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毎度思うんだけどホラーゲームってあっちから攻撃できるのにこっちからできないのは不公平じゃね?

とてつもない悲鳴が響き渡る。


「クラリス、クラリス!?」


魔物に切りかかるとすぐに影は消えていく。


「おい、大丈夫か、おい!!」

「ぅぅうううぅぅう」


クラリスの様子を確認する。


するとクラリスの体のある部分が。


「み……み、みが」


エルフ特有の長い耳が無くなっている。


「おい、ポーションは持っているか?」


普通のポーションでは耳を直すことはできないが、止血程度には役立つ。


クラリスは首を横に振る。


残念ながら手持ちにポーションは無いようだ。


「じゃあ治癒魔法を使えるか?」


コクコク


「じゃあそれを自分に使うんだ」


クラリスは手に魔法を集中させ、治癒魔法を発動させる。


「どうだ?」

「……えぇ、問題ないわ」


血が止まり、傷が塞がっている。


「………私の耳はそこにある?」

「ああ」


落ちている自分の耳を渡すと大事そうに抱え込む。


おそらく長い耳に何かしらの誇りでもあるのだろう。


それを失った。


(再起は無いかもしれないな)


だが予想と違い、クラリスは立ち上がる。


「……コアを破壊するわよ」

「あ、ああ」


耳をポッケに仕舞うと再び集中する。


パン


「……あれ?」


パン


それから何度も手を叩き、周囲の音を聞こうとしているのだが、なにやら様子がおかしい。


「どうした」

「………わからない」

「なに?」

「周囲がわからないの………」


なるほど先ほどの一撃は偶然ではなく、計画的に行われたものだろう。


おかげで俺たちは周囲の状況がわからなくなった。


(これじゃあ最初よりも悪い)


逃げるための退路すらなくなったのだ。


ケッケッケッケ!!


霧の中に鳥の鳴き声らしきものが響き渡る。


(このままじゃ俺らが先に力尽きる)


すると視界の隅に何か影が動いているのが見える。


(なんだ?)


その大きさがあの鳥のサイズではないのだ。


ナォウ、ナォウ


現れたのは黒い子ライオンだ。


(こいつがアグラベルグの子供か?)


背中から尻尾にかけては爬虫類のようになっていることからアグラベルグの子だと思うのだが。


ナー!!


子ライオンは霧の奥に進んでは戻ってくる動作を繰り返す。


ナー!!ナー!!


今度は怒ったように鳴く。


「…ねぇ付いてこいって言っているんじゃないかしら」

「………」


まさか、とはいいがたい、現にアグラベルグは俺たちの言葉を理解していたのだから。


「わかったついて行くことにしよう」


こちらの意図が伝わったのか何度かこっちを振り返りながら進んでいく子ライオン、そしてその後ろをついて行く俺達。


すると壁際まで連れていかれた。


ナォウ!!


子ライオンは一声鳴くと壁の隙間を進んでいく。


「ここか」

「私たちならギリギリ入れそうね」


俺たちなら身をかがめればギリギリ入れるサイズだ。


ケッケッケッ!


背後からあの鳥の鳴き声がする。


「考えている時間は無いようね」


クラリスはためらわず中に入っていく。


「っち仕方ないか」


毒ガスや、中に酸素のがあるか、とか考えてる暇がない。


「暗いな……」


唯一の光源が外の光だからほんの少ししか照らされていない。


安心したのも(つか)の間


ゲッゲッゲーー!!


入り口から鳥の足が入れられてガリガリと出口を削る。


ホラー映画ならとても怖いシーンだが、これは映画ではない。


なので


「チャンス!!」


壁を削ろうとしている足を掴み、最大限の力を出して洞窟に引きずり込む。



ミシミシミシミシ

ゲーギャー!?!?!?!?



なにかが引きちぎられそうな音と共に鳥の悲鳴が聞こえてくる。


「さらには全力で『天雷』!!!!」


出口に鳥の足に向かって全力で放つ。


ギィ………ギィ…………


すると次第に足は動かなくなった。


「……死んだか」


警戒しながら足を押し出し外に出る。


「……問題ないようだな」


目の前にいる鳥が死んだおかげで霧が晴れている。


「ちなみにこいつはどんな奴だったんだ?」


残った羽を拾い上げて鑑定してみる。


―――――

ミストガルーダの霧生羽

★×4


【魔霧放出】


ミストガルーダの羽、観賞用にも使えるが装備の素材としてはかなりのものだ。この素材は魔力を流すと霧を発生させる特徴を持つ。

―――――


(ミストガルーダ、ね)


残念ながら死体は数枚の羽根を残し消えていた。


しばらくすると子ライオンを抱えた、クラリスが出てきた。


「倒せたの?」

「ああ、霧の中は強いみたいだけど姿が見えているなら雑魚だったようだ」


実際、『天雷』を食らわせた段階でかなり弱っていたからな。


「……それなら」


(怪我をする前に倒してほしかった、かな)


残念ながらクラリスの耳はすでに切り落とされてしまっている。


(エリクサーぐらいを使わないと元には戻らないだろうな)


残念ながらこれについては謝るつもりがない。


「さて、ダンジョンコアは」


依然として壁に埋まったままだ。


「じゃあさっそく壊すとするか」


バベルでダンジョンコアを破壊する。


だが




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!






ダンジョン全体が揺れ動く。

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