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最終章 『春のマリア』  作者: 松島 雄二郎
聖と魔のフロントライン
358/362

非情のバド先輩放置!

◇◇◇???SIDE◇◇◇



 彼女のことは仮にCとしておこう。

 Cは自由気ままな旅の空にある。作家を生業としており時に締め切りのようなものに追われることもあるが基本的には自由であり、行きたい時にそこに行き、為したいことを為すのだ。


 Cは昔から絵やお話作りが好きだった。時折生家から市井に降りては子供たちに貴族社会の面白いスキャンダルを紙芝居にして披露したものだ。教訓たっぷりの古典の名作だって大好きだけど一番好きなのは可愛い子たちの笑顔なので、時には徹夜してでも仕上げたものだ。

 面倒くさい立場から解き放たれた今は旅先で紙芝居を披露しながらネタを集めて本にまとめて出版している。これでもけっこうな売れっ子作家なのだ。


 昨今は旅行記ブームがきている。外国に行きたいけどそんな時間も金もないという貴族女性は旅行記を求めている。だがそれは表層の話だ。

 願望という根幹の部分では彼女たちは変身を求めている。C自身も高貴な生まれだからこそ感じていたが貴族社会に生きる女たちは窮屈な思いをしている。貞淑であれ優雅であれと面倒くさいイメージばかりを押し付けられて、たまに嵌めを外そうものなら即刻社交界であることないこと噂にされる。

 周囲の目を気にして好きなこと一つできやしない貴族女性の多くは自分ではない誰かへの変身願望を持っている。とはいえ今の恵まれた生活も捨てたくはないので願望は心の奥にそっとしまっておくのだ。


 そしてCは旅行記と追体験の要素を取り入れた本を書いてみた。これがけっこう売れたおかげでスポンサーも気前よく金を出してくれる。つまり彼女はスポンサーの金で取材と称してあちこち旅をしてるわけだ。

 今日もそんな旅の空であった。自由な心の望むままにふらりふらりとシャピロの首都エテメンアンキまでやってきて、炉端で売ってたムーラン(串に差したパンの羊バター焼き)にかぶりつきながらのんびり観光していたら……


 大通りを闊歩する馬車列を見かけた。戦勝パレードにしては規模は小さいがその類のものらしい。


「うわー、野蛮ねえ」


 とは思いつつも周囲の住人がそうするように見物してしまうのはヒトという種に刻まれた好奇心だろう。


 荷馬車に積みあげられた戦利品と思しき大量の武具。二台目の馬車には捕虜と思しきハンサムと美女。まあなんて分かり易いアピールなんでしょうと苦笑さえ出てきそうな小パレードを見ていたら……

 見ていたら……


(あれ、あの子どこかで……)


 女の子にしては大柄だが綺麗な子だ。気の強そうな吊り目と栗色の長い髪、もしCに倒錯的な趣味があったならドキドキしたかもしれない。……だが、どうも自分はそういう理由で気になっているのではないらしい。


 見覚えがある気がする。今となっては遠い郷里の遥か昔の記憶がざわめいている。

 刹那、途切れていたシナプスが突然つながるみたいに思い出が蘇る。


『えほん、かんどうしました! あたしもクラリス様みたいなえほんをかきたいです!』

「あっ……」


 過去と今がつながり、思い出した苦い思い出がCの中で遠吠えを発する。

 かつては苦さのあまりに開き直った己の醜さと、苦みさえも面白いと思える大人になった今の自分の喜びが弾けて、竜皇女クラリスは子供みたいに大きな声を出した。


「あー!」


 なんていう物書きにあるまじき何の変哲もない驚きの言葉だ。



◇◇◇ファリスSIDE◇◇◇



 シャピロ首都エテメンアンキの中央通りを荷馬車が進む。この国では戦果は見せびらかすものだ。

 屈強な戦士を捕らえればこんなすごいのに勝ったんだぞと見せびらかし。美女を捕らえればお前らいいだろ~と見せびらかし。財宝だって見せびらかす。そして荷馬車に積まれた戦果を見物するのは庶民の楽しみの一つだ。これは戦士の義務であるのだ。

