男の勝負 ~最高の親孝行とは父をどつき倒すことと見たり~
ザクセン公ガンザックは有名な猛将だ。親父殿が子供のころに活躍していたおっさんなので俺らの世代ではだいぶ昔の人物だ。だが帝国の強い武将ランキングをやれば必ずトップ5には入るような根強い認知があるらしい。……よく知らないけど五人も選ばされると五人目か四人目あたりで困ってザクセン公の名を挙げるパターンが多い。
異名は極北のアレス。戦車で駆け抜ける戦場の勇者だ。
そんな男がハルバードを構えて俺の前に立っているんだ。わけがワカラナイよ。
「マジでやる気ですか?」
「逃げたきゃ逃げてもいいぞ。若いのをいじめる趣味はねえ」
へー、そういうことを言いますか。
おいおいおいおい、敬老精神を発露してお年寄りには優しくしてやろうかなーっていう俺の気遣いを蹴り倒してそーゆーこと言うんだ?
「ジジイが調子こきやがって。俺だってジジイをいじめる趣味なんてねえから言ってやってんだよ」
「そいつが口だけじゃなきゃいいんだがな」
「おーおー、威勢のいいじいさまだ。軽く遊んでやるよ」
ハルバードを掲げてどっしりと迎え撃つ構えを見た瞬間に真面目にやる気もなくなったぜ。ふざけ倒してやる。
「秘儀、リリウス・フライングボディアタック!」
説明しよう。リリウス・フライングボディアタックとはダッシュで近づいていって至近距離でジャンプ! 全身を凶器に変えて相手にぶつけるという男らしい技なのである。
なお路上でやると自爆ダメージが大きいから気をつけろよ。俺はむかし膝の皿を割ったぞ。
華麗に宙を舞う俺へとザクセン公のハルバードが叩きこまれる。手加減してくれたらしく斧の刃ではなく柄の部分を叩きこんできたが……
「ぐっ!」
リリウス腹筋は強靭だ。打撃を弾き、勢いそのままにザクセン公を倒した。
「「まだだ!」」
俺とザクセン公の叫びが重なる不思議な現象が起きつつも―――起き上がろうとしたザクセン公の顔面にヒップアタックをかますぜ。
「ケツぅ!?」
再びノックアウトしていったザクセン公の両足を脇に抱えて、イクゾー!
「回るー回るー、おれーたーちー」
必殺のジャイアントスイングである。デスきょの巫女さえも泣かせた救世主の必殺技だ。なおアルドは俺がギブするレベルで楽しんでたから必殺ではないのかもしれない。あの時は本気で吐きそうになってバトラに交代してもらったよ。
「ぬっ、ぬおおおおおお! おい、おいお前おい! これは何のつもりだ!?」
「必殺技でーす」
「……これ、死ぬのか?」
回されているザクセン公が不思議そうな表情でマジレスしてきた。どうやら三半規管も激ツヨらしいな。
「いいや、うちの弟はいつも喜んでるぜ」
「じゃあ何のつもりで……」
「効かないようなんで次いっきまーす」
ザクセン公をお空にぶん投げる。続いて跳躍した俺が空中でドッキング。
これが俺のキンニクバスターだ!
「むぅっ!」
効果ありっと。
着地のショックで首がアイタタタになってるザクセン公にコブラツイストを仕掛ける。抵抗されたが救世主のキンニクは抵抗を許さない。さあ決めゼリフだ!
「がしーん!」
「ぐおっ、よくわからんが地味にイタイな!」
「ふっ、ナンデ痛いのかわからないだろう? 無手格闘術の中でも特にマイナーな関節技の奥深さをたっぷり教えてやるよ」
「真面目にやらんか!」
「真面目にやってほしければ俺を真面目にさせるだけの力量を見せるんだな」
「くそがあ!」
気合い一声ザクセン公がコブラツイストを振りほどきに掛かるが!
「ビクともしねえな!? どういうちからだよ!」
「あんたが失った若さからくるハイパワーだよ」
立ち関節からの腕ひしぎ十字固めで再び地面に引き倒す。随分と体が固くなってやがる。こんなんじゃ昔は強かったおっさん止まりだぜ。
その後も散々に遊び倒してやった。ザクセン公が疲れ果てて座り込むまで遊んであげた。もちろん俺との間に友情は生まれなかった。
「……認める。お前が強いのは認める。釈然とはしねえがな」
「さすがは音に聞こえたザクセン公、見事な腕前でした的なセリフは有料になるがいるかい?」
「いらん! 手も足も出なかったわ!」
疲れ果てて地面に座り込んだザクセン公が豪快にガハハ笑いである。どうやら完全に屈服したようだ。いい判断です!
「マジで強いな、ひょっとしたらファウルよか強いんじゃねえか?」
「親父殿なんてとっくにぶち倒してるぜ。いまマクローエン家で一番強いのは俺だ」
「親父越えか! そいつは最高の親孝行だぜ」
「俺を倒すべく本気で訓練をやり直した親父さえも倒してここにいるぜ」
ザクセン公が膝をパァンと打つ。どうやら親父心に響いたようだ。
「それもまた親心だ! 戦士として己を越えていった息子に喜びながらも息子にだけは負けてたまるかと腕を磨くたあファウルめ、羨ましいぜ!」
う…羨ましいんだ。
俺ちょっと父親歴浅くてその気持ちはよくわかんない。だってクロノスの親権はアシェルに取られてるし。あんま会わせてくんないし。
「羨ましいんですか?」
「当たり前だ。ちくしょう、うちの息子もこのぐらい骨がありゃあ文句もねえんだがな」
ザクセン公爵家の息子さんたち不甲斐なさすぎない?
親父の言うことハイハイ聞いてるだけじゃ親父は満足しないぜ。真正面から平手打ち合戦やって男らしくぶち倒すくらいの覇気を求めているようだぞ。
「よお、てめえの豪胆さをうちの息子にも分けてやってくれよ」
「いいぜ」
男どうしでがっちり握手。雇用条件とかはともかく契約成立の流れだぜ。お嬢様契約書もってきて契約書!
契約書を読むザクセン公からガハハ笑いが消え失せる。というか表情そのものが消え失せる。どういう反応だろ?
「おい、これは何の冗談だ?」
「適正価格ですけど……」
支援砲撃一発で金貨一万枚はボリすぎのようだ。
正門どころか敵の軍事基地を一撃で蒸発させる一発には充分にこの価値があると思うんだがなあ。
LM商会の軍事オプション
①支援砲撃・衛星レーザー砲 金貨10000枚
②支援砲撃・バルトーク分子分解光線 金貨6000枚
③支援砲撃・ヴリトラナパーム弾 金貨300枚
④社長突撃 金貨100000万枚
⑤秘書突撃 金貨2000000万枚
⑥デブのお任せ 料金・本日のおやつ




