「その分、店で出すようの食材は満杯だぜ!」
出発前に冷凍庫を増やしておいて良かったぜ。もし、増やしてなかったらゴリラクマの肉を入れられなかった。
「そんなに採ったの……」
人の姿だったら間違いなく顔を手で覆って天を仰いでいるな。呆れたって意味を込めたアレな。
「だから、残り2000キロはほぼ真っ直ぐ町に向かう予定だ」
「『予定だ』じゃ無いわよ!!このまま旅を続けたら町に着く前に私たちが飢え死にするわ!!!」
馬の姿でマジで良かった。この感じだと間違い無くボコられていたな……
「私の服持ってきて」
「お、おう……」
低いトーンで指示を出した。どうやら人間の姿になるらしい。
俺は言われるがままにミホノの洋服を適当に見繕ってバックに詰めた。下着類は触ると申し訳無いので入れてない。
それをミホノの首からかけてあげると森の奥に逃げ込むように走って行った。あの~そこまで遠くに行かなくても覗きませんよ?
「お待たせ」
しばらくしてミホノが帰ってきた。適当に取った洋服が部屋着だったためとてもラフな格好をしている。上半身は少し大きめの半袖Tシャツを来ている。ってあれ?
「貴方のTシャツが入ってたわよ。焦りすぎ」
やっぱり俺のだったか。それにしてはだぼっとしすぎじゃね?こう見ると彼女との体格差を感じるな。
下半身はミホノの短パンだったため大丈夫そうだ。俺のTシャツをズボンの中に入れているため部屋着なのに少しお洒落に見えた。あれ?俺が来ているときより数倍お似合いなんだが??
「あの……あまりジロジロ見ないで……特に胸元」
と言ってるが胸元には腕で押さえているから直接的には見ることが出来ない。てか、力強く抑えすぎてあまり大きくない胸が大きく見えるから止めた方が良いぞ。
「で、なんで変身したの?」
「そうだった」
ミホノはわざとらしく咳払いをするとジッと俺を見つめた。
「貴方には罰を与えます。私たち、いや私の食料を0にした罰をね」
「どんな罰?」
「貴方には1ヶ月分程度の私たち2人の食料を採ってくると言う罰を与えます。それが達成出来るまで私は馬にはなりません」
なるほど。しっかりと食料を確保しないと旅を続けられないって言いたいのだな。
ミホノの言うことはとても正しい。商品用の食材は使うわけにはいかないもんな。
「と言う訳なのでちゃっちゃと獲りに行ってください。私は長旅の疲れを癒やさせて頂きます」
言うと荷台の中に行ってしまった。しかも鍵をかけられた。
これは相当怒っていらっしゃいますな。まあ、俺が悪いので何も反論出来ないんだけどな。
しょうが無い。食材を取ってこよう。
食材を取ろうと思って森に繰り出しても早々に獲物に出くわすほど甘くは無い。
休憩所から離れて2時間は経とうとしているが一向にめぼしい獲物を見つけられないでいた。
主菜は2週間コムギが成熟しているため問題は無い。そのため俺が欲しているのは巨大な動物だ。3から5メートルぐらいの大きさの動物ならば1頭あたり2週間分の肉を手に入れることが出来る。
理想はイノシシ。アレは肉が詰まってるから食料にはもってこいなんだよな。
イノシシ出てこいと思いながら山を駆け回るも現れるのは野鳥ぐらい。彼らを捕獲しても良いのだが、あいつらじゃ1日分にしかならない。しかも、空を飛ぶ分捕獲が面倒くさい。
もうこの際ならなんでも良いから地上で生活する動物よ出てこいや~
すると、俺の想いが届いたのか遠くの方から複数の足音が聞こえてきた。やった、そう思ったのは彼らと対面する直前までだった。
「さすがにこの量はいらんのよ」
現れたのは狼の群れ。その数ざっと数えて30。
「ん、でもこいつら。上手いって書いてあった種類じゃね?」
奴らの顔、毛の色を見てこの前本屋で読んだ記憶があった。
普通の狼よりも耳の軟骨が少ないせいで耳が顔に垂れているのが特徴。普通の狼ではあり得ない派手な黄色をした毛。間違い無い。
「黄色い狼とかお前らお得意の隠密行動が出来ないんじゃ無いか?」
「ウルサイ。ワレワレハチカラガツヨイカラオンミツコウドウナドスルヒツヨウガナイ」
おっと、少し喋れるのか。でも、片言だしミホノのような知能はなさそうだな。まあ、あいつは人並みの知能を持っているから動物としてカウントしない方が良さそうだな。