 シャピロは雄々しき戦士が尊ばれる国だ。子供の夢は戦士だし国で一番金を持ってるのも官僚ではなく戦士だ。


 そんな国で戦利品を載せた荷馬車に載せられているファリスは当惑の中にある。荷馬車を追いかけてくる子供たちが歯の抜けた笑顔でにっこり笑いかけてくるし、「三百、三百でどうだ!」とこの場でファリスを買い取ろうとする商人までいる。

 まさに珍獣の扱いだ。衆人環視という言葉の意味をまざまざと思い知らされ、うんざりしてしまう。


(クロードとも離されてしまったし合流は絶望的ね。個人で逃げて本国で合流するしかないわね……)


 そもそもこいつらから逃げられるのかという問題もある。

 絶望的な状況にため息が出てきた。


(困ったなあ……―――ん?)


 中央通りの凱旋を見物している旅客と目が合った。

 なんというかひどく目を惹く女性だ。こちらの民族衣装であるトープという頭から被るケープをつけていないというのもあるが、日差しを受けて輝くプラチナブロンドと乗馬服のように動きやすそうな七分丈のチノパンとブラウス。お洒落なショルダーバッグも首からストラップで垂らしたカメラもここいらでは見ないものだ。

 一見すると観光客か女性記者だ。露店で売っているような粗末な串焼きパンを齧っている。しかしこちらをじろじろと見つめるぶしつけで図々しい猫っぽい目つきにはなぜか心がざわめいた。


(……この女性、どこかで……?)


 見覚えがあるような気がする。学院にいる間ではない。入学前にアレクシス領に住んでいた頃よりも昔だ。いつか、どこかで……


「あー!」


 観光客の女がファリスを指さして大声で叫んだ。

 そして荷馬車まで走ってきた。そんでファリスと両手の指を絡めてピョンピョン飛び跳ねだす。ものすごく嬉しそうだ。


「ファリス・メイアよね! うわあ、懐かしい! ねえねえ元気してた?」

「えっと……?」


 人懐っこい笑顔をする観光客のことが思い出せ……

 刹那、古い記憶の扉が開いた。


 夜闇に沈んだ宮殿で口元を血に染めた少女が叫んでいる。


『見ないで……! わたくしを見ないで…お願いだから』


 封じていた記憶がかちりと音を立てて嵌り、この者の名前を思い出す。


「クラリス様……?」

「そうよ、久しぶりね!」

「うそ、だって死んだはずじゃ……」

「やだー、死なないわよ、殺されたくらいじゃ死なない死なない♪」


 なおファリスはこの女の葬式にも出たことがある。そして本人曰く殺されたくらいじゃ死なないらしい。


 竜皇女クラリスはそのまま荷馬車にあがりこんでしまう。荷馬車を操舵する軍師の兵も彼女のことを知っているようで、「げえっ!?」って醜態をさらしてる。


「はぁい、竜の谷以来ね。いえ正確にはオルスタントの港以来かしら?」

「どうしてあんたさんがいるんですか……」

「取材よ」


 竜皇女がショルダーバッグの中から取り出した一冊の単行本をアピールする。

 女中探偵クラリスの最新刊『砂漠の恋人たち』だ。


「え、作者?」

「ええ。はいこれあげる、だからいいでしょ?」

「いいかどうかで言われるとよくないんですがね」

「いいでしょ?」


 竜皇女が可憐にお願いすると兵隊もほっぺを引きつらせて何も言えなくなり、背中を向けて馬車に集中し始めた。……この女は所業を忘れてはいないからだ。


 かつて竜の谷で彼らを罠に嵌め、聖銀竜を嗾けた最悪の魔女クラリスの所業を未だ忘れていないから、自分の手には負えないと判断したわけだ。

 この不幸な兵隊にできるのは己の上司に思念話で報告することくらいだ。



◇◇◇◇◇◇



 応接室というにはやや開けたシャピロ風の広く開放的な部屋に料理が並んでいる。客人はクッションに寝転がりながら適当にメシを摘まんでいた。捕虜として連れてきた三人もここにいるがこちらは立場を弁えているのか緊張した様子で座っている。

