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隠居勇者と魔族の少女

作者:




「お前の望みはなんだ?」


 俺に踏みつけられ倒れ、剣を突き立てられるのを待つ魔王が語りかけてくる。


 望み? 勇者の俺が望むものなど魔王の死に他ならない。


「なんとも面白みのない答えよ。我は勇者ではなくお前自身の望みを聞いておるのだ」


 命乞いでもしようというのか、魔王の言葉は続く。俺は勇者だ。勇者であることが俺のすべてだ。勇者の望みはそれすなわち俺の望みだ。


「難儀なものよの。我を討ち果たそうとするものがまさかお前のようなものとは。いや、むしろだからこそ我を打ち負かすことができたのか」


 所詮、死するものの戯言だ。耳を傾ける必要もない。あとはただこの瀕死の魔王に剣を突き立てるだけだ。



「我を打ち負かしたお前を勇者と認め、予言を残そう。どれだけ力を持とうとも、お前が勇者である限り、お前に幸福は訪れない」



 それが魔王の最期の言葉だった。




 ◆




 魔王討伐という大業はすぐさま大陸中に知れ渡った。大陸中から魔族が消え去ったからだ。


 人間の王と魔王は根本的に異なる。


 人間の王は人間という種族の中の単なる地位に過ぎない。身分の差はあれど同じ人間だ。


 だが魔王は違う。魔族という種族の王であり種族を代表するものだ。その王が力を失えば魔族という種全体が弱り、王が消え去れば魔族は滅びゆく。王の死は種族の死だ。




 そんな中、俺は仲間とともに王都へと凱旋した。国民は歓声を上げ喜び合い、俺たちを称賛した。


 そして、仲間の戦士は王国の騎士団長に、魔術師は宮廷魔導士に、僧侶は大神官という重要な役職を授かった。


 そしてもちろん勇者である俺も、相違なく同様の待遇を受けた。



 しかしそんな生活も長くは続かなかった。幼い頃に勇者としての才を見出されてからは、鍛錬とひたすら魔族討伐の日々を送ってきた。


 そんな俺には人と関わって生きていくことが息苦しかった。なにより俺はこの世界が好きではなかった。この世界はすべてがモノクロに見えていた。



 役職を辞し王都の端でひっそりと暮らすことにした。それでも人々は俺を勇者として期待する。


 王都を出て辺境の村で人知れず身分を偽って暮らすことにした。それでも人の口に戸は立てられず俺が勇者であることは知れ渡った。


 人里離れた山奥で小さな畑を耕しながら一人暮らすことにした。誰とも接することのない生活は気楽だった。




 そして数年が経った。


 よく晴れた初夏の日のことだった


 俺は畑を耕し、たまに狩りに行く。そんな代わり映えのしない日々を送っていた。


 その日もいつもと同じように獣を仕留め帰路についていた、そんな時だった。



 俺の日常にあるはずのないものが、そこにはいた。



 少女が一人倒れていた。



 最初に浮かんだ感情は「面倒だ」というものだった。そして次に浮かんだのは「何故こんなところに子どもが?」という単純な疑問だった。


 ここは人里から遠く離れた山奥だ。一番近い村だって大人の足で何十日もかかる。そんなところに力尽きている様子とはいえ、少女が一人で来ることなど考えられなかった。



 無視してこのまま帰ろうか。そもそも生きているんだろうか。


 そんなことを考えていると少女が小さなうめき声を発した。どうやら息はあるようだ。


 楽隠居のような暮らしをしているとはいえ、俺は勇者だ。人助けをしないわけにはいかないだろう。


 仕方ない、と肩に背負った獲物を置き少女へと近づいた。


 声をかけるも返事はない。抱きかかえようと少女を仰向けにしたときにその顔へ目が行った。



 角がある。魔族だ。



 勇者としての使命に思わず手が剣へとのびる。



 殺すか? いや、何故魔族が生きている? そもそも本当に魔族か?

 


 そんな逡巡が頭を駆け巡る。



 するといきなり少女が目を開けた。


 俺は身構え剣をつかんだ手に力がこもる。



 「ごはん……」



 そう少女はつぶやくと少女は再び気を失った。


 俺は気を削がれて剣から手を離した。そして少女を抱きかかえると家へと連れ帰った。助けたのは単なる気まぐれだった。





 少女をベッドへ寝かしてやり、とりあえず何か食べるものをとスープを作る。


 あの様子じゃ何日も何も食べていないんだろう。なるべく消化にいいようにと野菜が柔らかくなるまでことこと煮込む。


 匂いにつられたのか少女の体がもぞもぞと動く。どうやら目を覚ましたようだ。


 なんとか起き上がろうとしているようだが、体が思うように動かないようだ。


 俺は器によそったスープを片手に少女へと近づき、体を支えてやった。


 

