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最終章 『春のマリア』  作者: 松島 雄二郎
課外実習編
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課外実習③ 真の仲間という逆に選ばれないやつを決める地獄のゲーム

 迷宮探索? 特に何も起きなかったよ。

 何も起きなかったけど強いて言えば馬脚をチラチラした感じはある。日頃俺は上級貴族の子弟だなんてふんぞり返っている連中は、やはり相応に高い能力を持ってはいるが根性と体力がないんで連戦に弱かった。最後の方なんてヘロヘロになってたもんね。


 俺やクロードやナシェカのような前評判よりも遥かに強い連中はしっかり活躍した。


 強いような気はしていたけどマジでやべーって発覚したのがマリアやアーサー君やレリア先輩だ。特にレリア先輩に敵うのなんて俺くらいのもんだろ。


 順当に強い気がしていてやっぱり強かったのがロザリアお嬢様とかバド先輩とかウェルキンとかD組の拳闘士の子だ。あの子背中に喧嘩買いますの刺繍入れてるから最初はイジメかと思ってたわ。


 逆にまったくできそうもないのにそれなりに活躍したのがエリンちゃんとリジーちゃんだ。え、あんたらマジって言われてるのは笑った。エリンちゃんのストロングウィザード計画は順調だ。


 そんな感じのこいつらやるじゃんの波に乗るどころか沈んでいったのが一年のしょうもない奴らだ。

 別にD組の奴とかC組の奴は学院でも己を弁えているんだけど、ひどいのがAとBの日頃えらそう連中で、ダサい結果に終わってしょんぼりしている。迷宮の魔物は基本的に軽度魔法耐性持ちだから魔導師は苦戦するんだよ。


 で、今は宿舎の練兵場に戻って班ミーティングをしてる。

 班長は俺だが、三馬鹿のリーダーはお嬢様なのでお嬢様が仕切る。


「一応聞いておくわね、リリウスの目から反省点はある?」

「ありませんよ。みんなパーフェクトな迷宮潜でした」

「むふー、やったわね」


「もしゃ。あれ、僕何かやったっけ? もしゃもしゃ」

「デブは声出して注意喚起してたし近寄ってきたのを何体か無力化してたろ。あれで充分だ」


 アーサー君が何か言いたそうな眼差しをしている。

 彼に対しては本音で当たろう。おべっかなんて求めてない気がする。


「いかな大迷宮といえど浅層で評価を貰おうとするな。余裕のある内はわからない欠点や判断ミスもある。特にアーサー君のように深層でも戦える英雄級魔法剣士はな」

「そうだな」

「だが居てくれるだけで安心できたよ。癒しの術法使いがいると安心感があるからよ、三週間頼むぜ」

「前衛戦闘の方にも期待してほしいが、心得た。この先君達を蝕む傷病はない」


 決めゼリフかな? かっくいー。


 班ミーティングの前にクロードから班長は班員の評価を10段階評価しろと言われていたんだが文句なしにデブ以外全員10だ。デブは5でいいだろ。なんとなく。

 そして終わる班ミーティング。


「では今から全体ミーティングに移る! 開始の前にサプライズゲストを紹介させてほしい」


 やっぱり何かあったか。そういう思いで門を潜って練兵場に入ってくる方々を見つめる我ら学院生である。


 あれ、デブの親戚の兄ちゃんのプリス卿がいんじゃん。

 プリス卿はイイ人だよ、よくお小遣いもくれたしね。まぁ深刻な馬鹿だけど。頭が残念すぎて佐官から上に昇進させられないって閣下がサウナで笑いながら言い、プリス卿も一緒になって笑っていたくらいの気持ちのいい馬鹿野郎だ。


 プリス卿が騎士の方々と一緒に入ってきて、彼ら彼女らはプリス卿を中心に据えるように居並ぶ。いいのか? プリス卿で本当に大丈夫なのか?


「やあ諸君こんにちは。帝国騎士団所属のキャスパー・プリス大佐だ」


 だいじょう…大丈夫そうだな。うん、大丈夫そうだぞ。珍しいな。


「あ、こっちは同僚ね」


 ダメだ、やっぱりダメそうだ。

 口調にまでチャラいのが出てるもんよ。緊張感を保つほうが難しいぜ。


「俺達の仕事は諸君らの同行者かつ採点者でね。明日からの迷宮探索に同行させてもらうつもりだ。よろしく」


 うーん、もうチャラいな。もうダメだ。

 見ろよ同期の顔を。最初は緊張して顔を引き締めていたのに脱力してるじゃんよ。


「じつは今日の戦いぶりを上から観察させてもらっていてね。すでに軽くではあるが採点をしてあるんだ」


 プリス卿の採点とか不安しかないな。こいつ顔が気に食わないから0点とかやりそうなんだよ。女の子なら無条件で10点とかもやりそう。


「ああ、採点は俺の優秀な部下たちがやったから安心してほしい。いや、本当なら女の子は全員満点にしたかったんだけどユキノが厳しくやれってうるさいからさあ」


 部下ナイス!

 反応から見るにユキノってのはあの小さな子か。東洋人っぽい顔立ちだしトキムネ君と同じ流民なのかもしれない。


「プリス、マジメにやれ」

「へいへい。じゃあ採点結果を基にした分隊の格付けを始めよう。まずは第一位、アイアンハート分隊」


 マジか!


