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最終章 『春のマリア』  作者: 松島 雄二郎
課外実習編
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其々の課外実習三日目、朝

 昨夜、歓迎会をやってる食堂では練兵エリアで異次元のバトルをやってる馬鹿どもは公然と無視されていた。

 楽しそうに笑いながら長距離斬撃を放つマリアとか、人間の目には見えない動きで宙を走り回るリリウスとか、奴を撃ち落とそうとレーザー砲を乱射するナシェカとかだ。


 特にナシェカが危険だ。彼女の周囲だけ地面が輻射熱で融解している。近づいただけで死にそうな危険女子だ。遠くから声を掛けても全然聞こえていないみたいで反応が無い。もう放置しかなかった。


「先生、彼らは放置してよいのですかな?」

「あの馬鹿どもは言っても聞こえんのです。近づけば怪我をするだけ損します。放っておかれるとよい」

「はぁ……」


 歓迎会開始から四時間が経過~~

 生徒達がサウナに行ったり個室に戻ったりしても先生方はまだ食堂で飲んでいた。そして練兵場で騒いでいる馬鹿どもはまだ騒いでいる。


「ぎゃはははは! 今の動きやっべえ、マリアもう一度やってくれ!」

「とう!」

「やべえやべえ、名付けて人間チャクラムだな。今日から必殺技にしろよ!」

「ナニソレ、人体にできる動きじゃないでしょ!」


 馬鹿は元気だ。元気だけが取り得だ。四時間ぶっ通しでキチガイな動きをしているのにまだまだ元気に溢れている。


 もう消灯時間だ。食堂も燭台を三つだけ残して明かりを落とした。

 そこでようやく馬鹿どもが消灯時間に気づいた。何なら夕食が始まっていた事実に気づいたのも今のようだ。馬鹿だからだ。


 食堂でちびちび高いお酒を飲んでる先生と騎士団の方々の下へと馬鹿どもの声が聞こえてくる。


「え、暗くなってるんだけど?」

「消灯時間……? 嘘でしょ、ナシェカちゃんのご飯は?」

「おい、もう九時だぞ! 嘘だろ……」


 パインツ先生は嘘じゃねえよ馬鹿って思いながら飲んでいる。

 しかしこれで大人しく部屋に戻ってくれるだろうな、これに懲りて次からは時間を守ってくれるのだろうなと考えていたのだが……


「まいったな。仕方ねえ、外に食いにいくべ」

「賛成」

「超さんせーい」


 なんと堂々と門限破りをするつもりのようだ。騎士団の少佐まで一緒になってだ。問題だ。これは問題だぞ。


「先生、あれは……?」

「まぁ腹を満たせば戻ってくるでしょう」


 食堂にはまだ食べ残しが残っているのだが、教えてやるつもりはないようだ。


 問題児どもが堂々とエスケープしていった。ジャンプで大外壁を越えていった。あの馬鹿どもは大外壁の壁がどうしてここまで高いのかをまったく理解していないのだ。人間では越えられない高さに設定しているのに越えていくなんてどうかしてる!


 ようやく静かになった食堂で先生方はほどほどに飲み、適当に解散してサウナだの何だのを済ませて就寝した。


 そして翌朝。練兵場でウェルキンをからかって遊んでる馬鹿どもを見つめながらパインツ先生は思った。


「あいつらはいつ寝ておるんだ?」


 馬鹿どもは元気でキャッキャと遊んでいる。若いなあって思いながら、洗顔に向かう先生なのであった。



◇◇◇◇◇◇



 課外実習三日目。練兵場に整列する各分隊員を前に責任者であるパインツ先生が訓示を述べる。長々とは話さない。必要なことだけを話す。

 だが最後にこれだけは言っておく。


「昨晩宿舎を抜け出して町に降りた馬鹿どもがいた」


 馬鹿どもがバレたかって態度だ。悪い事だってわかってるのならやるなって感じだ。


「アイアンハート班とマクローエン班は其々20ポイント減点。以上だ」

「減点……?」

「減点って、え、点数ってなんの?」


 戸惑う馬鹿どもを尻目にパインツ先生が笑ってる。少しだけ溜飲が下がったのだ。


 公私混同の自覚はある。だがそれを置いても先生はリリウスが大嫌いだ。十代で大成功したS級冒険者で付いたあだなは冒険者の王レグルス・イースの再来。LM商会は世界的な大企業で奴はそこの社長だ。