「あ……」


 

 少女はスープと俺の顔をかわるがわる見つめ、食べていいのかと尋ねるような表情を浮かべる。


 俺は少女にうなずいてやった。


「あ、ありがとう……」


 鈴を鳴らしたような声で少女はそうつぶやくと、ゆっくりとそして確かにスープを食べ始めた。


 

 俺はその様子を観察する。どこからどう見てもただの4,5才くらいの少女だ。頭に生えた2本の角を除いては。


 近くで見たがどうやら飾りや偽物というわけでもなく、正真正銘本物の角だ。つまりは魔族だ。


 何故、魔族が生きているのかはわからない。しかし、それはどうでもいいことだ。


 問題はこの少女をどうするかだ。


 殺すのは簡単だ。魔族とはいえまだ幼く何の力もない。こくこくと音を鳴らしながらスープを飲んでいる、その首を刎ねればそれで仕舞だ。


 だが何故かそうする気にはなれなかった。折角助けたのに殺すのは矛盾しているという考えが頭をよぎる。そして何より、殺そうと思えばいつでも殺せるという考えも。



「ご、ごちそうさまでした。おいしかったです」



 考えを巡らしているうちに食べ終わったようだ。



 ……生かそう。



 俺はそう結論づけた。単に今殺す必要を感じなかったからだ。


 俺が何も言わないせいか、戸惑ったような顔をしている少女に寝るように勧めてやる。


 いくら食事をとったとはいえまだ体力は回復しきっていないはずだ。


 少女は何か言いたげな顔をしていたが、俺の言葉にうなずきよっぽど疲れていたのかすぐに眠りについた。

 




 翌朝、いつもと変わらず畑の手入れを行っていた。


 裏表のある人間関係とは違って、野菜は手を入れてやった分だけしっかりと良く育つ。


 黙々とこなす畑仕事は、意外と面白く生活の娯楽となっていた。



 家へ戻ると少女はまだベッドで寝ていた。


 朝食を作り始めよう。まだやわらかいもののほうがいいだろうか。そんなことを考えながら野菜を煮込む。


 そうこうしているうちに少女が目を覚ましたようだ。


「お、おはようございます」


 目をこすりながら挨拶をしてこちらへとやってきた。


 昨日は座るのもやっとこさだったのにもう立ち上がれるのか。魔族だからか。それとも子どもの回復力はこんなもんなんだろうか?


 歩けるなら裏庭にある井戸で顔を洗ってくるといいと伝えてやると、眠たそうにしながらも顔を洗いに外へ行った。


 もう少し様子を見たほうがいいだろうが、あの様子じゃ体力のほうは大丈夫だろう。多分。


 戻ってきた少女と食卓を共にする。


「いただきます」


 小さな手を合わせてそうつぶやき黙々と食べ始めた。どうでもいいことだが食事の挨拶といい、礼儀作法も人間と魔族で同じなのだろうか?



 おいしそうに食べているところ悪いが、事情を聴くことにした。まずは名前からだ。


「わたしはセルツェって言うの。パパがつけてくれた名前なんだって」


 そう言って嬉しそうに微笑む。


「助けてくれた人間のお兄さんのお名前はなんていうの……、言うんですか?」


 俺の名はハルトだと伝える。それと無理をして丁寧な言葉を使わなくていいとも。 


 そして本題だ。何故こんなところで一人で倒れていたのか。


「えっとね。セルツェはクオーレっていう村で暮らしていたの。みんなで10人くらい。昔はもっともっとたくさんいたみたいだけど、セルツェが生まれた頃にほとんどがいなくなっちゃったんだって」


 この少女が生まれた頃というとちょうど魔王を討伐した頃か。だから魔族が消滅したと。


 だが驚いた。魔王が死んでもすべての魔族が消滅するわけではなかったのか。力の強さが影響しているのか?それとも血縁の濃さか?


「その時にセルツェのパパもいなくなっちゃったんだけど、セルツェにはママがいたしフィリネおばさんやジョズおじさんがいたから寂しくなかったよ」


 そう語る少女の顔に影が差す。


「でもね、みんな病気にかかっていたんだって。ママは王様がいなくなったせいで、みんなが病気になったって言ってた。それでフィリネおばさんもジョズおじさんも死んじゃって最後にはママも……」


 なるほど。王の死と同時に消滅するのでなく、個体によって時間差があるというわけか。


「それでね、セルツェは悲しかったけど一人でご飯を作って生活していたの。でも、村にあった食べ物が底を尽きちゃって……。だから、どこかほかの村に住ませてもらおうと思ってクオーレ村から出たの。けど、ほかの村の場所なんて知らないから、ずっとずっと歩いて……。そしてハルトに助けてもらったの」


