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最終章 『春のマリア』  作者: 松島 雄二郎
いかさまカジノ激闘編
30/362

神器を手に入れろ!③

「アングリフ。フォーカインドカインド。224点」

「アングリフ。スリーカインド&ペア。ブリッジ申請、チャレンジ成功、スリータック成立。149点。ゲームセット」


 マリアが呆然としてる。ナシェカの仇を取る!って宣言しておいてあっさり2ゲームで負けた。

 何もできなかった。マリアがやったのは通算五回カードを引いて捨てただけだ。


「この程度か。現時点ではこんなものだろうな……」

「もう一回、ダメ?」

「いいぞ」


 なんと神器チャレンジはリトライ可能らしい。


「再チャレンジは一勝負50テンペルで受けよう」

「おかね取るんだ……」

「ここはカジノでキミは景品を欲する客だ。当然ではないだろうか」


 ナシェカが財布を叩きつける!


「60テンペルと350テンペル相当の宝石がある。これで八回チャレンジしていいよね?」

「カジノとしてのスタンスを持ち出した以上公平でなくてはならない。受けよう。マリアは?」

「やる」

「そうでなくては。試練の高みを知りちからを願う糧とするがいい」

(こいつすごい上からくるよね……)

(ぎゃふんと言わせないと帰れないよねー)


 マリアとナシェカがアイコンタクト。

 神器も欲しいがこいつに吠え面かかせてやらないと気が済まない。


 そして始まる再チャレンジ。


「ナシェカ、隠しているカードを使った時点で反則と看做す」

「くそっ、なんでバレたし……」


 まずナシェカが四連戦でボコられた。

 マリアも何の見せ場もないくらい簡単に四連敗した。


 続いてナシェカが華麗に四連敗。所持金を使い果たしてぐぬぬしてる。


「ラスト一回、勝負」

「学費に手を出すのは悪手だと思うがな。あぁ無論キミの判断を制止する意図のものではない。進むべきは正しい道ではない、キミの選んだ未知だけが時を進める」

「何言ってるのかわかんないけどさ、あんたクドイよ」


 ガイゼリックがカードを切り、マリアが山札の上を掴んで下に送るカードシャッフルを行う。

 あとはカードを配るだけだ。それでゲームが始まる。だがガイゼリックの手が止まる。


「ここぞという時に引き寄せたか。異常なまでの引き寄せ、黄金律の導く理不尽なまでの幸運。これがキミのちからか?」

「?」

「だが足りない。足りないよマリア……」


 ガイゼリックが手札を配る。マリアが手札を開こうとする。

 だがガイゼリックは己の手札を開けもせずに30枚のコインを置く。


「サレンダー。降参する」

「降参?」

「本来ディーラー側にサレンダーの権利はないが対マッチ・ルールに助けられたな。降参には30枚のペナルティーが発生する。これを持っていけ」


 ガイゼリックがコインの一山をキーパーで押してきた。

 何かに気づいたナシェカが慌ててマリアの手札をめくる。その瞬間に変わった彼女の表情は紛れもない激怒だ。


 マリアの手札は7のセブンフォール。たった一つの条件を満たすことで配られた時点で勝利の約束された手札だ。ディーラーであるガイゼリックが手札を引き捨て、マリアに番が回ってくるという条件さえ満たされたなら勝利していたはずだ。


「イカサマ!」

「疑義があるのならカードはそちらで用意してもいい。場が悪いというのなら俺はどこにでも往こう」

「ふざけんな!」

「逆にどんなイカサマだと思う? キミの目を誤魔化せるイカサマなんてあるのか?」


「……それって開き直りだよね?」

「どう取ってもらっても構わん。要望があれば極力その条件を呑むが……」

「呑むが、何よ?」

「ナシェカ、イカサマを用いても俺は倒せんぞ」

「……」


 そっちがイカサマならこっちもやってやろうじゃん。そういう目論見を看破された瞬間にナシェカが感じたのは恐怖ではなく確信だ。時空の支配者や予言者というワードだけでは信じるに値しなかったがもはや認めるしかない。

 未来予知ホルダー。それも自由自在に見たいものを視る超越者だ。


 過去に存在した未来予知ホルダーの行いは伝記伝説として広まっているがここまで視えるなど聞いたこともない。伝説に名高いアルスの予知姫でさえ死の瞬間を予言できるだけだったというのに……