 美しいと評判の寮付き女中に手を出し、一年でもとびきりの美少女を侍らせ、校則も守らない。傍若無人を絵に描いたようなトンデモ野郎なのだ。

 成績もいい。マジメに勉強している生徒に申し訳の無い話だが奴の成績は凄まじい。中間と期末を合わせてもほぼ満点。間違った問題に関しては答えが「てめえに教師の資格はねえ」ときたもんだ。

 調査の結果その設問の答えは教科書には載っていなかった。古い建築関係の文書に手を出さなければ分からない問題だったのだ。


 先生はリリウスが大嫌いだ。……その真なる理由は善なるパインツの精神が殺害の王の宿した狂気の波動に抗うために、彼を嫌いだと思い込むことで精神の健全を守っているからだ。


 殺害の王の傍にいる者は正気ではいられない。

 精神を冒すカルマに抗うために王を憎むか、おぞましき王を愛さねばならない。


 日和見など許されない。王のちからは確実に蓄積し、皆の精神を蝕んでいる。



◇◇◇◇◇◇



 各班が迷宮探索の準備を進めたり出発している頃、俺だけが正座させられている。仁王立ちするお嬢様はけっこうなお怒りだ。


「なんで怒られているのか、わかってるわね?」

「うす」

「じゃあ言ってみて?」

「班長のくせに班長の仕事を放りだして遊んでたからです」

「反省は?」

「してます(キラッ☆)」


 渾身のギャグは滑りに滑り、みんなからダメだこいつって頭を抱えられてしまった。


「押しつけがましい笑顔ねえ。まあいいわ、この失敗は迷宮探索で取り返してもらいましょう。皆さんもそれでよろしくて?」

「もしゃ。いいよ~」

「では俺から一つ」


 セリード先輩が何かいいことを言おうとしている顔で進み出てきた。大丈夫かな、大丈夫だよね?


「叱ってくれる人がいる内は幸せだ。彼女はキミの改善を願ってくれている」


 名言だな。出典はなんだろうか? まさかオリジナルですか?


「だが叱ってくれる人がいなくなると世の悲惨だ。誰も期待してくれない。正しいことをしても誰も褒めてくれない。何の喜びもない世界になる。―――俺のようにな」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「……滑ったか」


 セリード先輩が勝手に自爆して勝手に落ち込んでる。もしかして一年生ばかりの班だし先輩の俺がどうにかしなきゃ的な張り切り方をしているんですかね?


「先輩、俺の心には響きました」

「そう言ってくれると助かるが、慣れないことはするものではないな」

「俺は嬉しかったっす」

「そうか、そうか……」


 美しき先輩後輩愛が芽生えた瞬間である。


 セリード先輩の渾身のギャグにも笑わないとかみなさんには人の心がないの?

 そして人の心のわからないロザリアお嬢様が今更手をポンと打つ。


「あ、ギャバン・ダージル神父の説法ね! 最後のはセリード様のオリジナルかしら?」

「え、元ネタを思い起こしてたんですか?」


 滑ったギャグを掘り起こされたセリード先輩が俯いている。ボケ殺しすぎる。


 では迷宮探索開始だ。練兵場の奥にある直通門から谷底に降りていく。谷底も魔物がけっこういる。通常の迷宮よりもエンカウント率が高く、最初の階層とは思えないほど強めの狼系の魔物ばかりだ。


 学院生がわーわー言いながら六人で一頭を囲んでいると思えば、横からやってきた狼に噛みつかれてたりする。

 昨日は方陣を組んでいたから一方向だけ注視していればよかったし先生から思念で索敵情報が来ていたけど、今は自分で霧の向こうを警戒しなきゃいけないからな。


 ハイスペックお坊ちゃんの落とし穴だ。領民に魔物を囲ませて最後に出てきて魔法でどーんをやってきた連中は索敵技能に欠けている。魔力探査はよほど自信のある術者じゃないと意味がない。人界よりも遥かな濃密な魔素の漂う迷宮内だからだ。


