機密のペンダントを漏らすなよ
もちろん帰りも『飛雷身』を使い、元の場所に戻る。
「……ってまだ寝ているのかよ」
あるていど日が昇って来ているというのに。
「まぁこのペンダントがあるならば襲われないとは思うが、過信しすぎだと思うぞ」
この世には絶対はないからな。
「……どうしよう、ペンダントを取り上げるわけにもいかないし」
このままでは移動することができない。
「仕方ない『ウォーターボール』」
水球を作り出し、一部を掬い、そのままクラリスの顔に掛ける。
「!?冷たい!!」
「ようやく目覚めたか、クラリス」
「朝から何ですか!?」
「……もうすぐ昼になるぞ」
正直早めの昼食にしようかと思ったぐらいだ。
キュウウ~~~
なにやらかわいらしい音が聞こえる。
「……聞いた」
「ああ、バッチリと」
すると拳が飛んでくる。
「危な!!」
「避けないでよ、さっきの記憶を吹き飛ばしてあげるから」
「落ち着け、食料は持っているのか?」
「……ないわよ、貴方を追うときに武器以外持ってきてないわ」
というので少量だが食料を分ける。
「それで眠り姫様、この後はどうしますか?」
「そうね、大まかな地形が知りたい、どこかの高台まで登ろうと思う」
「ああ、それは大丈夫」
俺は先ほど調べたことを説明する。
「まぁ大体の地形はそんなかんじだった」
「そう、あとはどこに出口があるか、ね」
「それも心配なく、このダンジョンの出口は森のどこかにはあるよ」
地上で北の森に来た時、神殿から入った先が森が見えたことから北か南の森のどこかにあることは間違いない。
「じゃあ、まずは北の森に行ってみましょう」
「「………」」
会話もなく北の森を進む俺ら。
片方の腕にペンダントの端を括り付けてる。
「にしてもこんなものがあるなんてな」
俺は左腕に括り付けていいるペンダントを見る。
「これはノストニアだけにある秘宝よ」
「……そんなもの教えて問題ないのか?」
「ええ、効果があるのはごく限られた場所だけだからね」
再び沈黙がこの場を支配する。
「……一緒に動くのは効率が悪い」
「そうね、じゃあ別行動する?………でも」
連絡も取れないし、ペンダントは一つしかない。
けど
「俺はいらないよ、あと」
「……時空魔法」
亜空庫から二つの道具を取り出す。
「それに魔力を流せば、こっちと繋がる」
取り出したのは通話用の魔道具で、繋がるのはこの二つだけに調整してある。
「こんなふうに」
『こんなふうに』
魔力を流しながらしゃべると、もう片方の方からも俺の声が聞こえる。
「へぇ~、便利な道具があるのね」
『便利な道具があるのね』
「あまりにも距離が離れていれば通じないがな」
この二台だけだと半径10キロほどが限度だ。
ということで俺たちは別々の方向に分かれるとした。
俺は中央の山側に、クラリスは北の端の方向に向かっていった。
「はぁ~『飛雷身』が使えない、か」
使えば道中を調べることができなくなる。
「地道に歩くか」
ガゥルルルルルル!!
すると俺の前に狼の魔物が現れる。
「はぁ、やっぱり集まってくるか」
あのペンダントがないから、まぁ襲われるわな。
それから襲い掛かってくる魔物を殲滅しながら森を調べ進む。
「……こっちは成果なしか」
森の麓まで探索したが出口は見当たらなかった。
「……そっちはどうだ」
『……こっちは出口は無かったわ』
「そうか……どうする?」
『一度合流しましょう、こっちにも雷の音が聞こえていたわ』
「……そっちまで響いていたのか」
『ええ』
すると山の方から威圧が飛んでくる。
「すまん、合流はまた後で頼む」
『どうしたの!?』
「ちょっと強そうなのに目を付けられただけだ」
坂の上に魔獣の影が見える。
魔道具を仕舞い、バベルを取り出す。
それと同時にモノクルも取り出し見てみる。
――――――――――
Name:アグラベルグ
Race:竜尾白獅子
Lv:76
状態:警戒態勢
HP:2540/2540
MP:4109/4109
STR:154
VIT:135
DEX:76
AGI:174
INT:97
《スキル》
【獅子王牙:34】【竜爪:38】【刃鞭尾:75】【焔硝鱗粉:23】【強靭毛:54】【超自然回復:20】【身体強化Ⅳ:7】【魔力察知:45】【臭気探知:56】【獣の勘:98】【思考加速:18】【限界突破:52】【言語理解:78】【念話:76】【火炎耐性:98】
《種族スキル》
【白炎咆】【竜尾伸縮】
《ユニークスキル》
――――――――――
モノクルで確認し終わると即座に坂を下って襲い掛かってくる、白色の巨大な獅子。
その速度は俺がギリギリ捉えられるほどだ。
「『飛雷身』!?」
即座にユニークスキルを発動し逃げる。
土埃が晴れると俺がいた場所に小さいクレーターが出来上がる。
(こりゃ、本気でやらないとすぐに死ぬな)
思考を切り替える。




