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最終章 『春のマリア』  作者: 松島 雄二郎
聖と魔のフロントライン
346/362

悪夢の森④ ファラ・イースの秘密

◆◆◆???SIDE◆◆◆ 



 ウェンドール805年3月22日。


―――その夜、生まれて初めて神なる存在を見上げた。


 そこいらの山などよりも遥かに巨大な一個の巨人であり、振るった大腕の一撃は誰の目に留まらぬほどの速度で巨大な破壊と嵐を引き起こした。

 あぁこれは神だと一目でわかった。誰がどう否定したとしても心の底から湧きあがった恐怖がくれた答えだけは否定できない。


 あれこそが神だ。

 神は恐ろしい姿をしていた。焼死体のように全身を暗黒の炎で包み、ソバージュのような縮れた頭髪はそれぞれが独立した意思を持つ竜の頭部であり、千も万も生えるそれから悪夢のようにブレスを吐き散らす。


 思念がやってくる。暴虐の突風となりて何もかもを薙ぎ払う思念の津波だ。


『なぜ私を起こした』


 防ぐ手立てのない思念の津波を浴びた者どもが昏倒していく。どうにかレジストできた者どもでさえ頭蓋を割られたような痛みに呻いている。


『私はただ永遠の夢を見ていたかっただけなのに……』

(知るか)


 大悪魔討伐のために集まった超戦士たちが苦しむ中で、腕を組んだまま超然と立つ彼女は呪いのごとき神の思念につばを吐き捨てる。


(夢で満足していたなら起きるな。私達に迷惑をかけるな。何が狂愛の女神よ、こんなくだらない奴の加護のせいで苦しんできたなんてほんとサイテー)


 彼女が抱いたのは恐怖ではない。彼女が抱いた激情は―――


『どうして……?』

(女々しいのよ! 愛の女神がいつまでも失恋を引きずってんじゃないわよ。私はああはならない、私は―――)


 燃え立つような憤怒だ。


 世界の終わり、誰もが予感したのはそんな飾り気もない言葉だ。

 だが彼女だけはあの哀れな女を憐れんでやった。あぁ頬を伝うこの涙はなんなのだろうと怒りながら……



◆◆◆ファラSIDE◆◆◆ 



―――ファラ・イースには秘密がある。


 それはファラ・イースという超人的な存在が持つ特殊な秘密の一つでしかなかったが、不思議と言えば不思議なので、彼女にとっては長年指先に刺さったまま抜けないトゲのような秘密だ。


 秘密にした理由はささいなものだ。彼女のような異質な才能の持ち主によくあることだが異質さの自覚からくる周囲への特別な協調性の発露、まぁ簡単に言ってしまえば周りとは違う変な子だと思われたくないという想いが強かったのだ。

 世界で最も尊き王家の遠戚に生まれ、世界一の財閥の当主直系であり、財界の王レグルス・イースから最も寵愛を受けている、生来保有する超越の位階の莫大な魔法力を持つ容姿端麗な才女だ。誰もが彼女を特別な存在だと信じ込んでいた。彼女自身の願いとは裏腹に彼女自身さえも自らを特別に変な子供だと自認していた。

 だから彼女は秘密にした。彼女は普通の女の子でいたかったからだ。それがどんなに無理のある願いであったとしても、彼女自身でさえ自らを普通とは思っていなくても、彼女はあくまでも普通の子供として扱われたかったゆえの秘密。


―――ファラ・イースは幼い頃から妙な既視感に戸惑ってきた。


 初めて来た場所なのに妙に懐かしいと感じたりとか見たことがあるような気がしたりとか、そんな感じ方をしていた。

 時折夢に見る天空に佇む苔生した孤城。傷痕のように常に溶岩を垂れ流す破裂した火山。永遠に夜明けのままで時間の止まった凍りついた海。そしていつも傍にいる不機嫌そうな顔をした不思議な案内役の男。どれもこれも不思議なものばかりなのに起きた後は胸が張り裂けそうなくらい高鳴っていた。


