最終曲 真実の世界
___5曲目 真実の世界___
私は、道化師に腕を引かれながら城に向かった。
時は4時。後1時間でお父さんとお母さんのもとへ帰れる。
道化師は時計塔から城までの間、ずっとニヤニヤと笑っていた。
城に着くと、道化師は無言で片手をあげる。
すると門が開いた。
「ねぇ....貴方はいったい何なの?」
殺人鬼であり魔術師であり道化師であり...。
こいつはいったい何なんだろう。ずっと考えていた疑問を聞いてみた。
「さぁ?キングに聞いて下さい。」
そんな問いは軽く流され、私と道化師は城の中へと入っていくのだった。
―さぁ、おいで。君にいいものをあげよう。―
――――――――――――
「キング...。お久しぶりです。」
玉座の前に行くと、道化師は一礼した。
「インディア...我に何のようだ。」
雰囲気からいうとインディアとは道化師のことらしい。
「Aliceを連れてきました。彼女は全てを知りたいそうです。....ねっAlice?」
そうだ。私は早く全てを知って、早く帰りたいのだ。
「Alice...我のところへ来なさい。」
そう言われ、私は玉座に近づいた。
あれ?頭がくらくらする....。それに視界が歪んで....
私は静かに床へと倒れ込んだ。
「お帰りAlice。我が娘...。」
――――――――――――
目をあけると白黒の少しノイズの入った映像が目の前に流れていた。
その中にドレスを着た女の子がいた。よく見ると、その女の子は私だった。その後ろからインディアが歩いてきて私を抱きしめた。
「ねぇインディア...。止めてよ。私にはクラウデットが居るのだから。」
映像の中の私は言った。
「無理だよ?僕だってAliceが好きなのだから。」
インディアはそう言って私に顔を近づけた。すると、
「インディア!!Aliceに何をするんだ!!」
インディアよりも少し大人びた顔をした青年がその光景を見て駆け寄ってきた。
「何って....みれば分かるだろう兄さん。」
兄さん、つまりこの青年はクラウデットだ。
そこで少しの時間ノイズが流れた。
しばらくして映った映像はとても激しいものばかりだ。二人の兄弟は殺し合っている。しかし力が同等なため決着がつかない。
次にまた私が映った。
「インディア、クラウデット....。私を取り合って二人の仲が悪くなるのはとてもいやなの。だから、私を殺して?」
私はそんな凄いことを言っていた。
いったいこの映像は何なのだろうか。
そしてまたノイズが流れた。
「インディア...Aliceは俺が殺る。明日...Aliceを消すよ。」
クラウデットはそう言った。
「待てよ兄さん!何でAliceを!!」
「俺だってお前との仲が悪くなるのはいやなんだ。だけどAliceのことは諦められない。お前だってそうなんじゃないのか?」
インディアは黙って頷いた。
「だから。俺に任せろ。」
今度はまた新しい場面に移動した。
「Alice...。兄さんは明日君を殺す気だ。でも僕はそんなのいやだ。だから....ごめん。」
インディアはそう言って私に口移しで何かを飲ませた。
そのとき、私は全てを思い出してしまった。
私はAlice...。
キングはお父様。
この世界が本物。
前の世界はimagination。
薬を飲んだあの日から、
私は桐生愛になった。
偽りの世界で、
インディアとクラウデットを求めていた。
私は二人が好きだった。
だから非日常を求めた。
だから私は此処へきた。
そして死を願った。
ねぇ...インディア?
何故時計塔で私を殺さなかったの?
全てを思い出して、私は目が覚めた。
「インディア...。」
私は囁いた。
「Aliceごめん。僕は君を殺してあげられなかった。そして兄さんはさっき病気で死んでしまった。」
あぁ....結局この二人は幸せになれなかった。
全て私のせいだ。
―だから言ったじゃない。私の罪は私の生だと―
「Alice...君は思い出すのが遅すぎた。もうimaginationの世界に帰る時間だ。」
何故?私は思い出したのに。
「僕は始め君を殺すつもりだった。だけど無理だ。」
何故?私は死を望んだ。
「だから....。せめてimaginationの世界で生きていてくれ。」
私は知ってしまったのに。
「大丈夫。君の生は罪なのは確かだから。」
そうよ。そのせいでルイスとアンジェラは死んだの。
「だから。偽りの国で暮らすんだ。処刑は下された。永遠の罰が君への報いだよ。」
そこまで聞いて、私は再び目を閉じた。
サヨナラ真実の世界。
私がもう帰ることの出来ない遠い場所。
私は偽りを知りながら、何を支えに生きていけばいいのだろう。
___エピローグ___
私は暗闇から解放され目を開けた。
そこはあのベンチだった。
「愛...遅くなってごめんよ。」
お父さんが帰ってきた。
そうだ...私は眠っていたんだ。
「大丈夫だよ。」
できる限りの笑顔で答えた。
「紀子さんのところへ行こうか。」
私とお父さんはお母さんのもとへと行った。
ムフフフフ....。
どこかで笑い声がした。
とても懐かしく感じた。
私以外のものは全て偽り。
死という名の愛をどうか私に....。
―時の世界はキミを待っている♪Aliceを心から望んでいる〜♪キミのその白い肌から流れる血は深紅か否、漆黒か〜♪だけどそれを確かめることはしないさ♪だってそれが罪だから〜誰かを助けることなんて、君にはできっこないのにね♪真の君の罪はさ、母を殺したことなのに♪―
〜end〜