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商店街~あっ私が主役です……~

 オウカと別れて商店街の方にやって来た。

 時間的にお店が営業を開始したようで、まだ道ばたには人があまりいなかった。

「おはようございます。もう見て良いですか?」

「ああ、良いよ」

「ありがとうございます」

 早速1番近くの店から見ることにした。この店は魔石を専門に売っている店らしい。

「お客さん良い時間に来たね」

「はい、良いものを買いたいので」

 これは旅を重ねた事で学んだ知識だ。旅を始めた頃は昼過ぎに買い物に来てろくなものを買えなかった。わざわざ時間を作って向かったのに凄い勿体ない気持ちになったからなー

「なら、特別にとびきり良いものを紹介しよう」

「え、良いんですか~」

 おじさん良い人~お言葉に甘えよっと。

 おじさんが手に取ったのは他の魔石よりも大きいものだった。

「この魔石は有名冒険者が魔力を注ぎ込んだものらしくてこれを使った魔剣や魔具は長く能力を保ちながら威力も高いって噂だ」

 へー、有名冒険者がどんな人か分からないのでなんとも反応しにくいが取りあえず他の魔石より性能が良いってことは分かった。

「ちなみに、どんな能力なんですか?」

「雷魔法だよ」

 おっ、中々良い能力。確かに、これを魔具に加工すれば間違い無く役立つな。

 これならオウカも喜んでくれそう。

「おいくらですか?」

「5万円だよ」

 おっと……さすが有名冒険者……5万は高いな。

 昨日の売り上げはざっとだが20万円程度。オウカの馬鹿が価格をかなり低くしたせいで普通の社会人ぐらいしか稼ぐことが出来なかった。

 もし、普通の価格で売っていたらって考えるとマジで損でしか無い。今度から私が値付けしようかしら。

「もう少し、安くならないんですか?」

「ごめんね、この石はおじさんも結構頑張って仕入れたんだよ」

「そうなんですね。すいません、失礼な事を聞いてしまって」

「良いんだよ。皆に言われるんだから。それよりも、他のものを紹介するよ」

「すいません。お手数をおかけします」

 その後も心優しいおじさんの接客を受け、買う予定だった分の魔石を買った。

「はい、少しおまけしてしといたからね」

「ホントにありがとうございます」

 しかも、提示されている価格から大分安いお値段で譲ってくれたのだ。ホントに感謝しか出てこない。

 おじさんに手を振りながら次の店に向かった。

「次は……ここね」

 やって来たのは鉄鉱石などを売っている石屋さんだ。また石かよと思われるかも知れないけど私たちにとっては魔石と同じぐらい大切なお店なので買い物の時は毎回覗くの。

「いらっしゃい。珍しいねお嬢さん見たいな若い女の子が来るなんて」

「そうですよね」

 私も毎回思ってます。これも価格を上げないどっかのアホのせいですよ。

 石屋のおじさんが興味津々な眼差しを向けてくる中、私は鉄、銅その他鉱石を物色した。

 うん、やっぱり山岳地帯なだけあって鉄の質はかなり良いわね。これなんか上手く加工できたら大きな動物も真っ二つに切れそう。

 早速手に取った。鉄は魔石と比べて重い。石を持ってるなって重量感を感じる。

「良かったら、使ってね。石重いでしょ?」

「ありがとうございます」

 気を遣ってくれたおじさんがカゴが乗ったカートを持ってきてくれた。ホント、こういうところが個人経営の良い所よね。

 おじいさんのお陰で次々に石をカゴに入れることが出来た。

「……合計2万と5000円ね」

 まあ、こんなもんよね。おじさんにぴったりお金を渡すとニコッと微笑みながら商品を渡してくれた

「重いから気を付けてね」

「はい、ありがとうございます」

 おじさんに微笑み返して店の外に出た。

 この調子でどんどん買い物をしていこう。

 私は少し気合いを入れて次の店へと向かった。


 買い物を初めて数時間。気がついたらお昼はとっくに過ぎ時間的にはおやつの時間だった。

 あの後も買い物を続け、旅に必要な道具をとことん買った。20万円を握りしめて始まったこの買い物も残り5万円になっていた。

「うん、あらかた欲しいものは買い終わったかな?」

 昨日のうちにメモをしておいた欲しいものリストには全てチェックがしてある。昨日の時点で漏れが無ければもう買うものは残っていないはずだ。

 さて、5万円を何に使おうかしら?オウカには全部使ってこいって言われてるしこんなに残したらちまちま言われそうだからな~

 片手に巨大なバックを3つ持ちながら商店街をキョロキョロする。

 おやつの時間だし甘いものが良いかな?でも、今日はフレンチトースト食べちゃったし正直アレには勝てないだろうな……

 家具?いや、邪魔になるよな~ただでさえ狭い部屋なのに……

 ってなってくるとここしか無いよね。

 目の前には女性専用の洋服屋さんがあった。ちょうど隣の通りへと続く横道がある場所で立地的にも良い場所に存在している。

 最近お洋服を買えてなかったからな〜でも、5万も洋服に使うなら魔石のおじさんのとこに行ってお高い魔石を買った方が良いしな……

 腕を組み、1人悩む。