 さてと地図を開いて……


「何か来ましたね」

「え?」


 お嬢様はワカッテナイけど何か―――


 ビームの雨が降ってきた。一瞬で谷底のモンスターを打ち砕いたビーム砲撃の余波が収まる暇も与えずに上空から何かがやってくる。真ゲッターかな?


 機械の女神と化したナシェカがゲッター機動でやってきた。遅れて集まってきた砲撃ドローンが機械の翼となってナシェカの背中に納まる。完全にフィンファンネルだわ。


「おい、獲物の横取りはダンジョンマナー違反だぞ」

「それ弱っちいやつが自分を正当化するときの理屈だよね?」


 凄まじい魔法力の圧を感じる。戦艦用ジェネレーターが生み出す莫大なちからがナシェカの内部で渦巻いている。

 神の魔力視座を持つ者なら見える。光輝くナシェカの背に浮かぶ超細密な曼荼羅がな。あの曼荼羅の円一つがナシェカを守護する魔導防壁一枚の維持に作用している。すなわちアシェラ神の魔導防壁だ。これは俺の仕業だ。

 ナシェカの強化プランをアシェラに相談したら古い型の魔導防壁をまんまプログラミングしてくれたんだ。火力に振り切りすぎてバランスが悪いからってな。おかげで性能がトンデモナイことになってるんだがな。


 デウス・エクス・マキナ化したナシェカの登場にみんな気圧されている。切り札があると聞いていてもここまでの物とは思わなかったんだろ。


「しょうもない子守なんかでうだうだやって楽しい? ついて来れなきゃ置いてっちゃうよ!」


 ナシェカが近場の洞窟に突入してった。はっや!

 みんな呆然としている。さすがのお嬢様もビビったらしい。唖然としている。


「ナシェカさん本当はあそこまで強かったのね」

「何かわかったんですか?」

「だって凄い魔法力だったもの。……ちがうの?」

「魔法力なんて強さの分かり易い指標の一つでしかないですし、俺に言わせればそんなもので『強さ』が計れませんよ」


 そう、本当の強さってのは武装にかけたおかねなんだ。ユノ・ザリッガーでさえ80万PLなのに奴の兵装は総額1000億だからな。格がちがうよ。


 だがまだ出力に振り回されている感じだったな。あのゲッター機動が滑らかになるくらい習熟したら俺も勝てねえだろうなあ。


 今度はマリア班が走ってきた。ナシェカがどこ行ったか聞かれたんで洞窟を指さしてやる。


「ありがと!」


 マリア班が走ってった。俺らも行くかねえ。


 グラッツェン大迷宮はじつはその構造がよくわかっていない。諸説ある感じだ。


 第一仮説、八ヶ巣穴オクタグラム・ピットと呼ばれる八つの迷宮が同じ場所に存在している。

 第二仮説、谷そのものが迷宮化していて八つの巣穴の一つだけが最深部につながっている。

 

 こうなっている。

 八つの巣穴は其々が出現するモンスター類が異なり、中の様子も異なる。そのため人気のある巣穴と人気のない巣穴があるようだ。アンデッドの出る巣穴は不人気だ、理由は儲からない上にアンデッドが手強いとかそんな感じだ。


 冒険者ギルドの資料によると百年以上前に第三ピット通称『亜人王国』の最下層にたどり着いたというクランがいたらしい。しかし守護者は見つからず、持ち込んだ食料が尽きかけたために地上に帰還したそうだ。これによって第一仮説は否定された。

 そして生まれた第二仮説であるが上記のクランの他に亜人王国の最深部までたどり着けたクランはおらず、もしかしてあいつらデマこいたんじゃね?って噂もあって第一仮説も捨て難いらしい。


