第2回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞 への投稿作品
この晩餐 偽物
大広間の大きなテーブルに席は、老人と ゆいこの2人。
ゆいこが席についた時には、老人は席に居た。
それどころか、食事中だった。
老人『気にせず、夕食を始めてくれたまえ』
いろんな『歓迎』があるものだと、ゆいこは、なすがままを決め込むことにした。
最初に運ばれてきた皿を見て、違和感を覚えた。
料理の1部分だけ透けて見えたのだ。
ゆいこ『あの〜。この料理は、ココで調理したのですか?』
執事『さようでございます。当家のシェフが調理しています。何かお気付きの点でもありましたか?』
ゆいこ『いえ。シェフに感謝の意をお伝え願えますか?』
ゆいこ『そして、私は、好き嫌いが多くて、食べ残しがあることを前もってお詫びします。』
ゆいこ『と、お伝えください。』
執事『伝えます。シェフが、感激することでしょう。』
ゆいこ『いただきます♪』
ゆいこは、毒が混じった部分を起用に除けて、次々と料理を食べた。
老人は、食事の手を止め、ゆいこの様子をまばたきせずに凝視していた。
『好き嫌い』を示すような食べ残しではなかった。
痺れ薬が混じった部分を除けているかのようだった。
ゆいこ『ごちそうさまでした♪』
たぶん、超一流のシェフの料理なのだろうと ゆいこは、感動していた。
老人『料理は、気に入って頂けましたかな。』
ゆいこ『はい。とっても美味しかったです。』
ゆいこ『たくさん食べ残してしまいシェフには申し訳なく思います。』
老人『その様な食べ残しを見たのは、2度目です。』
老人『やはり、遺伝的な能力なのですねぇ』
老人『1度目は、貴方の御父上でした。』
ゆいこは、思いもよらない言葉に、テーブルに両手をついて立ち上がってしまった。
ゆいこ『父を殺そうとしたってこと!?』
激昂して思わずフォークを老人に投げつけていた。
しかし、フォークは、老人まで届かなかった。
老人『殺すとは、穏やかではありませんね。』
老人『さしずめ何かが混じっていることがわかっても、何かは、わかっていないといったところでしょうか。』
図星っぽいことを言われて、テーブルクロスを握りしめる ゆいこ。
老人『貴方が食べ残したのと同じ、痺れ薬です。』
老人『生命の危険が無い程度のね。』
老人『貴方が受け継いだ能力を見せてもらったのですょ。』
老人『会えて、本当に、よかった。』
ゆいこ『どうしろって言うの。。。』