 当てもなく彷徨っていたというわけか。それにしてもどれだけ歩き続けたんだ?この近くには人間の村はもちろん、魔族の村だってなかったというのに。


 そしてほかのの村なんてものはもうどこにも存在しないはずだ。この大陸にいた魔族の村はクオーレという村と変わらぬ末路を辿ったはずだ。


 俺は一瞬少女に真実を語るべきか迷ったが、隠すことなく伝えることにした。


「……やっぱりそうなんじゃないかって思ってた。ママが最期に言ってたもん。セルツェだけは幸せにしてあげたかったけどママの力じゃそうしてあげられないって」


 途方に暮れたように泣きながら、それでも必死に笑おうとしながら少女は語った。



 哀れな境遇に同情する? 似たような話はどこにでもある。


 魔王を倒した責任を感じる? 俺は勇者だ。魔王を倒すのが使命だった。それに魔族も人間を大勢殺してきた。


 少女の言葉に俺は何の感情も持たなかったはずだった。


 それなのに気が付けば小さく言葉を紡いでいた。



 ここで一緒に暮らせばいい、と。




「いいの? ほんとにいいの?」



 少女は目を丸くして驚きを浮かべながら尋ねてきた。


 俺は何故そんな提案をしたのかと若干後悔しつつも、一度放った言葉だとそれにうなずいてやる。


「やったあ! セルツェ、迷惑かけないようにするから! いっぱいお手伝いもするから!」


 満面の笑みを浮かべて抱きついてくる。子どもと接した経験などないから戸惑うもすぐに納得する。


 明日からどうやって生きるかもわからない状況だったんだ。そこに生活基盤を与えられたら喜びもするか。


 だが2人で暮らすとなると……。まずベッドを作らなきゃな。昨日は俺は床に毛布を敷いて寝たが、さすがに毎日それじゃ堪える。


 たしか納屋に藁が残っていたはずだ。替えのシーツは何枚かあるしそれで包めばいいだろう。


 どうせ作るなら早いほうがいいと俺は食器を片付けると納屋から藁の束を運んできた。


 そして俺のベッドの横に並べるとシーツでくるんだ。あっという間に完成だ。


「それ、セルツェのベッド?」


 作業している間、とことこと俺の後ろを歩いてくっついてきていた少女が尋ねる。


 ああ。とうなずいてやる。


 すると何を思ったか、いきなりベッドに飛び込んだ。


「ふかふかだー」


 幸せそうに小さなベッドを占領して、大の字で寝転がっていた。


 

 その日から独りだった生活に、魔族の少女という異物が紛れ込んだ。




 ◆




 どうやら少女はとても快活な性格らしい。


 最初の頃こそなるべく静かに振る舞おうとしていたようだが、最近では外でよく一人遊びをするようになった。


 そして花が好きなのか、頻繁に摘んでは持って帰ってきていた。コップに生けられた名前も知らない小さな白い花が、テーブルの真ん中で主張している。


 そういえば昔の仲間の魔術師が、栞代わりに押し花をよく作っていたなと思い出し、そして手元にあった一冊の魔術書を少女に与えてやった。


 魔術書と言ってもまだ術の記載されていない真っ白な無地の本だ。何の害もないし花を綴っていくにはちょうどいいだろうと。


 その日から少女は、新しい花を見つけては持って帰り、テーブルに並べてひとしきり眺めては、押し花帳に押すようになった。


「これは紫陽花。セルツェはこれは知らない。これも知らないけどとてもきれい。これはドクダミ。これは知らない」


 並べた花を指さしながら、そういって少女はつぶやく。へえ。ドクダミはあんな花が咲くのか。葉はよく使ったことがあるが。


 俺は花になどなんの興味もないが、大切そうに押し花帳を眺める少女の横顔は明るかった。





 ◆




 最近は少し暑くなってきた。もう夏といってもいいだろう。


「トマトがね、だいぶ赤くなってきたの。もうすぐ収穫できるね」


 そう嬉しそうに声を上げながら少女が家へと駆け込んできた。


 住み始めるときに宣言したとおり、少女は家事や畑仕事を手伝っている。


 今の季節は少女はトマト係だ。水を撒き、葉についた虫を落とす。


 そんな単純な作業でも少女は毎日汗を流しながらも、とても楽しそうにこなしていた。




 