 もしかしたら自分は変な子なのかもしれない。そう思って相談したら曾祖母アストライアはこう言った。


『それはもしかしたら前の貴女の記憶かもしれないわね』

『前の私?』

『私も貴女も薔薇も木も、それこそ魔物だってそうよ、すべての生命が持つ魂の来歴の話よ』


 曾祖母のしてくれた話は今にして思えば惑星生命体説をロマンチックに語ったものであった。小さな私にはそれはとても遠大な話で、世界とは何と大きく不思議に満ちているのだろうとワクワクしたものだ。


『傷つき倒れた肉体を離れた魂は母なる星へと帰るの。星のゆりかごに抱かれて再び立ち上がるちからを手にする日まで大いなる川で眠りにつくの。私達は遥かな昔からずっとこの星を旅してきた誰かだったのよ』


 曾祖母はロマンチストだ。窮屈な王宮を逃げ出して冒険者になり、世界一の大魔導の称号まで得た生粋の冒険者なのだ。幼い私はいつだって曾祖母の語る美しい世界の話に夢中になっていた。


 まぁそんな時は決まって曾祖父が水を差す。


『……そんな大きな話にせんでも、ただのデジャビュじゃろ』

『ねえレグルス、貴方には浪漫が足りないの。冒険者の王のくせに恥ずかしくないの?』


『いい歳こいて浪漫ばかり追いかけておるジジイの方が嫌じゃろ』

『今はファラの話をしてるの。この子には優秀な冒険者になる資質があるわ。だってこの子の心は未だ見ぬ風景を求めてワクワクしているんですもの』

『ワシは冒険者になんぞなってほしくないんじゃが……』


 現実主義者の曾祖父レグルスとロマンチストの曾祖母アストライアは性格面はどうあれ理想的なパートナーのようだ。


 答えは得たし、それで納得もした。冒険を求める心が作り出した妄想なのかもしれないし、魂にこびりついた遥かな昔の記憶なのかもしれない。

 どちらであってもロマンチックでいいことだ。そう納得した。

 納得は納得だ。答えではないが、答えに近づいたという実感を言う。


―――ファラ・イースには秘密がある。


 誰の知識に照らしてもどんな考察を経ても解けない不思議な秘密は、鏡の前に立てば現れる。大きな姿見の向こうで微笑む自分とよく似た、誰にも見えない女の子のことだ。

 暗黒の霧のように宙を揺蕩う長い黒髪と、自分とよく似た顔立ちでころころとよく笑う彼女へと向けて手を差し出す。

 同じく手を差し出してくれた彼女と鏡を挟んで手を合わせる。


 彼女とはゲームをしている。最初に彼女が現れた時に……


『あなたは誰?』

『さあね。私は誰なんでしょうね』


 なんてやり取りがあって、それ以来彼女の名前を当てるクイズをしている。

 イマジナリーフレンドやドッペルゲンガー、これまでも幾つかの名称を答えてきたがどれも彼女の正体ではないらしい。そういう答えには「あなたってつまらない大人みたいなことしか言えないのね」なんて痛烈な返しもくるので気の抜けないクイズバトルだ。


「ねえ、あなたの正体ってもしかして前の私?」

「はずれよ」


 自分とそっくりの女の子は何だか嫌そうな顔で「べー」ってやってる。


「付着物や残りカス扱いなんて失礼してしまうわ。こんなに可愛い私をねえ?」


 鏡の向こうにいる暗黒の炎のような長い髪の少女は、ファラ・イースにとって指先に刺さったまま抜けないトゲのような秘密として長年居座り続けた。

 