 屋敷に帰ってきた軍師が見た最初の光景がこれだ。


 竜皇女クラリスがこちらに気づいてパッと手をあげる。その様子にはかつて軍師を竜の谷で罠にかけ、聖銀竜を嗾けた事実など失念しているふうに見える。……その程度どうでもいいと思っているだけかもしれない。


「はぁい殿下、おひさし!」

「報告を受けて急ぎ帰還したが本当に貴女であるのだな。本当に随分と久しい、もう何年になる、四年か五年か……」


 軍師が絨毯を敷いた床に胡坐で座り込む。そして冷えた茶をかぶりとやる。


「屋敷の主として、そして友として歓迎させてもらおう」

「感謝するわ」

(どういう関係なんだろ……?)


 国葬まで行った死んだ皇女が生きていて、シャピロで飛ぶ鳥を落とす勢いの新参軍師と昼餉を囲んでいる。事情のまったくわからないファリスとバドは黙って事態を見守る構え。自分たちの処遇はこの二人の話し合いによって変化するのだ。


「今はどうしている?」

「あちこちをふらりふらりと気ままな旅暮らしよ。そちらこそどういう心境の変化で軍師に?」

「そちらと同じような暮らしぶりであったよ。ただ、まぁ、縁があった」

「そう」

「面白いとは思わぬか?」

「ええ、でも人ってこういうものよ」

「であるな。立場など人の生のうちに幾らでも変わるものだ、このような立場に落ち着いて実感を得たよ」

「未練はないの?」

「ないよ。今になって思うが祖国を出てよかった、でなければ俺の視座はいつまでも砂に囚われていたであろう」


 この後、話はなぜかクラリスの作家業に移り……

 ショルダーバッグから取り出した本を床を滑らせて渡す。庶民でも購入しやすいように装飾を省いた簡素な単行本には帯が巻かれていて。


『空前の大ヒット! シリーズ合計200万部突破、今世紀最高のライトミステリー』


「あげるわ、今はこんなの書いてるの」

「それは驚いたな」

「なんで?」

「イルドキアも読んでおったよ。まさかそなたの作品だとは思いもよらなんだ」

「それは光栄ね。それともお悔やみを申し上げればよいのかしら?」

「光栄でよい。定められた運命から抜け出すこともできず、不憫な弟であった」

「そうね、運命って辛いものね」

「うまく運命から抜け出したそなたには感服しているよ」

「そう? そうね、そう言ってくれて嬉しいわ」

「あぁ」


 言葉が重くなり、無言が続いた。クラリスは軍師の心を察して黙り、軍師もまた心を整える時間が必要だった。

 やがて軍師が口を開く。この重苦しい空気の責任を取るつもりだ。


「どうせ愛しの弟君の軍が気になって来たのであろ?」

「ラ・チェンダが気にならなかったと言えば嘘になるけど本当に偶然よ。北部タルキアで剣王さまに会ってきて、その伝手で今度はこっちってわけ」

「剣王ね、まぁ噂は聞いているよ、どういう人物だ?」

「わたくしの予想通りの人物だったわ」

「面白い人物だったと?」

「嫌な人物かしら。でも協力はしてもらえるようね」


 予想や協力という言葉からは何も引き出せない。軍師も追及しないのはクラリスが明かさないのなら踏み込まないという意思表示で、ここから読み取れるのはそう気安い間柄ではないということだけ。