「トマトが2つ鳥に食べられちゃったみたい……」


 ちょうど今日収穫しようかと思っていた日の早朝に、悲しげな顔で少女は報告しに来た。


 どれどれ、と畑を見に行くと確かに真っ赤に熟れたトマトの中に、2つほどついばまれたように欠けたものがあった。


 けれど、まだまだトマトはたくさんある。俺にとってはたいした被害ではない。


 そう少女に告げると、一瞬寂しそうな表情を浮かべた後、思いついたように、


「そうだね。きっと鳥も食べたくなるくらいおいしいトマトなんだ」


 そういって少女は朗らかに笑った。


 残ったトマトを一緒に収穫する。今年は豊作だ。


 少女は小さな手で大きな赤いトマトをかごに収穫しながら、そのうち一つをおもむろにかじった。


「うう。ちょっと酸っぱいね。セルツェはもうちょっと甘いほうが好きかな。でもおいしい」


 ちょっと残念そうにしながらも、それでもどこか嬉しそうだった。


 今年のトマトは去年のものより、どこか色鮮やかな気がした。




 ◆




 近くを流れる小川に、少女と一緒に魚を捕りに行く。


 昨晩一人で罠を仕掛けに行ったから、運が良ければ何匹か掛かっているはずだ。


 息を弾ませながらも、少女は俺の後ろをついてくる。


 近くといっても子供の足では少し遠かったか。そんなことを思いながらも、ついて行きたいとせがんだのは少女自身だ。


 はあ、はあ、という息遣いが後ろから聞こえてくる。俺は歩みを止めない。


 すると突然、


「わあ。すっごくきれい」


 少女の感嘆の声が聞こえてきた。


 小川の傍の丘には一面、向日葵が咲いていた。


 向日葵の種には栄養があるし何より油がとれる。種の取れる頃にまた来てもいいだろう。


 

 仕掛けた罠には一匹の鮎が掛かっていた。もう少し獲れるかと期待していたが。


 不漁だったときのためにと念のために持ってきていた釣竿で、もう少し魚を獲ることにした。


 一応作ってやったもう一本の釣竿を少女に渡してやる。


 少女は初めて釣竿を見たのか不思議そうに眺めてから、俺の真似をして釣り糸を川へ垂らす。


 

 長閑だ。たまにはこんな時間を過ごすのもいいだろう。



 少女の体がびくっと動いた。どうやら魚が掛かったらしい。


 俺は真似してみろと自分の釣竿をあげて、針を手元に持ってくる様子を見せてやる。


 少女は緊張気味にうなずくと、ゆっくりと竿を持ち上げた。


 糸の先には一匹の鮎が掛かっていた。


「やったー」


 そう叫んで油断した時だった。鮎から針が外れた。


 まるでスローモーションのように鮎が川へと落ちていく。


「だめっ」


 そう言うが早いか、少女は鮎めがけて川へと飛び込んだ。


 バシャンと大きく水が跳ねる。


「つめたーい」


 そう言いながら笑う少女の手には一匹の鮎がつかまれていた。


「釣りって楽しいね」


 今のは釣りじゃないだろう。そう思いながらも少女から鮎を受け取ってやる。


 釣りはもう満喫したようで、少女はそのまま川から上がらずバシャバシャと水遊びを始めた。


 そんなにうるさくされたら釣れないだろうと思いながらも、少女の姿を眺めている俺は水遊びをとめることはなかった。



 遊び疲れたのか、帰り道の少女の足取りは重い。


 俺は往路より少しゆっくりとした歩調で進む。



「あの。ちょっとだけ待ってほしいの」



 一面に咲く向日葵が近づいてきたとき、少女は俺にねだった。


 特に急ぐ必要はないから、少しだけならと俺は少女にうなずいてやる。


 少女は嬉しそうにしながら、向日葵の中へと走っていった。


 

 少しした後、根元から手折った大きな向日葵を、傘のように持って少女は帰ってきた。


「見て。髪飾りにしてみたの。セルツェに似合うかな?」


 よく見ると少女の頭には小さな向日葵が二輪咲いていた。


「髪飾りは帰ったら枯れちゃう前に押し花にしよっと」


 それは少しもったいない。不思議とそんなことを感じた。


 髪飾りが似合っているから?俺に服や飾りの良し悪しなんてわかるはずはない。


 だけどやっぱりもったいない。


 そんな思いが自然とあふれ出し、気が付けば少女に似合っていると声をかけていた。


 少女はとても驚いたように目を見開きながらも、


「ありがとう!」


 そう満面の笑みを浮かべ、楽しそうにくるくると回りながら走っていった。


 その姿はまるで一夏の向日葵のようだった。




 ◆




 夏が終わり少し肌寒くなってきた。


 今日はセルツェと一緒にきのこ狩りに来ていた。


 昨日は一日かけて、食用のものと毒きのことの見分け方をセルツェに教えていた。


 セルツェは熱心な生徒だった。


「赤っぽいやつが毒きのこで、茶色いやつが食べれるきのこなのね」


 だが、優秀な生徒ではなかった。茶色いものにも毒があるものはあると説明したはずだ。


 まあ食べる前に俺が確認して、仕訳ければいいか。


 そんな昨日の授業風景を思い出しているうちに、セルツェは次々ときのこを収穫していた。

 