 いずれの巣穴も二十階以上の深さがあるとは判明しているが、モンスターが強力すぎてどの巣穴も最深部まで行ったというクランがいないそうだ。謎多き大迷宮。ロマンがあるよな。


 ナシェカが先行して、マリア班が後を追っていったのも第三ピット亜人王国だ。

 魔石のドロップ率が高くておいしい狩場なので、ここを狩場にしているクランも多く、そのせいでモンスターとのエンカウント率が下がっているらしい。逆に二番手三番手のピットの方がおいしい状況なのだそうな。


 そして俺達が潜るのもここだ。……ナシェカが俺らの分のモンスも残しておいてくれるといいんだが、あの様子だと期待薄か。

 浅い階層どころか中層までエンカ0もありそうで怖いぜ。新チームの連携を試せない意味でな。



◇◇◇◇◇◇



 コボルト三頭を相手にするウェルキン・ハウルは焦っている。


「待てウェルキン! 突出するな!」

「うだうだやってたって仕方ねえでしょ! 仕留められる時は素早く仕留めるんだよぉお!」


 彼にとって谷底を徘徊するモンスターなど敵ではない。クリーンヒット一発で吹き飛ぶザコでしかない。

 だが班員も同じかと言えばそうではなく、人によって得意は異なる。シールドバッシュを主体にカウンターで戦いたいグラーフ。誰かに注目している魔物の横腹を刺したいリジー。接近戦は苦手なルリア。ルリアのカバーを意識して傍を離れられないレベッカ。

 其々得意なことが違ってチームの意識もバラバラで、ウェルキンはみんなに足を引っ張られている気分だ。


 コボルト七頭との遭遇戦を終えて、一息つきたいみんなを急かすのも焦りからだ。引率のボルク下級騎士に食って掛かっている。


「穴倉に潜ればモンスの数も減る。さっさと潜るべきだ」

「お前は大丈夫なんだろうが他の奴らが保たないんだよ。この場に一分留まる、各自呼吸を整えておけ」

「くそっ!」


 呼吸の荒い班員はウェルキンの奴どうしちまったんだって心配してる。痴の賢者グラーフでさえシモネタを言う余裕がない。


「しかしリジーが思わぬ活躍だ」

「ほんとね、意外~」

「まあな。迷宮攻略者だからなー」

「ナシェカとマリアにおんぶにだっこって聞いたけど?」

「いや、あいつらは世界観が違うから」


 黙り込んでるウェルキンが苦虫を噛み潰したような表情になる。間違えたからだ。

 あの時無理やりにでも班長になっておけばナシェカから引き離されることもなかった。班長なんて誰もやりたがっていなかったのに、思考停止みたいにマリアでいいじゃんって思ってしまったツケがこれだ。


 選ばれもしなかった。三人目に選ばれるのは俺だと考えていたのにマリアはエリンを選んだ。俺はエリンに劣っているのかという自問自答をした。


 どうして選ばれなかった? どうして外された? ……弱いからだ。弱い男なんてナシェカの目にも入らないからだ。


 昨日、トレーラーの前でやっていた長刀の試し斬りを見ていて思い知った。人には使えない武器を一度で軽く使ってみせたリリウスの剛力に。鋭い感性で何度かの素振りで使いこなすに至ったマリアの技量に。……及ばない、そんなのは見ればわかった。