◆◆◆ファラSIDE◆◆◆ 



 執務室はいつの間にか暗くなり、書類を踊る文字ばかりを追っていた視線をあげてようやく日が暮れたのだと気づいた。


 最近はずっとこうだ。あがってくる報告書に目を通しているだけで一日が終わる。私の人生ってこんなんだっけ?ってずっと思っている。


 イース財団を立て直す方針で幾つもの手を打ってきた。でも悉くに失敗したから状況は好転しない。……まったく忌々しいことに会議室で決めた話が漏れているとしか思えない。


 正直に言ってイース家門内部の裏切り者なんて両手で数えても足りないくらい居る。商売敵はその数千倍はいるし、商会の中には切り札のように遠見の魔眼持ちの奴隷を抱え込んでいるところもある。内偵や調査はさせているがキリがない。一人や二人の敵を葬ったところでイースの破滅を望む者は数えきれないほどいるのだ。

 恨みつらみから発生した無数の手に引っ張られて今にも沈没しそうな船。それがイース財団の現状だ。


「イースの凋落を契機に新興の商会が台頭してきたのは理解できる。でも新興の商会がイースと同等の情報網を有しているのはどう考えてもおかしいのよね……」


 なによりどう考えても納得がいかない。何か超常の魔の手によるものとしか思えない事案もある。

 ツキに見放されたなんて軽く表現してもいいが、それで潔く沈没してやれるほどファラ・イースは諦めのよい人間ではない。

 とはいえ打つ手が尽きたのもたしかだ。


「イースの才女なんて持て囃されていた頃が懐かしいわね」


 自分には輝かしい未来が待っているのだと信じていた。

 まさか暗い部屋で書類と睨めっこをしている人生になるなんて欠片も思わなかった。自分は偉大なる曾祖父の築き上げた財団を食いつぶしたダメな二代目でしかないのだ。


「諦めてしまえばいいのよ」

「ええ、そうね」


 不貞腐れて机に肘をついたままブー垂れていたけど、柔らかい革張りの椅子から立ち上がり、姿見の前に移動する。

 鏡の向こうには自分とは違う女がいる。自分とよく似た、でも自分とは違う女だ。


 もうこいつの名前は知っている。クイズは随分と前に終わらせて、いまは共通する願いを抱く同志わたしへと変わった。


 鏡の中の私が言う。早く本懐を遂げに行こうと、彼を手に入れようと急かす。


「元々乗り気ではなかったのでしょう? もう義理は果たしたと思うわよ」

「そうかもね」


 まるで怠惰を司る悪魔の囁きね、なんて思いながら軽く賛同しておく。


「そもそも凋落の原因はおじいさまじゃないの。まだまだお元気なのだし責任を取ってもらえばいいじゃない」

「それもそうね」


 他人事だと思って気楽に言ってくれる、とは思いつつもやはり抗いがたい魅力のある提案だ。何しろ同一存在からの提案だ。それが私の意に沿わないはずがない。

 鏡の中の私は本能に従順なだけだ。愛されたいと焦がれ続けているだけで、それはファラ・イースの望みと何ら反目しない。


 ただ私が躊躇っているのはささいなプライドと財団総帥の地位が理由であり、財団がこんな経営状況の時に総帥が仕事を放り出して男のところに通うのはどーなんだ?っていうのと、惚れた男に落ちぶれた自分を見てほしくないっていう二点だけだ。


 鏡の中の私にとってはそんなのはどうでもいいらしい、こっち側と鏡の向こうの意見違いはそれだけだ。


「ねえ私、私達の願いは一致している、そうでしょ?」

「忌々しいことにね」


 鏡の中の大悪魔ディアンマがお綺麗に微笑んだ。まるで恋する乙女のようなその表情に、私はなんだか変な失恋女にとりつかれてしまったものだと鏡にパンチをした。もちろん割れない程度に手加減して。ここまで大きな鏡ってけっこう高いのよね。



◇◇◇ファラSIDE◇◇◇



 ―――森を歩いていると古い記憶が目蓋を掠める。


 誰かの夢に紛れ込んでしまったような現実味のない森歩きの夢。身勝手にさっさと前を歩いていく美しい森人。私は彼に遅れまいと足を早めるけど慣れない森歩きに手間取って歩みは遅々として進まない。そして彼はさっさと歩いていってしまう。