「そういうこと。勝てるわけないじゃん」

「俺にさえ勝てぬようでは困る。勝ってもらわねばならんのだ」

「なによそれ……」

「ふんっ、王を導くのは賢者キングメイカーの役割であろうが」


「……ナシェカちゃんが王に?」

「だからキミではないと言っておろうが」

「じゃあ」


 二人してマリアを見る。

 マリアはジュースを飲んでいた。いきなり白熱しだした二人の言い合いを適当に聞き流してストローでジュースを飲んでいて、視線を向けられたもんだから……


「へ? なになに?」


 そんなマリアを指さし、一言。


「これが?」

「うむ、大層な大物ではないか」


 古い格言にこんなものがある。竜は鱗を叩く刃を気にせず眠る。

 大物は細かいことを気にしない、だからどーんと構えているのが良き為政者だという言葉だ。そういう観点で言えば大物なマリアはこの後カード勝負にふつうに負けた。



◇◇◇◇◇◇



「朝日が眩しい……」


 マリア様の婚活をお手伝いせねばと決意した俺ことリリウス・マクローエンはその後すぐにやってきたフェイと一緒に迷宮最深部の邪神狩りに連行された。それが六日前の出来事だ。

 不眠不休で六日間戦い続けてさっき解放されたぜ……


「学生生活はどこへ……」

「知るか。お前が始めたことだろ」

「そうだけど」

「また何かあれば連絡する」


 フェイがクールに去っていく。俺と一緒に六日間丸々最前列で戦ってたくせになんだあの余力。あいつの体力マジ半端ねえ。


 心もち猫背になったゾンビ歩きで男子寮へと向かうと寮外のサウナ室の前でウェルキンとベル君が冷水を浴びている。なんて健康的な姿なんだ。体育会系男子の見本かよ。


「なんだあ、アンデッドみたいな顔色になってんな」

「ははは……ついさっきまで激戦をな」

「あー、女遊びの隠語じゃなさそうだな。モンスの大物か?」

「おう、クランメンバー総出で六日六晩の大激戦よ」


 ウェルキン君の眼差しに真面目なものが宿る。


「おまえって不真面目そうに見えて勤勉なやつだよな」

「根っこは真面目くんなんでな」


 二人がクソ面白い冗談を聞いたみたいに笑い出した。真っ赤に染めたモヒカン頭の高校一年生が真面目なわけねーだろって感じだな。


 サウナ室の暖気はすでに出来ている。むわっと熱気に満ちたサウナに入りながら色々しゃべってる。


「そういやいつだったかのグループ交際はどうなった?」

「聞かないでくれ」

「いや聞いてくれよ。こいつ僕に何も言わずに頭数に数えてたんだよ」


 どうやらプロジェクト・グループ交際はウェルキンの見切り発車だったらしい。


「そうそうそこが違和感だったんだ。ベル君の好きな子ってルリアなんちゃらだったよなーって。……なんだその顔?」

「それこそ聞いてやるな。先日ルリア・ハストラの熱愛報道が流れてな……」

「マジかよ」

「しかも二年の先輩でけっこう格好いい人だったんだ。家柄もかなり良くてなあ」

「また勝ち目がなさそうな……」


「一昨日だったかはお前抜きでベルの失恋おめでとう元気出せよパーティーやったんだぜ」

「慰めてるのか心を抉ってるのかはっきりしない会だな」

「まっ、きつい時は笑って過ごして気分を切り替えたほうがいいからよ」


 入学から二回フラレてる男の発言だ。経験に基づいた説得力がある。

 ベル君が乾いた笑みを浮かべている。傷心ながらに無理を押してる痛々しい笑みなのが悲しみを誘うぜ。


「我が身に起きて思うのはウェルキンの心の強さだよ……」

「いやそっちの方がダメージでかいと思うがよ」

「だろうよ、ベル君は泣いていい」


 フラレ続けてもウェルキンが耐えられている理由はナシェカが何者とも付き合っていないからだ。好きな子が今頃誰かに抱かれてるなんて想像してみろ。病むぞ。高一のメンタルで耐えきれるダメージじゃねえぞ。


