次から次にほんともう何なんだよ!!
クラリスは気を失っている。
「……さて逃げ」
クラリスを人質に逃げようとするのだが、急に地面が動く。
「次々になんなんだよ!!」
沈んでいく先を見てみると大きな虫の牙が見える。
「蟻地獄かよ!!」
急いで上に逃げようとするが、砂に流されていくクラリスが目に入る。
「ああ、しかたねぇ」
クラリスの元に移動して片腕で体を持ち直す。
「ちっ、何のスキルかしらないけど移動しにくいな!!」
埋まっている部分が粘着性になっておりとても動きづらい。
(……こりゃダメだな)
クラリスを連れたまま上に上がるはまず無理だ。
(『飛雷身』は俺だけしか移動できないし、俺だけならまだしも俺の下半身とクラリスの体半分が砂に飲まれたままじゃ力づく逃げることはできない)
ということで逃げるという選択肢は取れなくなった。
(さすがに逃げる選択肢は後味悪すぎだな)
まぁ本当に命の危機を感じたら見捨てて逃げるが。
そのまま流されて牙の元まで吸い込まれる。
(まだ)
牙だけではなく頭を出してこちらを見てくる。
(まだだ)
口を開けてくるのを待ち構えている蟻地獄。
(……今か)
十分近づいた瞬間に『天雷』を放つ。
ギシシャァァアアアアアアア!!!!!
どうやらかぶっていた砂にほとんどを吸収されて殺すには至らない。
「おいおいおい!!」
するとアリジゴクはどんどん砂を掛けてくる。
「埋め殺そうってのかよ」
すると腕が引っ張られる。
「こ……れに……ま…り……く」
若干回復したクラリスが緑のペンダントを差し出してくる。
「魔力を流せばいいんだな!!!」
確認するとコクンと頷く。
魔力を流すと俺の体とクラリスの体が緑の光に包まれる。
するとアリジゴクは俺たちを見失ったかのように周りをキョロキョロと見渡している。
「……これは何なんだ」
「ま…よけ……と」
(まよけ……魔除け、か)
つまり魔物を回避するペンダントか。
「まぁなんにせよこれで助かったな」
とりあえず上に上がろうとするのだが……
「っておいおいおい」
アリジゴクは地面に潜るのだが、その際に土を砂にし、どんどん下に戻っていく。
俺たちは近い位置にいたので、それに巻き込まれて砂に流されていく。
「大きく息を吸い込め!!」
アリジゴクが進めば俺たちもその後ろを付いていくように流される。
(いつまで流されるんだよ!!)
すると突然投げ出された感覚がする。
「は………え?!」
なぜだが今は空にいて落下している。
「どうなって?!」
とりあえず落下のことを考える。
(やっぱ俺だけなら助かるんだが……)
『飛雷身』で飛んだ際はそこから落下が始まるので地上に飛んだら衝撃をゼロにできる。
だが
「お前だよな……」
わきに抱えているクラリスはこのまま離せば落下死するだろう。
仕方ない。
クラリスを包むように抱え俺が下になる。
(タイミングを間違えるなよ)
下を見ながらスキルの準備をする。
「『真龍化』それに水魔法『ハイドロウォル』」
まずは強く打ち付けてもいいように強化用の『真龍化』、そして水魔法の『ハイドロウォル』。
この水魔法は水の壁を作る魔法だ。
それをクッションにし衝撃を和らげる。
そして水の層を抜け、地面に衝突する。
「ふぅ~~よかった問題ないな」
どこも痛くなっていないのを確認する。
「で、クラリスの方だが……」
『ハイドロウォル』で泥になった場所で気絶している。
とりあえず無事そうなので放置して……
「なんで地面の下が空なんだ?」
空の一部に穴が開いており次第に埋まっていく。
「これが奈落に落ちるってか」
笑えねぇ。
そしてこの空間に心当たりがある。
「……ダンジョンか」
おそらく、地面を突き抜けてダンジョンに入ってしまったのだろう。
オォオオオオ!!!!!
ギャア!!!ギャア!!!
ゴォオオオオオオオオ!!!
遠くからいくつもの魔物の声が聞こえる。
「まずいな」
声の量からして北の森での魔物の数とは比べられないほど多いだろう。
「……また借りるぞ」
ペンダントに魔力を流し、安全を確保する。
しかし俺だけが魔力に包まれておりクラリスは適用されてないようだ。
(さっきはできたのにな)
それからいろいろやってみた結果、どうやら皮膚が触れ合っていなければいけないようだ。
ということでクラリスの手を俺の背中に触れさせている。
「にしてもここからどうするか」
さすがに長らく帰らないと父上が騒ぎそうだ。
(さすがに母上が父上を押さえるから夏休み中は何とか問題ないと思うけど……)
結構不安だ。
「(出るにはダンジョンを攻略しなくちゃならないが)こいつにも協力してもらわないといけなくなるか」
この広大なエリアをクリアするのには探知もしくはセーフティエリアの場所を作り出せるような技能がなければ無理だろう。
その点で言うと、このペンダントがあるならば問題なく過ごせるだろう。
(しかたない、ダンジョンを出るまでは協力してもらうしかないか)