 身勝手だ。本当に身勝手な人だ。……でも本当は優しい人なのかもしれない。


 時折立ち止まっては振り返り、子供の心配をするみたいに遠くからこっちを見つめる彼のむすっとした表情を見ているとなぜか胸が高鳴った。


「あなたは誰?」


 口に出したはずの声は声にもならず消え去った。


「ねえ、あなたは誰なの?」


 声は声にならず、彼だって何も言ってはくれない。なのに……


 じぃっとこっちを見ているだけの彼を見ているだけで私の胸は張り裂けそうなくらい高鳴り続けた。

 幼い頃に夢の中にだけ現れる人に恋をした。


 初恋の人。でも名前も知らないし、本当に会ったことなんてない夢の中の人。


 それでもこれはファラ・イースにとっての初恋の記憶であった。



◇◇◇ファラSIDE◇◇◇



 豪雨の森は暗黒のように暗く、そこかしこから生き物の腐った香りがする。

 アーティファクトによって再現された森を、彼に手を引かれて歩いていく。天界渡りステルスコートによる物質透過能力は一切の物理的干渉を除外する。


 イース海運はリリウス・マクローエンの情報を常に収集してきた。その情報の中には彼が持つ特級の呪具の不調も記されており、客観的な事実として昨年の初夏以降リリウスが透明化能力を用いた様子はなく、制御コアであるカトリーエイル・ルーデットの造反によって能力を喪失したと結論づけていた。

 だが彼は使えなくなったはずの能力を使っている。だから尋ねてみる。


「ねえ、そのコートってまだ使えたの?」

「能力の秘匿は初歩の初歩だぜ」


 返答はこれだ。イースのみならずガレリアまで欺いているのだからまったく頼もしい男だ。普段から見せている弱気でさえブラフに思えてしまう。


「俺が今現在どれだけの能力を有しているかを当てられたら世界のすべてをあげてもいい。そんな奴はアシェラとステ子くらいのもので、だが俺はアシェラにさえ一つ二つは隠しているよ」

「それってステルスコートの造反だけは本気で想定外ってことよね?」

「勝率が消え失せる程度にはな」


 おそらく……いや、彼は絶対的な信頼をカトリーエイルに寄せていた。絶対に裏切らないと信じ、だから己のすべてを晒し、それと同じくらいの傲慢さで信頼を返してくれるものだと信じ切っていた。

 己の手を引いてくれる母や姉に全幅の信頼を寄せるようなものだ。……愚かしいとは笑うまい。


 彼の生い立ちを考えれば年上の女性とは正しくそういう存在であり、年上の女性へは自然とリザレアの面影を重ねてしまう。それは彼の心に刻み込まれた生存戦略なのだ。


 だから彼女の裏切りによって計画のすべてが破綻しかけている。

 そしてアシェラ神はカトリーエイルの気まぐれな性質と二つ心を見抜いていて彼に計画の全貌を教えなかった。計画が潰えるからだ。リリウスへの説得など無駄だからだ。

 彼女が裏切るかもしれないと忠告したところでそんなわけがないと怒鳴り返されるに決まっている。だから計画を隠匿し、だからまだ希望が残っていた。


 まったく恐るべきは英知の女神だ。すでに指し手の地位から引きずり降ろされた虜囚の身でありながら盤上を完璧にコントロールしている。……していると思い込んでいる。


 英知の女神は愚かな失策を犯した。それはファラ・イースをカトリーエイルの代役に選んだことだ。

 カトリーエイルを失い、不安定になった彼の心にクスリを処方するような気軽さで私と接触し、計画を明かしたことだ。


(あぁ侮ってくれて嬉しいわ。私のことを何のちからもない小娘だと侮っているから頼ってくれた、本当に嬉しい誤算よ)


