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1日の終わり

「遅い……」

「ご、ごめん……」

 ミートソース号に帰ってくるとどこかのお嬢様が丸椅子の上で俺の事を睨んでいた。

 真っ白なワンピースを身に纏った彼女は部屋の中なのにブリムの広い帽子を被っている。

 帽子も真っ白、髪の毛も銀髪でがちの全身真っ白な彼女を見た俺はただ見惚れることしか出来なかった。

「……何か?」

 分かりやすくふてくされるミホノ。テーブルに頬杖を突いて口をアヒルのように尖らせていた。

「その、凄くキレイだなって思って。つい見惚れちまった」

「そ、そんなハッキリと言うな!」

「折角買った帽子を投げるなよ」

 ヒラヒラしすぎて俺のとこまで飛んでこなかったぞ。

 慌てて帽子をキャッチしたせいで、保ちたかった距離を縮めざるを得なかった。

 帽子を返すため、顔を上げるとちょうど俺を見ていたミホノと目が合った。

 真っ白な彼女は顔が赤くなるとすぐに分かる。

「うがっ」

「そんなジロジロ見るな」

 腕を伸ばし、俺のほっぺたを潰しに掛かるミホノ。

「今のは不可抗力だろ?」

 ミホノにあらがいながら無理矢理顔を合わせようとする。

「だって……そんな直接惚れたとか言われたらはずいじゃん……」

 顔を覆うものが無くなり、分かりやすく顔を逸らした。

 その顔はどこか嬉しそうなようにも見えた。よかった、取り合えず怒っているわけではなさそうだ。

「てか、遅すぎ。ホントは日が昇っているうちに見せたかったのに……」

 いや、普通に怒っていました。

 外は既に太陽が沈み真っ暗だ。

 町の郊外であるこの場所もこの荷台が無ければ視界を奪われるほどの真っ暗だろう。

 ミホノの姿は間違いなく日中に最も輝く姿だ。夜でも普通に可愛いと思うが昼間、特にお昼頃に見たら発狂してしまうかもしれない。

「ごめん。今日はマジで反省してる」

 それなのに俺は自分のやる事に集中しすぎて夕方まで本を見ていた。

 朝、あまった金は好きに使って良いと言ったのは俺なのに……余ったら服を買うことだって予想できたはずなのにだ。

 気づけば俺は床に正座をして彼女を見上げていた。

「俺のワガママでこの旅に付き合って貰っているのに俺は自分の事ばかりでミホノの事をないがしろにしてしまった。ホントにごめん」

 土下座。この世界を作った人の国では最上級の謝罪らしい。当然この大陸でもこの謝り方は浸透しているのでミホノも知っている。

「今度からもっとミホノの事を気にかけて行動するから今回は許して欲しい」

 すると、俺のほっぺたが暖かい感触を感じた。

「うごっ」

 ほっぺたを掴まれ反重力的に顔を動かされる。

 顔の目の前にはミホノの顔があった。凄い悔しそうな表情。きっと俺に「ずるい」と言いたいのだろう。

「そんなに謝られたら怒ってる振りをしてるこっちが馬鹿みたいじゃん」

「え?」

「気づかないなんてオウカらしくない。そんなに私に見惚れたの?」

 ニコッと微笑みながらさらに顔を近づけて来た。顔を逸らそうにも彼女の手がそれを阻止するため上手くいかない。

「うん……」

「ふふっ可愛い。今ならキス出来そう」

 ちょ!?キスって言ったか?

「何言ってんだ!キスなんて恋人みたいな事しちゃダメだろ!!」

 俺達はあくまで旅仲間。ミホノには旅の手伝いをしてもらっている仲なんだからな。

 って、顔近づけるな!!

「むっ……」

 ミホノを押さえつけるのに必死で思いっきり彼女の両頬を掴んでしまった。

 柔らかい肌の暖かい感触が手に伝わる。

 そのまま一気に手を伸ばすと俺より腕の短いミホノの手が俺の頬から離れた。

「お返しだ」

 今度は俺が攻める番。彼女に顔を近づけ、至近距離で言葉を投げた。

「良くも俺をだましてくれたな。これはお仕置きが必要だよな」

「じゅ、十分にお仕置きされてるんだけど……」

 耳元で囁いたせいか、体をビクッとさせて目を瞑っていた。口が波打つように震えており、頬はさっきよりも赤く染まった。

「……ちょ!?今キスした!?」

「ああ」

 おでこだけどな。

「自分ではやるなって言ったのに……」

 上目遣いで口を尖らせる。

「言っただろ、お返しだって」

 この顔が見られただけでも十分だな。

 俺はミホノの顔から手を離し、彼女から距離を取った。

「さっ、晩ご飯にしようぜ。俺、もう腹減ってしょうが無いんだよ」

 力が抜けて丸椅子に座った彼女の側を通ってキッチンに向かう。

「今日は色々と情報を得ることが出来たから色々とアイディアが生まれて来たんだよね」

 冷蔵庫を見て何を作ろうか考える。おっ、さすがはミホノ俺達用の食材を商店街で調達してくれた。冷蔵庫の魔石も取り替えてあるし、キッチン側のライトもしっかり明かりが点いている。