 嬉しそうに木の根元に生えたきのこに手をかける。それは毒きのこだぞ。



「あ。どんぐり!」


 小さなどんぐりを見つけたセルツェは嬉しそうにしていた。


「セルツェね、どんぐりのクッキー大好きなんだ」


 そう言って、期待したような目で俺を見つめてくる。


 はあ。まあどんぐりも貴重な秋の食糧だ。クッキーくらいなら俺でも作ってやれる。


 そう伝えてやると嬉しそうにまた拾い出した。


「こっちは笠つきのどんぐりだ。痛っ」


 何かと思うと、足をもつれさせたのか転んでいた。


 大したけがはないようですぐに起き上がっていたが、それにしてもさっきから、というかここ最近よく転ぶことが増えていたな。


 どうしたのかとセルツェに尋ねてみると、


「えっとね、ときどきなんだけど、急に足が動かなくなっちゃうの。なんでかはセルツェにもわかんないけど」


 その言葉に一抹の不安がよぎる。思い当たる節があった。初めから知っていたはずだった。セルツェと会った頃はそんなことどうでもよかった。


 けれど最近はなるべくそのことを考えないようにしていた。不安を先送りにしているだけと知りながら。



 


 かごがいっぱいになったのは夕方近くになってだった。


 セルツェははしゃぎ疲れて外聞もなく地べたに横になり、俺も座って休憩をとっていた。


 そろそろ帰るか、と立ち上がったとき、ふとあることを思い立った。あの風景を見せたら、セルツェは喜ぶんじゃないかと。


 そのことに気づくと、何故だかセルツェにその風景を見せてやりたいという思いが込み上げてきた。


 俺はセルツェの手をつかむと、目をつぶってついてくるように言った。


「どうしたの? どこへ行くの? まだ目を開けちゃダメ?」


 目をつぶっているからか、どこか不安そうで、けれどどこか楽し気で。


 もう少しなはずだ。




 そう長く歩かないうちにその景色が見えてきた。目を開けていいぞ。


「すごい! すっごくきれいだよ」

 

 目前には真っ赤なモミジの木々が広がっていた。やっぱり喜んでくれたか。


 俺にはただの季節を知るための風景としか感じられないが、普通はこの景色をきれいだと思うことは知っている。


 セルツェは疲れを忘れたように走り回り、そして真っ赤な絨毯の上に寝転がった。


「赤。赤。赤! 上も、下も! どこを見ても真っ赤だよ!」


 本当に嬉しそうに笑いながら、小さなモミジの葉を掌にのせる。


「ちっちゃくて赤くて。まるで赤ちゃんの手みたい」


 ただの葉っぱ一枚にどうしてそこまで嬉しそうにするのか。どうしてそんなに心を動かすことができるのか。


 この景色を見ても何も感じない俺にとって、セルツェの笑顔はあまりにもまぶしかった。


「持って帰って押し花にしよう。花じゃないけど別に変じゃないよね?」


 ちょっと困ったように問うセルツェに、変じゃないとうなずいてやる。


「ハルト、連れてきてくれてありがとう。また来年も見に来ようね」


 その言葉に俺は戸惑う。来年。そう来年だ。


 俺はいつまでセルツェと一緒に暮らせるんだろうか。いったいいつまでこの光景を見ることができるんだろうか。


 そんな不安が胸をよぎったはずなのに、セルツェのいる真っ赤な景色に、俺の心が心地よく少し動かされたような気がした。




 ◆




 本格的な冬がやってきた。まだ今年は積もっていないが、この地域は雪が深い。だから、冬の間は畑仕事は休みだ。


 保存食はこの間、セルツェと一緒に鹿肉の燻製と干し野菜をたっぷりと作ったから問題ない。


 新鮮な野菜が食べられないのは少しつらいがそれも仕方のないことだ。



 冬の夜は長い。仕事が全くないわけじゃない。


 縄を編んだり、破れた網を直したりといろいろと日用品を作らなきゃならない。


 だけどわざわざ明かりをつけるほど急ぐものでもないし、何より油がもったいない。


 そうすると自然に寝る時間が早くなる。


 日が暮れる前に早めの夕食をとり、日が暮れると自然と就寝する。そんな毎日だ。


「ねえ。セルツェもそっちで一緒に寝てもいい?」


 そういって俺のベッドへもぞもぞともぐりこんでくる。


 なかなか寝付けないらしく、ここ最近は毎日のように一緒に寝ている。


 無理もない。確かに冬の夜はどこか心細くなる。そんなことを思い立った俺自身に驚いた。



 心細いなんて感情は今まで知らなかった。去年の冬も一昨年も一人で暮らしてきたが、そんなこと一度も感じたことはなかった。

 