 相手は上級生だ。もうすでに清い関係ではあるまい。きっと阿片窟みたいな怪しげなスポットに連れ込まれてこの世の悦楽の全てを教え込まれているにちがいない。

 俺とおんなじ眼差しをしたウェルキンと共に失恋男の肩を叩く。


「泣け、今だけは泣いていい」

「ベル元気を出せよ」

「何を想像してそんな対応になったの!? ねえ何を!?」


「「……」」

「沈痛な面持ちで伏せるのはやめて!?」


 サウナで汗を流しているとドアが開いて……

 腹立たしい顔つきをしたプラチナブロンドの美形が入ってきた。互いに顔を見た瞬間に舌打ちしてしまった。

 隣に座るな! 出ていけ!


「なぜここにいる?」

「入学したからに決まってるだろうが。てめえも面を見なかったが?」

「私も忙しい身でな。春を迎える前に片づけねばならんゴミが多すぎる」


 こいつ正気か?


「誰が聞いてるかもしれん場所でその発言はまずいんじゃないか? まさか革命闘士だと公言しているのか?」


 ウェルキンとベルが驚愕して尻を浮かせる。シェーファが殺る気ならこいつらくらい指を動かすくらいの気軽さでバラバラ死体に変えられるのは事実で、俺も守ってやるつもりはない。……こいつらを守る一瞬が俺の隙になるからだ。