 ウェルキンにはあいつらの動きを視認することさえできなかった。……こんな情けない男が彼女から振り向いてもらえるはずもなかった。


 引率騎士のボルクが注意を叫ぶ。


「警戒! デカブツが来るぞ!」


 霧の向こうからトロールが姿を見せる。大きく、そして早い巨人が拳を振り上げてボルクへと叩きつけた。

 トロールとボルクがちから比べをする停止のこの一瞬、ウェルキンが見逃すはずもない。ボルクの背を踏んで跳躍しトロールの顔面まで飛び上がる。


「クソッタレぇええ!」

「後ろからも来ている。グラーフはカバーに入れ!」

「挟撃かよッ!?」


 ウェルキンがトロールの首へと両手剣を打ち込み、弾力のある肉に押し返されながらも剣を押し込もうとする合間に、濃霧を破って二体目のトロールが現れた。

 二体目の狙いは肉質の柔らかそうな女子。それもさっきから動かずに守られているルリアだ。


 慌てて動くグラーフが低位の雷撃魔法を撃つがトロールは怯まない。右腕を伸ばしてルリアの細い腰を掴もうと―――


 空から光の矢が降ってきた。一斉に降り注ぐ光の雨が狙いすましたかのように二体のトロールの頭部を打ち砕く。


 谷底を覆う濃霧が吹き飛ばされていった。

 鋭角な空中機動で谷底へと降りてきて、なおも大地から浮遊するナシェカが展開したフェザービットを背中に集めている姿は、神話に出てくる女神のように見えた。……悔しさのあまり涙が出てきた。


 ナシェカは自分などに目もくれない。並び立てるはずもない。

 あれは女神で、自分はどうしようもなく只の人なんだって思い知らされる。


「しょうもない子守なんかでうだうだやって楽しい? ついて来れなきゃ置いてっちゃうよ!」

(ついて来れなきゃ…か。俺には無理だ……)


 諦めるのは簡単だ。イイワケなんて幾らでもある。金もない。実力もない。好かれてもいない。

 あんな女についていけねーよって言えばいいだけだ。酒でも飲んで忘れたふりをして、この恋を終わりにしてしまえばいい。


 諦めようとした瞬間、マリアが横を走り抜けていった。エリンとベルも少し遅れてアルフォンスも狂犬シスターも走ってきた。


「ナシェカどこに行ったか知らない!?」

「あっち。弱っちい奴らは置いてくってよ」

「そんなこと言ったの!? みんなダッシュだ、追いつけなかったら課外実習の間ずっと煽られちゃうよ!」

「うわー、それは嫌だね」

「だが奴は必ず煽る。この名探偵が言うんだから間違いない」

「じゃあ追いつかないとね。後ろは私が見ておく、さあみんな駆け足だ」

「わたくしが先行しますわ」

「ココアさんが抜け駆けだー! 追いかけろー! って、リリウス、ありがと!」


 マリア班がわーわー言いながら走ってった。

 リリウス班もなんか言ってる。


「ナシェカを追いますよ。漁夫の利作戦です!」

「魔法力を温存できそうね。よし、いきましょ!」


 何も考えてなさそうなお気楽な連中も走っていった。

 あいつら馬鹿だから何も考えてねえんだろうなって思っていると、騎士ボルクに肩を叩かれる。


「何を焦ってんだか知らねえがあのくらいが丁度いいぞ」

「丁度ってなんですか」


「人生のペース配分さ。昼は走れ、悩むのは夜でも遅くはない。人生ってのはそういうもんだ。……お前は突っ走りすぎだ、周りに合わせて走れば仲間がお前を助けてくれる。わかるか?」

「わかりません」


 ボルクが何を言いたいのかわからない。

 だがウェルキンは立ち止まったままではいたくなかった。


「わからないけど今は走ります」

「よし、グラーフ班行くぞ。目指すは第三ピットだ」


 理屈なんかどうでもいい。ウェルキンはただ諦めたくなかった。

 グラーフ班 21/42位

①痴の賢者グラーフ(前衛・戦士D+)

②大草原の勇者ウェルキン(前衛・双剣士B)

③子犬のリジー(中衛・軽剣士C)

④平均的なルリア・ハストラ(後衛・治癒術師A-)

⑤セクシー担当レベッカ・ジュノー(後衛・魔導師D)

⑥真面目な下級騎士ボルク(前衛・剛剣士A+)


 班長のグラーフが程々の成績を期待して構築した班だけあってバランスに優れている。唯一の期待外れは引率のボルクに期待していたガンガン前に出てくれる役割だが、引率の分際を弁えようとする真面目さによって台無しにされたくらいか。

 浅い階層ならば十分に戦えるメンバーだ。調子を崩しているウェルキンの復調とボルクとの友好的な関係があれば中層進出も適うかもしれない。

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