2曲目 妖精の森
___2曲目 妖精の森___
道化師に連れられて来た場所はとてもきれいだった。花が咲き乱れ、朝露は太陽の光で輝き、空は晴れて澄んでいる。そして...私が待ち望んでいた、世界にありえないもの。妖精が空中を飛び回っていた。
「すごいっ!!」
思わず声が出た。私がみたことのないもの。普段はありえないもの。それが自分の目の前に居るだけで私は舞い上がってしまった。さっきの道化師からの忠告をすっかり忘れてしまっていた。
「キィ!!キキィ―!!」
妖精たちが私に気がついた。そして私に向かって飛んでくる。
「すごいすごい!!みんな飛んできた。」
そして、道化師の方をみた。
「Aliceは可哀想な子だ...。か弱くて、馬鹿で...だからこそ愛しい存在だ。」
そう悲しそうな顔で囁いた。
気がついた頃にはもう遅かった。
私は既に妖精たちに噛みつかれていた。
「キャァ――!」
慌てふためく私を見ながら道化師は笑った。
「ムフフフ....サヨナラAlice。キミをよんだ理由はキミが死ねばキングが........」
最後の声は妖精たちの鳴き声で聞こえなかった。
しかし、道化師は歩いて行ってしまう。
「待って!!助けて!!」
そんな叫びも聞こえない。
もうだめだ....。
私は此処で...。
そう思った瞬間、光の刃が飛んできた。
「Alice様っ!どうかこちらへ。」
声の聞こえる方をむくと、紺色のワンピースを着て、クロスのシルバーネックレスをつけたシスターのような人がいた。彼女の指は、200メートル程離れた教会を指さしていた。私は全速力で走った。こういう危機に直面したときの人間というのは、素晴らしく優れた動きをする。いつもは遅い足が、こんなにも早く動いている。その後ろからシスターが走ってくる。そして私とシスターは、教会へと飛び込んだ。
どうやら助かったらしい。でも、体が痛む。自分の体を見てみたら傷だらけだった。掠り傷程度ですんでいるから本当に良かった。
「Alice様...大丈夫ですか?」
シスターが話しかけてくる。よく見てみると、私よりも幼い顔立ちをしていた。片眼鏡がユニークな可愛い女の子だった。
「大丈夫...。ところで貴方は?」
「私は此処の教会でシスター兼魔術師をやっているアンジェラ・リンクと申します。以後お見知りおきを。」
にっこりと微笑んでくる彼女はとても愛らしい。
私のような歪んだ心ではなく、澄んだ真っ白な感じの印象を受ける。
しかし、何も言っていないのになぜ私がAliceと呼ばれていることを知っているのだろう。彼女ならば平気だろうと思い、聞いてみた。
「なぜ私の名前を知っているの?(本名はAliceでは無いがあえて....)」
すると、彼女はきょとんとして、
「知らないわけがないではないですか...。」
此処では私は有名人?でも、私は此処に初めてきた。この世界に来てから私には分からないことが山積みだった。
「Alice様は、クラウデット様と御結婚なさるのですよね?それをみんなが祝福しております。」
いや....待てよ。なんで見ず知らずのクラウデットとやらと私が結婚する事になっているの?だって私は五時までしかここにいないつもりだ。
「私は今日此処に来たばかりだから...それは嘘だと思う...。」
彼女は驚いた顔をした。
「そうなのですか!でも...7年前からこの噂は。」 何か言いなそうな顔をしながら彼女は黙った。
「アンジェラさん。キングっていう人を知ってる?」
「知ってますよ。キング様はクラウデット様のお父上様であり、time worldの王ですから。」
きっと全ては王のキングが知っているだろう。メルヘンな話は最終的に全て王が知っている展開になっていく。そんな気がする。私はキングのところへ行こうと思った。
「私....キングのところへ行く。」
そう呟いた。
―貴方との別れの原因がこの会話だったなら、私はなんてことをしてしまったのだろう。―
――――――――――――
「私もついて行きます!」
そう彼女に言われてから、2時間もの、時間がたった。
彼女と過ごす時間は楽しかった。とても幸せだった。最初に言った通り、此処は遊園地として存在している。そのため街があったりと、普通の世界のようだった。彼女はいろいろと私に教えてくれた。この場所が私の世界とは別の次元に存在すること、此処にいる人間は皆生きていること。
皆と言われても、私は時の道化師と妖精、そしてアンジェラにしかあったことがない。
そのため街にやってきたのだ。
朝は静かだったこの場所も、活気のある声でいつの間にか埋め尽くされていた。街の中心には噴水があり、その噴水には時計のオブジェが飾られていた。まるで外国に来たような気分だ。
「お腹空きましたね....。まだ5時まで時間もありますし、少しお茶でもしませんか?」
アンジェラが話しかけてきた。私も朝から何も食べていないため、何か食べたいなと思っていたので、
「そうだね。じゃあ行こう。」
と答えた。
しばらく歩いていると、アンジェラはカフェや、レストランを通り過ぎ、時計塔の入り口に私を連れてきた。
「此処に友達がいるのです。いつも昼食は彼のところで食べているので...。」
そう言って、ドアを開けるのだった。
グダグダです.....。ごめんなさい。感想などありましたらお願いします。