 逆にこいつらを狙ってくれればうれしいね。その一瞬でこいつを殺せる。


 だがシェーファは、帝国第二皇子クリストファーはここで殺り合う気はないと肩をすくめてみせた。


「まさか。別荘の備品の話だよ、年明けは毎年そこで過ごすんだ」

「へっ、そうかい。そんな別荘があったとは知らんかったぜ。……変な疑いをかけて悪かったな」

「ああ。帝国革命義勇軍は我らドルジア皇族の統治を揺るがす悪質な害獣だ。奴らに与する者は例え帝国皇族といえど裁かれねばならないからな」


 司法を恐れぬ怪物がこのセリフだ。面白いじゃねえか。

 信用に値するものが出てくるかはわからんが一応情報収集くらいしておくか。


「まだ動くつもりはないんだな?」

「ああ」


 しばし間を置いてから銀の狼がこう返答した。

 貴族社会に復帰してようやくそっちの勘を取り戻しつつあるところに、ド直球の剛速球ばかり放り込むやつが現れたんだ。何を企んでるか深読みしてるんだろ。


「どうして仕掛けてこない。私を追ってきたのならどうして?」

「俺も色々と事情がある。追ってきただあ? 馬鹿こくんじゃねえ、俺は忙しいんだよ、お前ばっかに構ってられるか」

「問題を貯め込むのがキミの悪い癖だといつだったか忠告したと思うがな」

「優先度で処理している。お前なんて後回しにした果ての果てにあるちっぽけな問題なんだよ」


「ならバルバネスを消したのは……」

「あのクソ強アルトドラゴンを誰が消せるってんだよ。アホ言ってないで王宮に出入りする女中に行方不明者がいないかを洗え」

「なぜだ」

「駆け落ちした可能性が高い」


 魔竜皇子がものすごい顔になった後で、ものすごい真剣な顔つきで考え込みだした。

 どうやら心当たりがあるようだ。


「どんな子だ?」

「ソバカスがあって可愛らしい雰囲気の子だったな。いかにも温室育ちという」

「ふんふん。年は?」

「私らとさほど変わるまい。もう少し下かもしれない」

「ロリコンかよ!」

「否定はしていたがな。掃除の間だけ会話に付き合ってると」

「照れ隠しだろ。俺がしゃべりかけてもけっこうな確率で無視するお人だぞ、会話に応じていたというだけで好意が確定している」

「たしかに……」


 思い返してみても納得できるようだ。こりゃ駆け落ちだな。バルバネスさんには女と世界なら女を選びそうな雰囲気がある。


 そういえばこいつとマリア様はどうなっているんだ? ほぼ学院にはいなかったし接点はまだ無いと思うが気になるところだ。


「おまえ最近どうよ?」

「国内掌握のために情報網を作っている。拠点と協力者を増やし―――」

「そうじゃない。学院で仲良くなった子はいるか?」


「……なぜそんなのを知りたがる?」

「いるのか、いないのか?」

「だからなぜだ?」

「重要なんだよ!」

「なっ、なんでだ!? さては人質に使う気だな!」

「しねーよ」

「じゃあ何で知りたがる!」


 なんでって相手次第じゃ俺の立ち回りも変わるんだよ。マリア様にはお前以外を選んでほしいんだよ。


「俺は質問に正直に答えたぞ。おまえも正直に明かせ」

「いるわけがない。キミも私の性根は知っているはずだろ。色恋なんぞにうつつを抜かす暇はない」

「おう、そんならいいんだ」

「いいのか。そうか……」


 シェーファが首をひねりながらサウナから出ていく。今の会話に何の意味があったのか不思議そうにしつつも王宮に戻ってバルバネスの行方を捜すつもりなんだろ。

 俺も一番聞きたいことが聞けたし有意義な時間だった。……今まで黙って空気になっていたウェルキンとベルがじーっとこっちを見てるな。


「なあリリウス。おまえクリストファー皇子と……」

「今の会話な、忘れたほうが長生きできるぞ」

「それはどういう……」

「あいつは怖い男だって忠告だ。貴族の二人くらい何の証拠もなく消せるくらいのな」


 忠告に意味があるのかは謎だ。この場に同席したというだけで消される理由には十分だし、あいつは躊躇ったりしない。


 青ざめたまま頷く二人の未来に合掌する。なむなむ。



◇◇◇◇◇◇



 サウナ後はメシ食って眠った。すっきり目覚めたのが放課後のチャイムが鳴り響く頃で俺はまた授業に出られなかったのだと知った。……進級が心配だ。先生がたにはおかねを積むしかない。

 終業後の生徒が学生寮を目指して坂道をのぼってくる。俺は逆に坂道を下っていく。すると知ってる女子二人と出会った。

 すっきりした知的なエリンとアクセジャラジャラ付けたギャルのリジーだ。身長差が姉と妹くらいあるな。つかリジーはどう見ても高一に見えないんだが……


「よう!」

「おー、リリウスじゃん! ……なんでこっちから来るんだ、講堂に忘れものか?」

「授業は寝過ごしちまってな」


 瞬時にナイショ話を始める二人。

 馬鹿はよせ。見た目通りもよせ。そのうち退学になりそうもやめろ。それは本当になりそうで怖いんだよ。


「あれ、マリア様は?」

「マリアなら授業終わってすぐに出てったぞ」


 おー、勤勉なもんだ。

 ゲーム通りなら学院が発行するクエストを受けて所持金を増やしたり教官の訓練を受けたりと色々あるんだよな。いやさすが聖女様だ。


 そう思っていたがどうも感心できない感じらしい。二人の態度がそう言ってる。


「元はと言えばリリウス君のせいだぞ」

「あー、たしかにきっかけはそうだなー」


 何の話だろ?


「え、なにが?」

「マリアとナシェカなー、あいつら最近カジノに嵌ってんだよ」


 は?


「昨日なんて授業も出ずに金策してたしさあ。悪い遊び教えるからー」


 俺はフリーズした。シンジラレナイ話を聞いたショックでフリーズした。

 うちの国の聖女様がカジノ狂いになってしまった。え、俺のせい?



◇◇◇◇◇◇



 クソほど貴重なリバイブエナジーを使った超広域探査魔法でマリア様の位置を探ると帝都郊外の北の森に反応あり。カジノじゃなくて森? なんで森?


 急行すると……


「マリアぁああッ、そいつ逃がすな、魔石持ってる!」

「飛翔・加速・オーラ最大出力! いっけえええ!」


 でけえ蛇へと剣をぶん投げて串刺しにしているところだった。

 大口径の砲撃に撃ち貫かれたように頭部と胴体がちぎれて分かれた蛇の頭部へとナシェカが迫り、一刀で頭部を叩き割って内部から魔石を引き抜く。


「ナシェカ!」

「次あっちね! 大物の反応あるよ!」


 戦闘終了から一息もつくことなく元気娘どもが森の奥へと走っていく。すれちがいざまに俺の肩を叩いてった。


「サボリ魔じゃん!」

「よっ、おひさ!」

 って言い残して走ってった。ちょっと状況ワカンナイです。


 追いかけるか!