「それで……」

「で、そちらはどうなのかしら?」


 クラリスの猫の目のような竜眼がきらり。面の良いクラリスににじり寄られると男は心惑って恋心が沸騰してしまうものだが軍師は心穏やかに務めた。


「どうとは?」

「一当てしてきたのでしょう。得るものはあった?」

「やはりドルジアの兵は質がいい。正規兵もそうだが学生義勇兵であっても粒が揃っていた。事に彼らは皆よかった」


 軍師の視線が捕虜を撫でる。酒の席であっても軍師のまとう王者のオーラは揺るぎなく、捕虜は蛇に睨まれた蛙のようになってしまった。


「あら、彼の有名な知将イルドシャーンに褒めてもらえるなんてファリス貴女やるじゃない」

「イルドシャーンって……」

「砂の名将イルドシャーン! ジベール王太子の!?」


 思わぬ大物の名前に捕虜のバドが立ち上がる。ちなみに捕虜といっても縛られてはいない。鉤縛呪という特殊な呪詛をかけられてはいたがクラリスが解呪してしまった。


 当の軍師は捕虜どもの驚きには取り合わない。彼らは所詮は捕虜で、軍師と直言を交わす立場にないからだ。


「その名は捨てた」

「だからってジュリアス~? 新参のくせに大昔のシャピロの王の名前ってどうなの?」

「それは仕方ない。俺に見合う格の名はそうあるものではない」

「自惚れとは言えないところが貴方のステキなところよ」

「聞きなれた賛辞であってもそなたの口から出るとちがうな。少しばかり自信を持てそうだ」


「あら、自信なかったんだ~?」

「そなたの愛しのラ・チェンダではあるまいに、竜皇女殿を釣れるほどの男前であるとまでは自惚れてはおらんよ」


 きゅ~っと冷や酒をあおる軍師はそれでも多少は嬉しそうな様子だ。そう見せかけているだけかもしれないが、彼の在り方を考えれば本音なのかもしれない。

 彼は己を偽らない。不愉快ならばそう示し、機嫌が良ければそのように振る舞う。その態度と言動で下々は王者とはどのような存在かを学ぶ。誰よりも高潔で理想的な王者であろうとする彼はけっして己を偽らないのだ。


 ここでクラリスがずいっと迫る。勝負どころと読んだのだ。


「お願いがあるの。ファリスとバドを譲ってくれない?」

「ほぅ、クラリス殿のお願いとあらば聞く耳持たぬというわけにもいくまい。いったいどういった条件が出てくるのか楽しみだ」


 じつはイルドシャーンは本気でウキウキしている。

 学生混じりの敗残兵をちょろっとさらっただけでクロードのような英雄級剣士が手に入り、今度は竜皇女クラリスが食いついた。気分はわらしべ長者だ。もちろんクラリスであがりでいい。王竜に匹敵する神域の魔導師にして真竜の姫だ、これ以上の大物など太陽竜ストラくらいのものだ。

 そしてクラリスならば太陽竜との協力体制さえ築けるかもしれない。


 クラリスは世界を手に入れる王が伴侶とするべき女なのだ。


「お願い、ファリスはわたくしのお友達なの! 頂戴!」

「ならば良き条件を提示するといい」

「頂戴! ね、この通り、お願いだから!」


 圧が強い。


「……まさか無償で渡せと?」

「だめ?」


 軍師の表情が抜け落ち、宇宙猫みたいになった。

 図々しいとか浅慮とかそういう言葉ではない。この女は本気で無償で手渡せと言っている。……頭が痛くなってきた。


「ねえ~、お願いだから~、ちょこっとだけでいいから~」


 猫撫で声ですり寄ってきたクラリスが軍師の胸板でのの字を書いてる。


「……彼らの身柄はクロード・アレクシスを運用する意味でも必要だ。対価もなく渡すのは諦めてほしいのだがな」

「じゃあバドは要らないから、ね?」


 そっこーで切り捨てられたバドが愕然とする。知らん男なんてどうでもいいってのがクラリスのスタンスだ。そして第三の捕虜である近衛の隊長なんて話題にさえのぼらない。


「ならぬ」

「えー」


 クラリス様が不満そうだ。彼女はこういう女だ。自分が心から頼めば男はホイホイ言うことを聞くに決まっていると心底から信じ切っている。……実際世の男性のほとんどはホイホイ言いなりになるからすごい人ではある。今回は相手が悪かった。