「ニンゲンハワタシタチノダイコウブツナショクザイオマエニハワルイガワレワレノチニクニナッテモラウ」
「悪いが、それはこっちのセリフだ。お前ら全員を肉にすれば1ヶ月分の食材になるだろ」
いや、2ヶ月?3ヶ月は持つかもな。
こいつらの全長はざっとだが1mはありそうだ。イヌだから食べられる部分は少ないがそれでも30いれば最低でも1ヶ月は持ちそうだ。
「モウイイ、ミンナエモノヲカレ」
俺と対峙する狼の指示により他29体の狼が一斉に俺に飛びかかってきた。
こいつら意外とすばしっこいな。トラのスピードが可愛く見える。
「トウゼンダ、コイツラニハオレノマホウ『スピードゾウキョウ』ヲフヨシテイルンダカラナ」
まじか、こいつ魔法持ちの動物か。どうりで飛びかかってくる度にスピードが早くなるわけだ。
後数回もしたら目視でよけるのは厳しくなりそうだ。なら、そうなる前に反撃するだけだ。こいつらは素早さを売りにしているだけで動きは単調。上手く合わせれば。
「おりゃぁあーーー!」
短剣を縦に構え、飛びかかってきた狼を顔から真っ二つに切り裂いた。左右で真っ二つになった狼は即死。一瞬で動かなくなった。
「予想通り、簡単に真っ二つに出来るよな」
「ナニ!?」
ボスが驚いている間に次々と狼を切り裂き、気がつけば後10匹ぐらいになっていた。
地面には狼の死骸がうじゃうじゃと19匹分転がっていた。 ボスの合図で一旦攻撃を止めた。
「えっ……」
すると、狼たちは絶命した他の狼たちの肉を食べ始めたのだ。
「俺達の食料が……」
10匹全部が1匹ずつ食べたせいで転がっていた死骸は骨と皮だけになってしまった。残ったのは9匹分の死骸だけ。
「ハハハ、オドロイタカオレタチノノウリョクニ!」
能力だと……?
「オレタチハタベレバタベルホドチカラヲタクワエルコトガデキルオークトコンケツヲシテイル。ダカラ、イマノコイツラハサッキにクラベテ2バイハツヨクナッテイルハズダ」
片言過ぎて途中から何を言っているか分からなかったが、どうやら、さっきよりも強くなってるって言ったらしい。
「なんでも良いからさっさと片付けさせて貰うぜ。よくも俺達の食料を食いやがったな!」
これで1ヶ月の食料が3週間分になっちまったじゃねーか。
食べ物の恨みは怖いことをこいつらに教えてやろう。
腰に挿していた短剣を1本抜いた。これで双剣。俺はこっちの方が戦いやすい。少しばかり本気を出させて貰うぜ。
短剣を逆手で持ち、奴らが仕掛けてくる前に飛び出した。
今まで受け身に徹していた俺が動いたことに少し動揺したのか相手の動き出しが少し遅かった。
その隙を突いて俺は2匹の首をほぼ同時に切り落とした。続いて、2匹、また2匹と片付けて行く。
「オマエラ、ナニヲシテイル!?」
ボスに言われ、ようやく反撃をして来た。ボスを合わせて後7匹。強化された狼たちは確かに力が強くなっていた。特に顎の力。俺の短剣にかぶりついてきた狼を振りほどこうにも力が強すぎて剥がれない。なら、
かぶりつくのに夢中になっている所をスパンと切り落とすまでだ。
首だけが剣にかぶりついていた。それを払い、再度双剣に戻る。
「痛っ……」
トドメをさした時に手をかじられていたのか。手にはくっきりと穴が空いていた。
手の甲側から穴を通して地面が見える。
「イマダ!キシュウヲシロ!!」
ボスの指示で一気に残りの3匹が飛びかかってきた。
こいつら、戦っている間に学習したな。さっきまでは同じ所を攻撃しに来ていたが今は頭、足、腹とそれぞれが俺の体をバラバラに攻めてきている。しかも3方向別々からだ。これも、オークの能力なのだろうか。
「くっ……」
何とか腹、頭を狙ってきた狼を倒す事は出来た。しかし、足を狙ってきたやつには対処が遅れ、ガッツリと足をかまれてしまった。
力が強い……このままでは足が食いちぎられてしまう。
ボスはこれをチャンスとみたのだろう。彼、自ら反対側の足へとかぶりついてきた。
足に気を取られていた俺は反応が遅れボスの足を切り落としたものの肝心の首を切り落とすことが出来なかった。
両足にかぶりつかれ、身動きが取れない……手も負傷をしているため使えるのは無傷な左手だけだった。
「ふん!」