「何してんの?」

「金策!」


 森の奥から六頭の森狼がやってくる。春先の森狼は暗い緑色の毛並みをしていて、腹が減ってそうな顔つきだ。

 跳躍して襲ってきた六頭をマリア様が一瞬で切り伏せて一瞬の躊躇もなく奥へと駆けていく。五歩遅れた位置を走っていたナシェカが死体の腹を切り裂いて素早く魔石を抜き取ってマリア様を追いかける。その間に一歩だって立ち止まっちゃいない。役割分担というかコンビネーションのレベルが高すぎる。


 あ、ちょっと強そうなアンデッドソルジャーだ。


「アイアンハート流奥義、ドリッド・スローぉおおお!」


 アンデッドソルジャーが爆散した。そりゃアンデッドには生命力が有効とはいえあの鈍器でよく倒せるなあ。


 ジョギング気分でついていく。この二人が強すぎる。状況判断は的確だし動きに無駄はないし……つか野生の魔物から魔石を採集するのなんて解体途中に偶然見つけるもんだぜ。一瞬で発見して魔石だけ掠めとるなんて神業認定余裕だろ。まぁ守銭奴ドラゴンにはデフォルトで付いてる機能だったが。

 魔物の駆除速度が速すぎる。森中から魔物を狩りつくす気かと思うくらい進撃するマリア様がピタリと停止する。何か鼻をクンクンしてる。犬かな?


「ここだよね!?」

「ここだね、マリアやるぅ!」


 地面に空いた大きな穴に向けて二人して火炎魔法をぶち込み始めた。被さってた地面が吹き飛ぶ威力だ。加算詠唱を噛ませて威力を増幅くらいは普通にやるんだな。

 火炎魔法を八連発してもうもうと火の手のあがる大穴へとダウジングストーンみたいなものを放り込み、でけえ蛇の死体を一本釣り!


「討伐対象のクアッドスネーク達成!」

「よっしゃ、次はゴブリンいこう!」


 なにこの狂戦士ども。討伐クエストの掛け持ちなんて高一の女子のすることじゃねーぞ。

 時刻はもうすっかり夕方だ。夜間の蛇は手強さが跳ね上がるので日が暮れる前に仕留めたかー。


 狩猟に明け暮れた二人がようやく一息ついたのが午後の八時だ。カジノ遊びに嵌って肉体労働で金策するとか不健康なのか健康的なのかわからないぜ。


「じゃあ町に戻ろっか!」

「ようやく終了か。お疲れ様」

 って労うと変な顔されたわ。


「何言ってんの? まだ墓地のアンデッド退治が残ってるから」

「そうそう、今夜のメインはそっちなんだ」

「墓地のアンデッドはやめたほうがいいと思うんだが……」

「報酬がいいもん」

「そうそう、なんと金貨50枚なんだー!」


 デス教徒という可能性が確定した瞬間である。

 いや、やはりあの子がいるわけだ。


「生き残れるか? 時期的にはまだ早い気もするが勝手に行かれるより俺がフォローしたほうが……」

「何ブツブツ言ってんの?」

「ほらいくぞー」


 大量の魔物を素材を担いだバサカ女子と一緒に墓地を目指して歩いてく。


 墓地には百鬼夜行で遊んでる幼女がいる。やり込み要素に分類されるイベントキャラで攻略難度は極上。クリア特典が使える二週目でのチャレンジが推奨されるほどだ。

 最大HP200くらいの時に五桁ダメージ食らって「!?」ってなったプレイヤーも多いだろう。俺もそうだった。一周目でクリアしようと思えばそれこそチャレンジ動画になるほどの強敵だ。

 そうだな、簡単に表現するとシェーファ込みでも負ける可能性の高い強ボスと言えばわかりやすいかもしれない。


「この先生きのこれるか、それが問題だ……」

「なんでこいつ不吉なこと言ってんの?」

「エリンと一緒でそういうお年頃なんでしょ」


 事実なんだよなあ……

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― 新着の感想 ―
[一言] ありがとございます日々の糧です
[一言] ついに追い付いてしまった これからは更新を楽しみに待ちます
2022/11/21 22:37 退会済み
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