 初めて知る感情に戸惑いながらも、まどろみの中に落ちていった。





 翌朝、今日は少し寝坊したようだ。


 顔を洗おうと外へ出ると、銀世界が広がっていた。


 一晩でかなり積もったみたいだ。


 早くセルツェにこの光景を見せたいと思った。


 セルツェがよく口にする「きれい」という感情を、俺は最近になって理解できるようになってきた、そんな気がしていた。


 この一面の銀世界は確かに俺の心を動かしていた。セルツェもきっと同じだろう。


 急かすように起すも、なかなか起きないセルツェを抱きかかえて白銀の世界へ向かった。


 抱きかかえられながら目を覚ましたのか、セルツェは眠たそうに眼をこすっていた。


 雪が積もったんだ。あたり一面真っ白だぞと。




「あれ? 真っ暗だよ? ハルトどこにいるの? 何も見えないよ」




 セルツェの瞳から光が失われていた。


 

 先送りに、先送りにとしていた不安へ、ついに向き合わなければならない時が来た。

 


 予兆は数えきれないほどあった。


 冬仕事をしているときも、かじかむのとは違って手が動かない時がある様子を幾度も見せていた。


 いや、秋頃からよく転ぶようになっていたんじゃなかったか。


 もしかしたら俺が気付かなかっただけで、もっと前から不調はあったのかもしれない。



 最初から分かっていたことだろ。魔王がいないんだからセルツェもそうなるって。いつからか俺は、その事実から目を背けるようになっていただけだ。



「セルツェの目、見えなくなっちゃったんだね……」


 寂しそうに、諦めたように小さな声が響く。


「でもセルツェ、大丈夫だよ。雪が積もってるのは触れば冷たくてわかるもん」


 迷いなく手を伸ばし、その小さな手が積もった雪へ触れる。


「わあ。こんなに積もったんだね。きっとすごくきれいなんだろうなあ」


 俺は、こんな俺にでも感じることのできた「きれい」を、セルツェはもう見ることができないという事実が途方もなく悲しかった。





 

 そして冬が明ける頃、セルツェは倒れた。




 ◆




「セルツェ、今日はどんぐりのクッキーが食べたいな」



 幸い、と言っていいのかわからないが倒れたセルツェは、1週間ほど高熱が出て寝込んだが何とか意識を取り戻した。


 けれど、目を覚ましてからは手足が思うように動かないようで、ベッドにいることが多くなった。



 倒れるまでは目が見えなくなってからも、何事もなかったかのようにセルツェは振る舞っていた。


「セルツェね、見えなくても大丈夫だよ。ここにテーブルがあって、ここに食器棚があって、こっちが台所。ここがベッドで枕元には押し花帳があるの。セルツェ全部おぼえてるよ」


 当然、何不自由なくというわけではないが、それでも必死に今までと変わらぬ日々を送ろうとしていた。


 それでももう限界が近いことを俺はもう悟っていた。


 俺は無言でどんぐりをつぶす。


「つぶすの手伝うね」


 そう言っておぼつかない足で起き上がった。


 小さな手ですり棒を持つとよいしょ、よいしょと軽い体重をかけてどんぐりをつぶしていく。


 火傷をするかもしれないから、目の見えないセルツェには焼くのは手伝わせれない。


 一緒に作りたそうにするセルツェに、疲れたから休憩するよう伝え何とか納得させる。



 部屋中に香ばしい匂いが漂ってきた。


 少し作りすぎたかもしれない。


 けど、セルツェが食べたいといったんだ。いくらあってもいいさ。そういえばセルツェが何か食べたいって今までねだったことなんてあったか?



「ハルトと一緒に作ったクッキー、おいしいね」


 セルツェはクッキーを頬張りながら、嬉しそうに微笑んでいた。





 そして寝込んでは起き、そしてまた寝込む。そんな日々が続いた。



 ここ数日は比較的元気にしていたセルツェがついに病床に伏せるときが来た。


「セルツェね、足が動かなくなっちゃったみたい」


 光を失った目で俺を見つめ、ベッドから起き上がれないまま、あきらめたように笑いながら言う。


 大丈夫だ、またきっとよくなるとでも嘯くか? いいや、そんなことをしても無駄なだけだ。


 俺にはセルツェにかける言葉が見つからなかった。


「大丈夫だよ。セルツェ、わかってるから。ママも最期はこんなふうだったんだ」


 小さな手が何かを探すように伸ばされる。


「ハルト。ちゃんといるよね?」


 ああ。俺は答える代わりにセルツェの小さな手を力強く握る。


 なんて言葉をかけていいかわからない。どうしたらセルツェを助けられるのか見当もつかない。こんなざまで何が勇者だ。


 小さな手で俺の手を握り返しながら、セルツェが小さな声で語りだす。


「セルツェね、ハルトに初めて会ったときすごく寂しかったんだ。ママが死んじゃってからずっと独りだったから。だからね、ハルトが一緒に暮らそうって言ってくれて本当に嬉しかったんだ」