力を振り絞り、まずは家来の狼から首を切り落とした。力が抜けたことを確認し、思いっきり上顎、下顎に手を添えて引き剥がした。顎の骨が粉砕した顔は見るも無惨な状態に……
って、それに触れてる場合では無かった。
もう片方の足にかぶりつくボス。こいつの力は他の狼の何倍も強かった。さすがボスをやっていただけある。
首に刃を入れるが骨が硬い。体も頑丈なようだ。しょうが無い、また返り血が付いてしまうが心臓を突こう。
一旦首元から刃を離し、心臓があるお腹へとナイフを突き立てた。
すると、狼はうめき声のような雄叫びを上げ、地面を這いつくばった。
そして、数秒後。動きを止めた。
「ふう……」
力が抜けた。
足の支えが無くなった体はなんの抵抗もせずに地面に倒れた。
「痛……」
背中がジンジンする……てか、手と足いった……
これは応急処置をしなければ死ぬ。
俺は動かすことが出来る左手を腰に伸ばし、ポーチから回復薬の入った試験管を取り出した。それを口に入れ、負傷箇所に垂らしてしばらく放置した。
すると、手、足の穴は塞がり、体力も少しだけ回復した。
「回復薬やっぱ重要だな……」
無駄に100瓶作った甲斐があった。
「よし、帰るか」
しばらく休んで起き上がり、そこら中に転がっている死骸を1つ残らず回収した。その数19匹。それにしても倒したなー
狼の死骸を重力魔法を付与した魔石で浮かせ、休憩所まで運ぶ。
「遅かったね」
「ああ、ちょっとやんちゃしすぎた」
荷台の扉の鍵は開いていた。
「うわぁ、凄い数……」
19匹の死骸をみてちょっと引いてる。
「もしかして怪我した?」
「いいや、この通り無傷だよ」
2階へと向かうため、はしごに手を掛けるとミホノに服を引っ張られた。俺は無傷の証明をするためキレイな足を見せた。
「そう、なら良いんだけど」
ミホノが離れたのを確認し、冷凍庫の中に次々と死骸を詰め込んでいく。
「ふう、危なかった……」
回復薬の効力は2時間。2時間後には再び負傷箇所は元に戻ってしまう。そうなる前に隠れて治療をしなければ。ミホノは俺に過保護だから怪我なんてしたと言ったら1日付きっきりで看病をしてしまうだろう。普段俺のために荷台を運んで貰っているのにそれは申し訳無いからな。
1階に戻るとミホノはベッドで寝ていた。相当疲れたんだろうな。
彼女が起きないように食器入れの隣にある棚から救急箱を取り出した。
それを持って荷台の外へと移動する。外にはちょうど良い東屋があったのでそこに腰を下ろした。
「痛っ……」
回復薬の効果が切れ、手、足の穴が開いた。
「アキレス腱もいかれたか……」
あの時よく立っていられたな……
救急箱の中から「完全治療薬」と書かれた瓶を取り出す。
それを切れたアキレス腱にかける。
「うっ……」
すると焼けるような熱さと共にアキレス腱が再生していく。
「やっぱ、よく効くなこれ……」
感覚的には長時間180度の液体油の中に足を突っ込んでいる感じに似ている。よく、声を出さずに悶絶出来ているな。もし、ミホノが近くで寝ていなかったら絶対に叫んでいただろう。
でも、これをする事で細胞の再生を活性化させる事が出来すぐに怪我を完治する事が出来る。強烈な痛みと共に体力も奪われるがな……
この後も悶絶に耐え、重症を負った箇所を全部治療した。
悶絶している間に体力が底をつき次に目を覚ました時には次の日の太陽が昇っていた。
「おはよ~」
朝日のまぶしさで起きたのかミホノが目をこすりながら扉から現れた。
「おはよう」
「そんなところで何してるの?」
ベンチの上で体を起こし、救急箱を体で隠した。
「今、朝の散歩から帰ってきてな。ちょうど休憩してたんだよ」
「へ~」
ミホノは首を何度か縦に振ると「んじゃ、今日も頑張ってね〜」といって扉を閉めた。
彼女はこの後もベッドで寝るのだろう。それだけここまでに体力を使ったのだ。であれば俺は今体力を使わないとな。
椅子から立ち上がり、救急箱を手に持った俺はそれを荷台の床下にしまって森へと向かった。
「今日こそはイノシシを捕まえる」
俺の頭の中はあの丸っこい図体しか入っていない。
「うぉ~~~!!!」
思いっきり走り出した。
「しばらくは狼と出会いたくなーい!!」
あれ?イノシシどこ行った?