 だがここでめげないのがクラリス様である。交渉能力に関しては銀河系最強を自負している。


「じゃあ殿下のお好きそうなアイテムと交換なんてどうかしら?」

「アイテムか……」


 軍師は乗り気ではない。クラリスが手に入ると思ったらアイテムだ。上げて落とされた感がある。何を出されてもこの期待を裏切られた感は拭えない。そう思っていた。

 だが相手はクラリスなのだ。交渉能力に関しては銀河系最強を自負するクラリス様なのだ。


 軍師が陥落するまでさしたる時間は掛からなかった。



◇◇◇◇◇◇



「近くまで来たらまたいつなりと顔を出すとよい」

「ええ、またお土産を持ってくればいいのね?」

「うむ」


 軍師がニコニコしながら「うむ」って言った。その両腕には抱えきれない量のアイテムがこんもり載っかっており、軍師は下賤な商人みたいにニコニコしている。それは上客へと浮かべる欲望のスマイルだ。


「またな、我が友クラリスよ!」


 別れ際もニコニコだ。あの気難しいと評判の軍師がだらしない笑顔で両手で手を振っている。いやそれ以前に屋敷の門前までお見送りに出てきているのだ。例え少年皇帝が屋敷に来たのだとしてもここまでの扱いはされないだろう。

 まぁなんだ、太陽竜ストラゆらいの武具を五つも貰えば人間だれだってあんな顔になる。


 ファリスを連れて屋敷を出た竜皇女がずんどか通りを歩いていく。砂の積もった敷きレンガの通りを歩む彼女もまた機嫌がよさそうだ。タダで貰った物の五つくらいで友達を買い戻せたのなら勝ちだ。


 大きな屋敷の立ち並ぶ裕福な通りは広々としていて、本当に尾行もついていないのでファリスはやや戸惑いの中にある。


「へいきよ、彼は一度約束したことを違えたりしないわ。彼は自分のした約束が守られないことをひどく嫌うもの」

「そう、そういう人なのね……」

「そういう人よ。敵に回すと大変だけどね」


 それは思い知ったなあってファリスが苦笑する。


 この数日の間に色々なことが起きすぎて、学友だってたくさん死んで、心はとっくに限界を超えているのに懐かしい人と再会できて……


「クラリス様、あたしは謝った方がいいんでしょうか……?」


 あの頃ファリスは子供だった。本当に辛いのは誰かなんて考えもせずに怖くて逃げ出してしまった。

 この人の葬儀に参列した時に後悔した。この人を一人にしてはいけなかったと。


「謝らなきゃいけないのはわたくしの方よ。怖い思いをさせてごめんね、突き放してごめんね、今にして思えばすごく独善的な話だけど、わたくしあなたに嫌われるのが怖かったの」


 竜皇女が振り返る。華やかに微笑むその笑顔はむかし憧れていた皇女さまのものだった。


「どこかに落ち着いたらお話をしましょう。これまであったこととこれからのこと。ドルジアを蝕む呪いのお話になるわ」

「聞かせてください。あたし、今度は逃げたりしないんで」

「勇ましくおなりね?」


 って言われたファリスが笑い出した。


「あなたは変わらなすぎです」

「そう? これでも随分変わったつもりなのよ」


 友情は朽ちない。どれだけの時が流れても思い出が美しいのなら、自分を許せるのなら友情は時を越えて互いの手を握り合う。


 子供むかしだったら許せなくても、大人になった今なら許し合える。

 時は最後には必ず死をもたらすが、時がもたらすものはそれだけではないのだ。



 なんとなく気になる方もいるでしょうがなぜかティトがアイドルやりだしたエピソードはそのうちってことで。

 偶像問題 ~いかにして彼はスカートを穿いたか~ は和解エピソードの後になります。

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― 新着の感想 ―
なんか…シェーファが復讐に燃えてる間にシェーファ以外がどんどん勝手に幸せになっていってる… 帝国滅ぼした時にはもうみんな居なくなって他所で好きに生きてそう(笑)
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