 当時の俺には理解できなかったが今の俺にならわかる。命の危機が去ったからだけじゃない。こんな小さなセルツェがずっと独りで彷徨っていたんだ。それはどんなに寂しく心細かったことか。


「それからは毎日がとっても楽しかったよ。川に行って釣りをして水遊びをしたり。あたり一面の向日葵はすっごくきれいだったな。頑張って育てたトマトはちょっと酸っぱかったけどおいしかったよね。モミジは真っ赤で葉っぱはちっちゃな手みたいでかわいかったな。寒いし野菜も採れなくて大変だったけど雪の絨毯はすごくきれいだった……」


 それは俺にとっては何てこともない、いつもと変わらない一年の景色だった。だが、セルツェの瞳には何物にも代えがたい光景として映し出されていたのだろう。


 俺はそれをセルツェと一緒に共有することができなかった。セルツェの心を揺さぶる景色にあのときの俺は、何も感じることができなかった。どうしてこんな簡単なことに早く気づけなかったんだ。


「セルツェの目はもう真っ暗だけど別にもういいの。ハルトがくれたこの1年間の景色はずっとずっと忘れないから。いつまでも心の中にあっていつでも思い出せるから」


 俺がセルツェにあげられたものなんて何もない。セルツェから貰ったものは数えきれないほどあるのに。


 頬を伝って一筋の涙が零れ落ちた。生まれて初めての涙だった。


「セルツェね、ハルトのことが心配なの」


 少し言いにくそうにはにかみながら、突拍子もないことを言い出す。


「ハルトと初めて会ったとき思ったの。セルツェとおんなじでそしてちがうって。おんなじなのは独りだったこと。ちがったことはそれを寂しいって思ってなかったこと」


 でもね、と話を続ける。


「ほんとは寂しくなかったわけじゃないんだって後からわかったの。いつだったか一人で平気なの?って聞いたらハルトは勇者だから大丈夫だって答えたよね。でもそうじゃないんだよ」


 悲しそうに笑いながら、しゃべるだけでも辛そうにしながらも、それでも伝えきれない思いを紡ぐ。


「ハルトはほんとは寂しかったの。だけど勇者だから寂しいって気持ちを抑えてただけなんだよ。セルツェはね、それはとても残酷なことだって思うの。独りが寂しいって思えるから、誰かと一緒にいるとき幸せな気持ちにになれるんだってセルツェは思うんだ」


 俺は確かに寂しさなんて今まで一度も感じたことはない。だけど、セルツェと一緒に過ごしたこと1年間は確かに幸せだった。そのときは幸せだって感じることができなかったけど、今ならはっきりと言える。それだけは何にも代えがたい事実だ。


「えへへ。そうだといいなって思ってた。セルツェとおんなじで嬉しい。でもだからこそ心配なんだ。一緒にいて幸せだった人と別れるのは、ほんとにほんとに寂しいことだから」


 勇者だから耐えられるさ。セルツェはそんなこと心配しなくていいんだよ。



「ハルトはもう勇者じゃないよ。勇者は魔族の敵だってママが言ってた。セルツェは魔族だよ?敵の魔族が死んじゃうことが寂しい勇者なんて勇者じゃないよ」



 俺はもう勇者じゃない?それは勇者として今まで生きてきた俺のすべてを否定する言葉のはずなのに、不思議と心地よく心に響いた。




「ねえ。お願いがあるんだ。セルツェ、桜を見に行きたいの」


 桜?ここ何日も家から出ていないからわからないが、そろそろ咲く頃合いのはずだ。

 

 俺はうなずき、しかしセルツェの目が見えないことを思い出すと、声をかけてから抱きかかえた。


「あれも持っていきたい。押し花帳」


 思い出したように声を上げたセルツェに枕元に置いてあった押し花帳を渡してやる。セルツェは宝物でも持つように抱きかかえた。


 今から行けば昼頃には桜の咲く丘へと着くはずだ。



 少しでも早くセルツェに桜を見せようとできるだけ速足で、そしてできるだけ負担にならないように慎重に山道を進む。


 決して平坦とは言えない獣道だ。抱えられているだけでもつらいだろうが、セルツェは苦しそうな顔一つしない。


「春の匂いがするね!」


 久しぶりの外出とはいえ、状況にそぐわない浮かれた声を上げる。


 セルツェの言うとおり、しばらく外に出ないうちに、世界はすっかりと春の季節へと巡っていた。


 