 鏡の中の私の正体に気づいた日から鑑定のちからを恐れていた。

 だが恐れは杞憂であり、英知の女神は私に気づかなかった。


 勝利は目前だ。彼を鏡に閉じ込めてしまえば永遠に二人きりになれる―――


 という瞬間にリリウスが振り返る。振り返った瞬間の彼の顔形を見た瞬間に感じたのは懐かしい既視感だ。


「ファラ、へいき?」


 いつか見た過去ゆめの中でこんなふうに振り返った彼は何も言ってはくれなかった。それもそのはず彼は私を厭わしがっていた。

 だからこれは私が勝ち得た成果。かつては埋められなかった彼との距離が今や無に等しい。


「あなたはいつも私の心配をしてくれるのね」

「そんなの当たり前だろ。愛してるよファラ」


 彼は私の物だ。この微笑みも、手のぬくもりも、鏡の中の私にだって渡してやらない、私だけのものだ。

 彼の悪夢を終わらせてあげよう。彼を煩わせる者のいない世界へと行こう。すべてを投げ出してしまえば幸福が訪れる。


 二人きりの世界を願う瞬間に今度は鏡のイヤリングから向こうの私の声が届く。


『あの子、気づいているわよ?』

(あの子?)


 鏡の視界を映し読めばナシェカが背後に回っている。

 まったく気づけなかった。ディアンマからの忠告がなければ完全に見落としていた。


『彼を守ろうとしているのね。可愛いわね』


(可愛いかしら? 邪魔なんだけど……)

『可愛いわよ、心なき土くれの分際で愛を学ぼうとしている。ガレリアの機械人形とは思えない勤勉さよ』


(…とっても邪魔なんだけど。それに機械なら勤勉なのは当然よ)

『いいえ、あいつらは怠惰そのものよ。愛を知りたいとほざきながら一向に理解しようとしない怠惰なガレリアの機械人形に勤勉なんて失笑ものよ』


 狂う愛の女神が愛を説くのも失笑ものだ、と言えば怒り出しそうなのでやめておきましょう。


『あの子に免じて今はやめておきましょう』

(は? なんでよ)


『ここで負けたら取り返しがつかないから。あの子相当に手強いわよ、アル・クライシェと同質のちからを二つ持ってる』

(二つ?)


『アシェラが気づけないのも当然よ、あの子のちからは観測できるものにしか及ばないもの。これに気づくためにはもっと大きな視座が必要よ。これは万物を構成する創世神のちからよ』

(……なんで貴女にはわかったのよ)


『それは私も似たような存在だからよ。とにかく彼女は壊れても抵抗する気よ、別の機会を待ちましょ』

(頼りにならない女神ね)


『あら、私は面がいいだけしか取り柄のない女神だって知ってるはずでしょ?』

(……そういやあの無様な負け方は見てたわ)


『そうそう、バトル面ではあんまり頼りにしないでね』

(あんたには女神のプライドとかないの?)

『無いわ』


 私はここまでのどや顔を見たことがない。さらに言えばここまで情けない女神の発言も初めてだ。


『だって今の私はか弱い乙女ですもの』


 鏡の中の私は恥を知らない。恥知らずだ。こいつの提案が率直なのは何も捨てるものがないからなのかもしれない。完全に無敵の人だ。


 仕方ないので存在感を消そうとしているナシェカをからかって遊ぶことにした。

 常にバックスタブを決める位置取りを続けていた彼女も話題の中心になってしまえば恐れるに足りないし、そもそも決行する気がないのに彼女の奇襲可能性だけを削ぎ続けるのだ。向こうは気が気じゃないはずだ。


 子羊リリウスは未だこの手の内にある。奪い去る時は今ではなくても構わない。

 時は私の味方をする。

 TIPS:ナシェカ・アルザインの隠れた抵抗によってBAD-END12『共に悪夢の世界へ』を回避しました。

 何らかの形で契約を行わない限りファラ・イースと二人きりになるとBAD-END13『大悪魔の虜』が確率発動します。一時的な措置としてこの確率は愛を囁くごとに大幅に減少します。

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