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旅立ち~町との別れ~

 翌日。

 俺達は数日間お世話になった町を旅立つ事にした。

 その報告と御礼を言いに町役場へとやって来た。

「短い間でしたがお世話になりました」

「こちらこそ、美味しい料理をありがとうございました。今後もお二方のご活躍をお祈り申し上げております」

「ありがとうございます。またお邪魔するときは宜しくお願いします」

「はい、お願いします」

 最後に対応してくれたのはこの町の町長だった。それがなんとあの本屋の店主さんだったのだ。意外すぎてカウンターの向こう側にいたときは驚いた。

「お礼の品として焼きたてのパンを持ってきました。コムギも昨日採れたてなので新鮮ですよ」

「ほお、それはありがたい。昨日の約束も果たしてくれたってことですね」

「まあ、そうなりますかね」

 この後、本屋さんに行く予定だったのでね。

「この後職員全員で頂きますね」

 扉を開けるとき、職員全員がお辞儀をしてくれた。こういうのを見るとホント人の温もりの大切さを感じる。

「言い人達だったね」

「そうだな」

 閑静な大通りを2人並んで歩く。アスファルトの敷かれていない田舎の町ともお別れだ。

 そう思うと今更だが名残惜しくなってきた。

「マジで寂しくならないうちに出発しよう」

「そうね」

 俺達は気持ち早足でミートソース号に戻った。

「ホントに最後だから忘れ物が無いかだけ確認して」

「分かってる。今やってるから」

 2階からミホノの迷惑そうな声が聞こえてきた。

 なら良いよ。俺は荷台の周りに積み残しが無いか確認しよう。

 後方の扉を開けて階段を降りる。

 荷台の下、異常なし。床下収納積み忘れ無し。その他外壁に問題なし。

 外は大丈夫そうだ。

 後は中だけ。今まで散らかしていた荷物を所定の位置にしまう。特に食器は割れないように食器入れの中に柔らかい布で間を埋め、割れないように固定した。

 キッチンも移動中は使わないので火の魔法を吸っている魔石を取り除いて火事にならないようにした。

 後は、テーブルを壁に折りたたみ、丸椅子を分解して壁にしまう。

「2階はオッケーよ」

 ちょうどはしごを降りてきた。

「オッケー、こっちも大体終わった」

「そしたら、外で準備してくるから待ってて」

「了解」

 言うとミホノは少し大きめのバックを持って外に出て行った。

 彼女が準備をしている間俺は暇なので荷台前方の扉から外に出た。

 今まで触れてこなかったこちら側だが、ここには荷台を引っ張るための長い木の棒がコの字で組まれている。

「ここに来るのも久しぶりだな」

 この前来たのはこの町に来た時だ。てことは1週間ぶりとかか?

「お、お待たせ……」

 そこへ森の影から白い毛並みの動物が姿を現した。

「おう、お疲れさん」

 俺はその動物が加えているバックを受け取った。

「な、中身は見ないでよね!」

「分かってるよ」

 女の子が脱いだ服を見るような変態じゃねーよ。

 そう、この動物こそミホノ本来の姿なのだ。

 白い毛並みで馬のように4足歩行をする。背中には水鳥のような翼が映えており、この世界を作った人の世界では空想上に『ペガサス』という動物がいるらしいが彼女はまさにペガサスのような姿をしていた。