「さっきの話の続きだけど、寂しくなった時どうすればいいか教えてあげる」


 今は俺のことなんかより、自分のことだけを考えていてほしかった。それでもセルツェは俺の未来を気にかける。


「それはね、助けてって言うの。そうしたら誰かが手を差し伸べてくれるの。セルツェをハルトが助けてくれたみたいに」


 だけどね、と。


「周りに誰もいなくて助けてもらえないときは大切な人の心を思い出すの」


 心?


「そう。心だよ。魔族はね死ぬと消えちゃうの。人間は体が残るから土に埋めてお墓を作って、お参りして死んじゃった人を思い出すんでしょ?でも魔族は体を残せないから、代わりに大切な人に心を残していくの。セルツェにはセルツェのママが心を残してくれた。だから、寂しいと思ったときはママの心を思い出すと、あったかい気持ちになれるの。幸せになれるの」

 

 それはとても悲しくてとても優しい死生観だ。もちろん人間だって故人を偲び、悲しみを紛らわすことはあるが、体という生きた証が見える形で残らない魔族はきっとその風潮が強いんだろう。


「ハルトは人間だから、お墓がないとセルツェのこと忘れちゃう?」


 押し花帳を抱きしめたセルツェの腕がこわばった。


「セルツェね、ハルトにたまにでいいからセルツェのこと思い出してほしいの。だからこの押し花帳をセルツェの体の代わりに埋めて、お墓を作ってほしいな。この押し花帳にはセルツェの心がつまってると思うから」


 そんな悲しいことを言うなと声を荒らげる。お墓なんて言うな。セルツェはまだ生きているんだから。それに形なんて残らなかったって忘れるわけがないだろう。


「セルツェ、消えちゃって独りになるのが怖いから、だからずっとハルトのそばにいるにはどうしたらいいかなって考えたら押し花帳のことが思い浮かんだだけなの」


 変なこと言ってごめんね、と寂しそうに笑った。


「ちょっと疲れちゃったから休むね。もし寝ちゃってたら着いたら起こしてね」


 ああ。嫌なことなんて考えずゆっくりと休め。俺はずっとそばにいるから。







 そこには辺り一面、満開の桜が咲いていた。


 疲れたのかいつの間にか眠ってしまったセルツェを揺すり、起こそうとする。


 なかなか目を覚まさないセルツェに不安を覚えるが、まだ大丈夫だと自分に言い聞かす。


 そうしているうちに、眠そうに手でこすりながら目を開いた。



「わあ。桜ってこんなにきれいだったんだね」



 セルツェの瞳に光がもどっていた。


 もがくように俺の腕から抜け出し、桜の木に向かってかけていく。満足に動くこともできず、辛そうにしていたのがまるで嘘のようだ。


 春を体全体で感じるんだとでもいうように、花吹雪を体中に浴びていた。


 

 そして急に振り返り、俺を見つめた。


「セルツェを助けてくれてありがとう。セルツェの体は消えちゃうけど、心はハルトのもとに残していくよ」


 押し花帳がセルツェの手元から落ち転がっていく音で気が付く。満面の笑みでとても満足そうな顔を浮かべたセルツェの体は、徐々に透け始めていた。



「セルツェ!」



 俺はとっさに駆け寄り、小さな体を抱きしめた。



「セルツェ。君は俺に幸せを教えてくれた。寂しさを教えてくれた。俺に足りなかったすべてを君から与えてもらった」


 大粒の涙が雨のようにとめどなく零れ落ちた。


 もう残された時間がないということは、嫌というほど理解していた。それでもこの腕の中に確かにある、ぬくもりを失うことが怖かった。

 

 そんな思いをあざ笑うかのように最期の時は迫っていた。


 セルツェはもう何も言うことはないというように優しく微笑み、そして俺の腕の中で、まるで花びらの散るように消えていった。







 花びらの舞う空を見上げた。君のいた世界はすべてが鮮やかで美しかった。そして君のいなくなった世界も、この彩りを失うことはないだろう。俺の心に君の場所がある限り。





 木陰に転がった押し花帳の最期のページには、桜の花びらが舞い落ちていた。





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― 新着の感想 ―
[一言] ちくしょう、5ちゃんから来たけど久しぶりにうるっときちまった。読みやすい文章も相まって普通に良き。
[良い点] とてもよかったです お互いによりそって生きていき 最後にある意味二人とも救われた感じが 素晴らしかったです
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