 うん、洋服にしよう。折角だからぱあっと良い買い物しよ!オウカも残ったお金は自由に使って良いって言ったしね。

 私は思い切って洋服屋さんの扉を開けた。

 店内は夏の町らしい風通しの良さそうなお洋服がたくさん置いてあった。

「どれにしようかしら……」

 水色に、薄いピンクに黄色……

 ノースリーブのワンピースにシンプルな半袖Tシャツ、可愛らしいミニスカート

 などなど、次々に目移りしてしまう。

 ハンガーに引っかかった洋服を持って姿見の前で合わせる作業が続く。

「ん~」

 1人だと選ぶの難しいな……いつもはオウカがいてくれるから意見を聞けるんだけど……

 店員さんに聞こうかなって思ってもあの人達は商売柄絶対に「似合わない」とは言ってくれないし……

「ん~」

「あの~良かったらご相談に乗りましょうか?」

 私の悶絶具合を見ていたのだろう。凄い愛想笑いを浮かべた女性店員が話しかけてきた。

「あー……すいません。お願いします……」

 相談ぐらいはね?いいよね。

「承知致しました。では、まずお客様はどういった条件のお洋服をお選びになりますか?」

「あー」

 そう言えば用途を決めてなかったな。そもそも、この店に入った理由はお金を溶かすために久しぶりに服を買おうって思ったんだよな。てことは用途はどうでもいいって事になる。

 でも、折角たくさんお金があるからなるべくお洒落をしたいわよね……そう、あの馬鹿と一緒にデートをする時とかに着る用とか……

「親しい男の人とお出かけする時とかですかね?」

 ……デートですよ。お姉さん。私が言葉を選んだのを見てニヤニヤしないでください。

「そうですか……」

 言いながら、キョロキョロ店内を見渡し、私に合いそうなお洋服を選んでくれているようだ。

 ここはお姉さんのお手並みを拝見しましょうか?場合によってはニヤニヤした事を許してあげましょう。

「……すっごく良いです」

「ですよね!?お客様ならこういった大人っぽいお洋服がお似合いだと思ったんですよ」

 お姉さんが選んだ服は真っ白なワンピースにお洒落な柄が入ったサンダルだった。

「これにブリムの広い帽子をつければ……っと」

 姿見の前に写るのはどこのお嬢様ですかと言いたくなるほど清楚な女性だった。

 まあ、私なんですけど……お姉さんやばすぎです。自分が自分じゃ無いって錯覚しちゃいましたよ!絶対似合わないって言うと思ってすいませんでした。むしろ、絶対に似合う格好しか進めてこないでしょって今は思ってます。オウカと来た時なんかよりも数倍良い買い物が出来てます。

「あの……これ全部買います……」

「ありがとうございます!!」

 ついでに、折角着たからと言ってこの後もこの格好でいさせて頂く事になりました。

「合計4万円ですね」

 まあ、妥当ですよね。

 私は財布から4万円を取り出し、カウンター上のカルトンに置いた。いつも思うんだけどお札に写ってるおじさんってなんて人なんだろう。

「ちょうどお預かりします」

 お姉さんはお金を手に取りカウンターの中にしまった。

「あの……1つお聞きしたいんですけど……」

「はい?」

 顔を上げたお姉さんが急に小声になった。

「もしかして昨日、町外れで料理屋さんをやっていた方ですか?」

「はいそうですが……」

「やっぱり~!!昨日は美味しいご飯を食べさせて頂きました!!!」

「そうでしたか。ありがとうございます」

 まさかのお客様でしたか……ごめんなさい。昨日は忙しすぎてお姉さんが来た事に気づかなかったです。

「てことはデートのお相手は料理を作っていた人が彼ですか?」

「ちょいちょい!!」

 慌ててお姉さんの口を塞いだ。

「デートって一言も言ってないですよね?」

 ほぼ耳打ちのような声で問いただす。

「あれ?言ってませんでしたっけ?」

 こいつ、今になってぶり返しやがったな。

「言ってないですよ!私はただ男の人と一緒に出かけられる格好って言ったんです!」

「それってデートですよね?」

 はい、完全にイジってますこの人。さっきよりも口角の角度が鋭いです。

「そ、そうですよ!デートですよ」

「親しい人と?」

「そうですってば!!!」

 これ以上はいうな!!!

 目の圧で彼女を威圧する。

「あはは、ごめんなさい。つい」

 お姉さん絶対に性格悪い……

「貴方の服の用途を聞いた時のお顔がすっごく可愛かったのでイジらずにはいられませんでした」

「可愛って言わないでください……」

 照れるから……今朝も同じ感じで照れた気がするし。

 これ以上この店にいたらもっとイジられそうだから早く退散しよっと。

 店員さんに背を向け真っ直ぐ歩き出した。

「お客さん。その服とてもお似合いですよ」

 知ってます。自分自身がそうかんじてるので。

「きっとあのお兄さんも褒めてくれます。自身もって!」

 また、余計な……

「分かってます。彼は絶対に褒めてくれますよ」

 そんな事言われたら嫌でもニヤけちゃうじゃ無いですか……

 扉を開けるとき絶対に変な顔だったよ絶対……

「最後に貴方たちの店名教えて!!」

「移動食堂ミートソースです」

 こんなこと聞いてどうするんだろう?


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