 動物が話している理由は彼女が持っている魔法『擬人化』が影響しているのだ。

 魔法は人類だけで無く稀にだが動物にも発現すると言われている。

 その稀な動物が彼女って訳だ。

「しまってくるからその間に輪っかの中に入っておいてくれ」

「はーい」

 少し小走りでベッドまで行き、中の衣類入れにバックごとしまった。

 外に戻ってくると彼女のお尻と目があった。

「……あまりお尻を見ないでよね」

「それは無理だって。待ってろ今服を着せるから」

「ありがたいです……」

 擬人化の弱点は人間時の衣類を馬の時に着ることが出来ない事だ。

 そのため、彼女は外に出て物陰で裸になり、馬になってから帰ってきた。

 帰ってきたときは当然裸だ。だから少し恥ずかしそうにしていたのだ。

 まあ、この状態なら大事な所は下を覗かないと見えないので問題ないが、彼女はそれでも嫌だというので、要望通りこの姿専用の洋服を俺が着くってあげたのだ。

 全長3メートルぐらいの大きさのため布も大分大きくて長い。だから、着せるのもちょっと一苦労だな。

「よし、オッケー」

「ありがと~」

 今日はミホノらしい白い生地の洋服だ。

 服を着せたらミホノの体と木の枠を固定し、上手く引っ張れるようにする。

「よし、大丈夫そうだ」

 それが終わったら俺は彼女の後ろで腰を下ろし、あらかじめ持ってきておいた魔石に重力魔法を吸わせた。

 これをする事で荷台にかかる重力を軽減し、ミホノが引っ張りやすく出来るのだ。

「オッケー、いつでも出発出来るぞ」

「了解。じゃあ、動くよ」

 ミホノが足を動かした。すると、俺が座る荷台も動き出した。

 荷台の下に付いている4つのタイヤも正常に動いているようだ。取りあえずは問題なさそう。

「取りあえず進行方向はこのまま真っ直ぐで良いぞ」

「了解」

 ナビゲーターは俺。地図とコンパスを手に持ち、常にミホノとコミュニケーションを取っていく。

 俺の腰にはいつ、凶暴な動物が襲ってきても対処出来るように短剣を忍ばせている。

 森ではよく切り傷が出来るため格好は長袖長ズボンだ。

「ミホノ。もうすぐ町の出口だ」

「はーい」

 ルート的に町の入り口である林道から森へ入るのが正規らしい。

「ん?」

「どうかした?」

「町から何か走ってくるなって思って」

 それも結構な数。よーく見てみると複数の人だと言うことが分かった。

「ミホノ止まってくれ」

「了解」

 ミホノが足を止めると、荷台も動きを止めた。

 動くのを止めれば向かってくる人達が徐々に大きく、近づいてくる。

 そして、追いついた。息を切らした彼らは少し動悸が整うのを待ってから喋り始めた。

「もう行くのか?」

「はい、1週間お世話になりました」

 荷台から降りて皆に目線を合わせる。

「あれ?可愛いお嬢さんは?」

 見るからに鉱石とかを売ってそうなおじさんがキョロキョロとミホノを探した。

「すいません。彼女は今体調を崩してまして荷台で寝てるんですよ」

「そうなのか……」

 すいませんね、ミホノの正体あまり人に知られたくないので。

「良かったら伝言聞きますよ」

「おお、それは助かる。まあ、伝言というか贈り物なんだがね」

 おじさんが風呂敷から取り出したのはとても大きな魔石だった。

「これなんだが、結局昨日は売れなくてね。どうせ売れないなら1番興味を持ってくれたあの子にあげたかったんだけど良かったら渡しておいてくれないか?」

「もちろんです。だけど良いんですか?こんなに高級そうなもの」

「ああ、ここだけの話だがあの子には少しホラを吹いたんだ。有名冒険者の魔法を取り込んだとね。けどホントは私の魔力を注いだものだったんだよ。能力は嘘を吐いてないから正真正銘雷の魔石だよ」

 そのホラはこんな大勢の前で言いふらしちゃダメだと思うんだけど……特に皆に背を向けて待ってる白馬がプルプル震えてるからさ。

「で、ではおことばに甘えて受け取りますね」

「あの子に宜しくね~」

 言うとおじさんは帰って行ってしまった。

 次は20代ぐらいの若いお姉さんが俺に話しかけてきた。

「この前はお料理ご馳走様でした。とても美味しくてまた食べたいって思ってたのに行っちゃうなんて残念……」

「すいません。でも、次はンタンバラに行く予定なのでもしかしたらそこで会えるかも知れませんね」

「そうなのね、もしかしたら本当に会えるかもね」

「その時はまたお願いしますね」

 これで帰るかなと思ったが、なぜか手招きをして来た。

 仕方なく彼女の側に寄ると俺の耳にすっごく小さな声を発してきた。

「あのワンピース私が選んだんですよ?どうです?気に入りましたか?」

 声がくすぐったくて鳥肌が立ってしまったが内容は聞き取ることが出来た。

「はい、とてもキレイでしたよ。見惚れてしまうくらいには。あいつに良いものを選んでくれてありがとうございます」

「ふふ、いい彼で良かったですねとお伝えください」

「分かりました」

 って、もう聞いてますけどね。

 お姉さんは不適な笑みを浮かべて帰っていった。

 その後も、店に来てくれた人達とお話しをしてようやく荷台に戻ってくることが出来た。

「ふう、少し疲れた」

「お疲れ様。何か飲んだら?」

「いや、良いよ。それより先に進もう」

「了解」

 ミホノは再び足を動かし、荷台も動いた。

「てか、あのおじさん。次会ったらぶん殴ってやろうかしら」

「あー、雷の魔石のおっさんか」

 確かに、ホラを吹かれたら殴りたくなるよな。

「それ以外はとっても良い町だったよね」

「そうだな。住民も暖かかったし気候も最高だった」

 滞在した期間はずっと晴れで不自由無く過ごす事が出来た事を嬉しく思う。

「また来よう」

「うん、また」

 ようやく林道に差し掛かり、町の建物は次第に小さく消えていった。

 ンタンバラまで後4000キロ。俺達の長い旅がようやく始まったのだ。


ここまでごらん頂きありがとうございます。親知らずの虫歯でございます。

移動食堂ミートソース。ここまでで丁度半分でございます。

この後も続きますがどうぞ宜しくお願いします。また、ここまでで誤字、脱字等ございましたらコメントお願いします。

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