「買い出しありがとな。色々助かったわ」

 話しかけるもミホノからの返事は無い。

 チラッと後方に目をやると椅子の上で固まっている姿が見えた。

 これはしばらくそっとして置いたほうが良さそうだ。

 一旦ミホノを放置して晩ご飯を作ることに専念した。


「お仕置きだからって女の子にキスをするなんてハレンチじゃないかな?」

「ごめんて」

 数時間後。いつも通り手を掛けた晩ご飯がテーブルの上にずらっと並んでいた。

 晩ご飯のメニューは夏野菜のサラダ、豚肉と野菜の炒め物、野菜・チーズ・ベーコンのピザだ。デザートには役場のおじさんの助言を参考にアイスと言うものを初めて作ってみた。

 ミホノは料理に感動をしていたものの、料理を食べ始めたらさっきの出来事にずっと愚痴をこぼしていた。

「だいたい、私のほうが荷物とかを運んでいた分合流に遅れても良いはずなのに何で私よりも数時間後に帰ってくるのかな?毎回思うけどおかしいよね?」

「はい、その通りです」

 ミホノは現在あのワンピースからいつも通りの部屋着に変身していた。髪を頭の後ろで1つに縛り、ノースリーブの白のシャツはいつも通りゆるゆるで前屈みになったらすぐに谷間が見えるだろう。下半身の灰色の短パンは太ももがガッツリ露出しており、水着なんかよりもよっぽどエッチに見える。

「ジロジロ見るなって言ってるでしょ?そういう所がダメなのよ」

 ピザを食べながら俺が隠しておいたお酒をグビッと口に流し込む。

「今度絶対に仕返ししてやるから覚悟しておきなさいよね」

 さっきとは別の意味で顔が赤くなっているミホノ。完全に酔っていますねこりゃ。

「うん、このピザ美味しい。特にチーズの溶け具合が最高なんだけど」

 かじりついた所から溶けたチーズが伸びている。いいよね、それがチーズの醍醐味だ。

「どうやら次の町では皆好きな料理がメインで提供されているらしくてな。しばらく作ってなかったピザを試作してみたがどうだ?」

 まあ、酔っ払いに聞いてもたいした意見は出てこないだろうけどな。

「そうね、上に載った具材がオーソドックスで新鮮味は無いけど味付けはオウカらしい良い塩加減だからうちの料理ぽいなって感じるよ」

 ほお、意外とまともな意見をくれるじゃないか。今のは普通にメモ案件だ。

「てことは、具材にもっと新鮮味を感じられればもっとうちらしさが出るって事だな?」

「そうだって、言ってるでしょ?たく~ちゃんと1回で聞いてよね~」

 酔っ払いのミホノはいつもより言葉がキツく中身も辛辣になる。ドMの人には好評だろうが、俺はノーマルな性癖なので普通に傷つく。

「ちょっと~?聞いてるの?」

 台パンしないで~品が悪いと思われちゃうぞ?さっきのお嬢様な雰囲気が台無しになっちゃうよ?

「ミホノ。今日は少し飲み過ぎだ」

「飲んでないよ。何言ってんの?」

 完全に目がとろんとしてるじゃないっすか。上半身もふらふらだし。

「あっ」

「あぶなっ」

 こいつ、背もたれがあると思って後ろに体重を掛けやがった。いつか倒れるなって思っていて正解だった。

 じゃなければ今頃頭が床にぶつかっていただろう。

「えへへ……オウカありがと」

「今日はもう寝ろ。俺がベッドに連れて行くから」

「はーい……」

 ミホノをお姫様抱っこしてベッドへ連れて行く。

 久しぶりに抱っこしたがちゃんと女の子の体してるんだな。

 全体的に柔らかいし、ほどよい温もりを感じる。

 この感じだと、視線を下ろしたら胸元が見えるな……こいつ部屋着だとブラ付けないからな。

 ベッドに下ろし、掛け布団を掛けてやる。今日も熱帯夜らしいからお腹を壊さない薄いやつで良いだろう。

「おやすみ」

 最後に一言掛けて俺は再び椅子に座った。そう言えば晩ご飯の途中だった。

 明日は1日掛けて旅の準備をする予定だし、明日の朝は今日の残りでいいか。

 ピザ、サラダを半分残し冷蔵庫にぶち込む。肉野菜炒めは今日1の出来栄えだったのでしっかりと味付けのメモをしながら完食した。

 食器を片付けたら2階でコムギの様子を見てから俺もミホノの隣で寝た。

 今日も全体的にのんびりとした1日だった。俺がしたかった生活が出来て、今日も幸せだ。


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