ノストニアの姫かよ
温かい
手の先にぬくもりを感じる。
「おっ気づいたか」
男の声がする。
それもまだ幼く高い声だ。
「おい……どこか痛むのか?」
心配してくれる声がする、その声が聞こえると安心できる。
「へへ~~」
うれしくてその体に抱き着く。
なんだろう、父上の背中みたい。
「おい」
抱き着くともっと暖かい。
「おい!!!」
大きい声で意識がはっきりしてきた。
「ようやく目が覚めたか」
「ようやく目が覚めたか」
先ほどまで寝ぼけていたがようやくはっきりと目が覚めたようだ。
抱き着いてきたときはびっくりしたが寝ぼけていたのならしょうがない。
それに今は俺をすぐにでも殺そうと睨んできている。
「さっき見たことは忘れなさい、じゃないと」
右手を思いっきり握り締めている。
今すぐにでも殴りかかってきそうだ。
まぁからかえそうなネタだからな、忘れるわけない。
「それよりこれからどうする」
「………」
「まぁ提案なんだが、ここを出るまでは協力しないか」
「……そうね、いがみ合って全滅したら意味ないものね」
ということで俺たちは協力関係になった。
「で、このダンジョンのことは知っているか」
見知った場所ならダンジョンのことを知っていると思ったのだが。
「……知らないわ、聖樹の近くにはダンジョンは一つもないはずよ」
けど、現に俺たちはダンジョンの中にいるわけだ。
「でも本当にダンジョンの中なの?」
クラリスはダンジョンに落ちる時には意識を失っていたからよくわかってないだろう。
「信用できないか?」
「……いえ」
だがクラリスは確信を持っているようだった。
「言ったでしょ、エルフは魔力を見ることができるのよ?ここの魔力は聖樹の魔力が届いてない」
「…………つまり北の森の魔力じゃないことは分かるってことか」
「そうよ」
エルフって便利だな。
「で、どうする?今から動くか?」
「……やめときましょう、貴方の戦い方を見て思ったのだけれど……本来ならとても目立つわよね」
「まぁな」
昼間ですら音が響いて目立つのに、光が乏しい夜なんて目立って仕方ない。
「なら動くのは明日にしましょう」
「そうだな」
どうやら状況を読むことができるエルフのようだ。
(ここで無理に移動しようとするならば協力をやめようと思ってたが)
問題なくて安心した。
ということで交代で眠り夜を越す。
朝日の光で目が覚める。
(………なんでダンジョンに朝日があるんだか)
天上は空のように色が変わっていく。
「まぁ考えても仕方ないか」
原理が気になるがとりあえず置いておく。
「とりあえず腹減ったな」
ちなみにどうやって俺達があのペンダントの影響を受けているのかというとペンダントの鎖を外し、それぞれの足に括り付けている。
まぁ、そのせいでとても動きづらいが。
横になっているクラリスの邪魔にならないように動き、座る。
「こいつが眠っている間に確かめさせてもらうか」
亜空庫からモノクルと食料を取り出す。
――――――――――
Name:リアナ・クラリス・ノストニア
Race:エルフ
Lv:32
状態:普通
HP:335/342
MP:1745/1745
STR:25
VIT:23
DEX:78
AGI:62
INT:45
《スキル》
【柔拳術:45】【弓術:12】【火魔法:1】【水魔法:2】【風魔法:4】【土魔法:5】【雷魔法:1】【身体強化Ⅲ:7】【料理:1】【家事:3】【謀略:7】【礼儀作法:9】
《種族スキル》
【魔力読み】【自然の語り手】
《ユニークスキル》
【麗舞ノ拳姫】
――――――――――
食料片手にクラリスのステータスを確認する。
「ふむ、ステータスだけなら完全に後衛向きに思えるんだが、ハム」
一応魔法は使えるみたいだが【柔拳術】の高さが異常だ。
「しかし、こいつもユニークスキル持ちか……」
ノストニアだけに限って言えばおかしくはないな。
「技量は何とも言えないけどステータスだとリンとギリギリいい戦いができるかな」
心もとないSTR、VITだが【身体強化Ⅲ】で補っているのを考えるとそれくらいだ。
「さて、ご飯も食ったことだし」
少し周囲を見回ってくるとしよう。
足のペンダントを外し『飛雷身』で高台に上り辺りを見回す。
俺たちがいた草原は中央からやや東側に位置しているようだ。
東と西が草原となっており、北と南が森林、中央に山が一つある。
そしてそれより先だが。
「まさに奈落って感じだよな」
東の端までくると、影になっておりその先には底が見えない、まさに奈落と言えるほどだ。
「少し試してみるか『雷霆槍』」
一番遠くに届く雷の矢を放つと暗闇に突き刺さり飲まれていく。
「うへぇ~~あの悪魔の技みたいだな」
しっかしこの上に落ちなくて本当に良かった。
「さて戻るとするか」




