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最終章 『春のマリア』  作者: 松島 雄二郎
帝都決戦編 レミングの進軍
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奴の名は聖剣の男

 サウナの後はメシを食い酒を飲む。ドルジア人の常識だ。

 お嬢様達と約束してあったがラムゼイに奢ってもらうというハプニングもあり……まぁメシくらい二度食ってもいいよね。食えるよ俺。さすがにデブほどは食わんがね。


「あんたねえ、サウナ行ったっきり三時間も帰ってこないなんてどーなってるのよ」

「俺もびっくりです」

「びっくりすんな!」


 お嬢様ビンタが悪を打つ。ちょっとジャンプして俺の後頭部を叩いて着地する手際が神懸かっているぜ。


「いやー、まさかサウナで青の薔薇の銀虎卿とはち合わせるなんて思いませんでしたよ」

「思いなさいよ」


 無茶を仰る。お嬢様の要求水準を満たすのは難しすぎんよ。


 そろそろ朝食ではなく昼飯になりそうな午前十時の町を歩いていると絹を引き裂くような女性の悲鳴が……

 いや、ショタの声だ。


 狭い路地裏を覗くと帝国兵が美ショタに迫っているシーンであった。帝国兵の風紀乱れすぎだろ。


「せめて女に行けよ」

「わたくしはアリだと思うわ」


 お嬢様!?


 じりじりと後退する美ショタ。迫る帝国兵。そしてこの光景を陰から生温かい目で見守る俺ら。


「仕方ねえ、助けてやるか」

「もう少し見守りましょう」


 お嬢様ぁ!?


 美ショタの背中がレンガの壁にぶつかる。やべえ、もう逃げられない。これは本当に不味いぞ。お嬢様の性癖が歪む意味で!


「ぼ…ぼく! ぼくリリウス・マクローエン様の男ですから!」


 美ショタが駆けだして逃げてった。

 おい…いまの発言の意味をだな。俺とお嬢様に説明してから逃げてってくれよ頼むから……


「もしゃ。リリウスくん今朝朝帰りしたよね?」

「いや待て! ちがう! 俺は男になんて手を出したりしてない!」


「そーいえば記憶がないとか知らない民家で起きたとか言ってたわよね……」

「ちがいます! そんなわけがない!」


 欠片も信じていない目つきはよして!?


「絶対にちがうんだー!」


 俺の絶叫がワイゲルト市の空を舞う。

 なお町中の男女が俺との関係を仄めかしているという噂が立っていて、リリウス・マクローエンの名はとんだドスケベ野郎だと噂されていたんだぜ。

「リリウス・マクローエンって誰だ?」

「知らん」

「鉄の馬車でアイスクリーム売ってる商会の会長だったような」

「お前ら知らんのか、昨日亡霊旅団を一発でぶっ飛ばした奴だよ」

「やべー奴だな」

「俺も知ってるぜ、ものすごい性豪らしいぞ」

「ああ、ワイゲルトの女どもを一晩の内に喰っちまったらしい」

「無理だろ」

「いや、そうでもない。奴はティト神のSSホルダーだ。目が合っただけで女を孕ませるらしいぜ」

「すげえ、別に羨ましくはねえがすげえ……」

「その情報は誤りだ。なんと奴は男でさえも孕ませるらしい」

「何も羨ましくないがすげえ……」

「聞いた話じゃ虚勢メイスというティト神の神器を持ってるらしい」

「名前だけでわかる危険な武器だな」

「一発であそこが腐り落ちるらしいがやばいのはそこじゃない。アルテナ神殿はおろか、なんと本人にも解呪できないらしい」

「マジ?」

「マジだ。うちの親戚がやられたらしい。一応励まされたらしいが……」

「な…なんだよ」

「お前らなら女装も似合うって言われたってよ」

「孕ませる気満々じゃん……」


 リリウスの知らないところで略奪の手がピタリと止まった瞬間である。なむなむ。

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