「おめでとう、君達は満点だ。さあそこに移動して」


 いつの間にか地面に描かれていた1から42までの数字を割り振られた枠の1にマリア達が移動を促されている。プリス卿に10以上の数字を数えられるとは思えない。別の人が発案なら安心だな。


 第二位がアレクシス分隊。こっちも満点だったが二位のようだ。二位の理由はアイアンハート分隊の方が女の子が多いからだと思う。マジで。


 次々と呼ばれていく。


「十六位、マクローエン分隊」

「マジかよ!」

「ハハハ! 一人十点までの配点でね、横着して四人組になんかするから37点どまりになるんだよ」


 納得いかねえ……

 いや六人組を作れと言われていたのを無視したツケか。


「同じ理由で十七位、マッケンジー分隊」


 おっとすぐ後ろがレリア先輩か。こっちも四人組だしな。


 42班の格付けが終わる。悲しい悲しい42位は聖イスカリオテか。エロ賢者がいれば違ったんだろうが所詮やつはエロの三賢者の中でも最弱。


 さて、単に格付けしたって感じだとは思えないね。

 いったいどんなオリエンテーリングなんだろう?


「ここまでは班の成績だ。続いて班長別の格付けに移りたいと思う」


 うん?


「名前を呼ばれた班長は出てきてこっちに並んでくれ」


 んんんぅ?


「一位、マリア・アイアンハート。そう君だ、こっちに並んでくれ」


「二位、リリウス・マクローエン。三位、ディルクルス・フラウ・ヴェート。四位、クロード・アレクシス。五位、ノクティス・アレサンドロ……」


 呼ばれた班長がこれまた順位の書かれた輪っかの中に並んでいく。

 何だろう、これは何だろう……?


「じゃあこれから三週間の迷宮探索を一緒にやる本当の班員を決めてもらう」

「「…………」」


 みんな軽く絶句してんじゃん。

 あー、成績を公表した上でドラフト会議をやらせようってのか。面白いな。


「ルールは簡単だ。最優秀な班長から順に一人ずつ班員を指名してもらう。全員が指名を終えたらまたマリア君に戻って二人目の班員を決めてもらうよ。一巡目二巡目って感じでね。じゃあマリア君、指名よろしく」

「プリス、忘れてる」


 プリス卿が身長差40はあるユキノちゃんからどつかれてる。締まらない人だな。


「おっと、いけね! 忘れてたよ、どの班も必ず一人は俺達を選んでほしいんだ。助っ人枠だね。それと助っ人枠だからって最後に選ばなきゃいけないルールなんてないよ。だからわかるねマリア君、最初に俺のハートをアイアンしてくれてもいいんだぞ」


 ハートをアイアンするって何なんだろう、からのプリス卿だしノリで言ってるだけだろ。この人は昔からそういう人だよ。


 愛想笑いをしているマリアがナシェカを指さす。


「じゃあナシェカで」

「いえーい!」


 マリアとナシェカがハイタッチ。リジーとエリンが「見捨てる気かー!?」って叫んでる姿が面白い。普段なら売れ残ってダメっ子シスターズ再結成の流れだけど最初に格付けされているからね。二人の実力を知らん人でも格付け一位の分隊員ってことで選びそうな気もする。


 俺が指名する番か。難しいな……

 お嬢様もアーサー君も二巡目には残っていない気がする。ガチ攻略を目指すなら火力よりも癒しの術法ってことでアーサー君なんだけど可愛さはすべてに優先される。大穴でレリア先輩って手もあるけどボラン先輩に悪いからね。


 アーサー君がじっとこっちを睨んでいる理由もわかるっちゃわかるんだが、ここは苦慮の結果として……


「お嬢様、リリウス君のここ空いてますよ」

「はいはい、仕方ないわねー」


 苦悩の結果選んであげたのに仕方なくってゆわれた!

 それとデブ、どうしてショックを受けているのかわからんがお前は最後まで残ってたら仕方なく選ぶ枠だぞ。


 三位の班長はディルクルス君だ。あいつじつは優秀だったんだな。

 なぜか四位のクロードはアーサー君を拾った。ちくせう、わかってるじゃねーか。迷宮で癒しの術法使いは必須だ。長く深く潜ろうと思えばアーサー君は必要なんだよ。……まぁ選ばなかった時点で二巡目まで残っているはずもなかったか。縁がなかったと思って諦めよう。


 ボラン先輩は予想通りレリア先輩を選んだ。何故だろうか、アルフォンス先輩とセリード先輩をあえて外す手も考えられるから怖い。

 バド先輩は二巡目を待たずに売り切れた。反応的に友達っぽい。


 二巡目。ダメっ子シスターズがマリアを拝んでいる。選ばれなかったのか。格付け一位の分隊という目に見えるすごい評価を得ていたのに二巡目まで売れ残ったのか……


「エリン、来いよ!」

「マリアあああああ! 信じてた!」


 エリンちゃんが抱き着いていった。感動的な光景だな。

 選ばれなかったリジーだけジョンと一緒に地面に何か書いてる。あれ、これもしかして人間関係が崩壊するのでは?


 う~~~ん、これはもしかして深く考えないと今後の関係に尾を引くような重大な選択しなのかもしれない。


 どうする、どうする俺?

 リリウスの選べる班員候補


 考古工学部 アルフォンス先輩B- セリード先輩AAA+

 生徒会 ファリス先輩B

 一年A組 デブD+

 一年D組 リジーD+ ライザB+ ルリアA-(癒しの術者のためロール評価加算)

 助っ人枠 プリス卿AAA+ リリアAA マイルズ教官AA ドロシーAA ルナココアAA+

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