数時間後。
「うん、これだけあれば大丈夫そうね。それじゃ貴方への罰はこれにて終了にします」
「ハア……ハア……ありがとうございます」
あの後、イノシシがわんさか出現した。俺は彼らを1匹たりとも逃がすこと無く狩ってきた。イノシシよ許せ。
昨日のアレがフラッシュバックしたせいでいつもよりイノシシごときに本気を出してしまった……めっちゃ疲れた。
「お疲れ様。今日は私が料理をするから貴方は椅子で休んでて」
「ん?良いのか?」
「良いのよ。この2日間私はグッスリ寝たからね」
キッチンに立ち、空っぽのはずの冷蔵庫からキレイに処理された肉を作業台の上に取り出した。
「もしかして、下処理したの?」
「うん、2日も寝ると暇なのよ。だから、狼の死骸を1つ持ってきて処理しといた」
ミホノはけして料理が出来ないわけでは無い。むしろ、そこら辺の主婦よりも上手いと思う。けど、料理をしないのは彼女よりも料理が上手いやつがキッチンを占領しているからだ。俺ですけど何か?
下処理をした肉を包丁で切り、フライパンに載せた。
「今日はぱあっとステーキでいきましょ」
「お、いいね」
フライパンから肉が焼けるいい音が聞こえた。この音を聞くと今日まで負った傷も癒える気がするぜ。
「なあ、俺にもフライパン握らせてよ」
「だめよ。今日は私が料理をしたい気分なの。貴方はいつもやってるから良いでしょ?」
ちっ、完全に首を横に振られてしまった。ミホノが動かすフライパン、次第に香ってくる香ばしい匂い、それら全てが俺の細胞をくすぶらせていた。
よし、明日の朝は5時間かけて作ろう。俺の変態スイッチを押したのはミホノ君だ。いつまでも料理が出来ないからって嘆くんじゃねーぞ?
んなことを考えていたらステーキが完成した。
「さすがに持って行くのは手伝うぞ」
「ん、お願い」
2人分のステーキを受け取り、落とさないようにそっとテーブルの上に置いた。鉄板の上でジュウジュウ音を上げるお肉。こんなの見せられたらよだれが止まらなくなるだろ……
「そう言えば、この2日間何も食べてなかったな」
「えっ、そうなの?」
冷蔵庫、食器入れからコップとミルクを持ってきたミホノが俺の正面に座る。
「ああ、獲物を獲るのに夢中になってたからな」
「昨日の夜はここにいたじゃん」
「昨日はお前が寝た後にまた外に行ったんだよ」
「食材を採りに?」
「まあ、そうだな」
本当は自分の怪我を治すためなんだがな。
「結局昨夜は何も取れなかったけどな」
「何よそれ」
フッと微笑むミホノ。早速ナイフを狼の肉に入れた。
「凄い柔らかい」
ほんと、柔らかすぎて切った感触が無い。
「頂きまーす」
食べやすいサイズに切った肉を大きな口で迎えに行った。
「ん~うまっ。この狼かなり美味しいね」
「だろ?この種類は美味しいって本屋の本に書いてあったんだよ」
ゴリラクマに比べたら劣ってしまうがそれでも豚よりも数倍の値が付くらしい。
「ちょっと黙って食べるね」
どんだけ気に入ったんだよ。それ以降、ステーキが無くなるまでホントに黙っていた。
もっと感想を言いたかったのに……
「あ~美味しかった。この肉が後1ヶ月近く食べられるって考えたら凄い最高」
「それはよかった」
そこまで喜んでくれたら命がけで獲ってきた甲斐があるよ。ほんと、俺の足も報われるぜ。
久しぶりのお肉に満足したミホノはあれだけ眠く無いと言っていたのにベッドに倒れると一瞬で眠ってしまった。
使った食器を片付けながら明日から再開される旅のことを考えていた。
俺達の食料も、店で提供する用の食材もほとんど確保出来た。後必要な獲物はゴリラクマだけだな。ならば、少しスピードをあげて一気に町に向かうか……でもな、折角山を旅してるし、のんびり行くのも悪くない……
やっぱり気持ち早めにしようか、食材の鮮度の事も考えたら早く提供したいしな。
いやいや……
俺の脳内は毎晩こんな感じ。急ぐかのんびりするかで葛藤する毎日。
だが、これこそが俺のやりたかった「自由な旅」だ。明日の自分がどう決断しようが楽しい事には違いないのだ。