うへ~うじゃうじゃと来やがった
「なんですって?」
夜、北の捜索を終え西に戻ってくると、食料集めの部隊が一つ帰ってきてないことが伝えられる。
「現在、捜索隊を出しているのですが一向に見当たらず」
隊をまとめている副長から現状を教えてもらっている。
「北にはいなかった、そして帰って来るときも遭遇もしなかった………隊の皆を起こしてください」
「どうなさるおつもりで」
「すぐさま動きます、明日になるとまたすれ違う可能性が出てきますから」
「姫様は不明な存在が三人をさらったとお考えですか」
「もし、食料を集めに西に来て三人と遭遇したと考えれば辻褄が合います」
北から西に行ったのでないのなら聖樹の元から来たか南から来たとしか考えられない。
「では」
「ええ、私が聖樹の元へ、副長が南へと向かいます」
「……一応西にも数人残しておこうとおもいますが」
「ええ、もちろんです、三人がまだ帰って来てない可能性もないわけではありませんので」
ということで急いで部隊を準備して行動を起こす。
「はぁ~~~疲れた」
とりあえず静かになった三人を枝の上に寝かせた。
「うるさいのが増えると苦労が増える……」
あの後、二人も目を覚ましたんだが。
最初の一人が何やら伝えると喚く喚く。
なので気絶させて、聖樹のとある枝に吊るしている。
「ほんと~~~うに疲れた…………」
俺も木に登りハンモックで寝ようとするのだが。
「止まれ!!」
背後からキリキリという音と複数の足音が聞こえる。
(あいつらの仲間か)
「大人しく両腕を頭の上に上げろ」
言う通りに両手を挙げる。
「そのままゆっくりとこちらを向け!!!」
ゆっくりと声のする方角を向く。
(1、2、………15はいるな)
「答えろ!!なぜこの場に人がいる!!!」
「答えよう……だがこの場で最も偉い奴とだけにだ」
「状況を分かっているのか!!!!!」
「………」
すると視線が自然とある方向に集まる。
「私がここの隊長です」
「……………」
「では問います、人がなぜこのような場所に来ているのですか」
「………………」
「なぜ答えないのですか!!!!」
「はぁ言っただろう、一番偉い奴と話をしようと」
「「「「「!?」」」」
気づかれてないと思っているのか。
たしかに視線はこのエルフの場所に集まった、だけどそのエルフ自身も視線を送っていたのだ。
するとおくからもう一人出てきた。
「なぜ分かったのですか」
現れたのは俺とそう身長が変わらない桃色の髪をした少女だった。
「…………お前が、か?」
いや、俺もとやかくは言えないが。
「……なにか?」
「いや、なんでもない、それで質問は?」
「あなたは何者なのですか?」
それはあのエルフの少女にも聞かれたな。
「名前はバアル、見ての通り人だ」
「ここで何をしているのですか?」
「家に帰る準備かな?」
「はぁ?」
いや、まぁそうなるよな……。
森に急に子供が現れ何をしていかもわからず、そのうえで家に帰る準備と訳の分からないことを言っているんだ。
「次に俺も聞いていいか?」
「……どうぞ」
「あなたの名前は?」
「………は?」
自己紹介はコミュニケーションの基本だ。
「……クラリスよ」
「よろしくクラリス、で俺はこれからどうなるんだ?」
「抵抗しないのならば捕縛して事情聴取させてもらいます、その際は丁重に扱うことを約束します」
「もし抵抗したら?」
「その際は」
弓を引く音が鳴る。
「殺すか……」
「降伏してくださいますね」
ここで降伏したらどうなるのか。
捕まったら丁重に扱うとあるが、事と次第によっては拷問も普通に受けるだろう。その際にゼブルス家ということを伝えるとする、待遇はそれなりだろうが身代金を要求、ノストニアが俺のことを調べユニークスキル持ち、果ては魔道具作成者だと知れたら………
(ここは逃げるに限るな)
「さてどうしたものか………なぁ取引しないか」
「取引?」
ああ
「俺はお前たちの仲間であろう三人を押さえている」
するとエルフたちが色めき立つ。
「で、その三人を渡す代わりにここは見逃してくれないか」
さてどうでる。
「知らないのですか、エルフは魔力を感じ取ることができます」
「……つまり?」
「すでに三人が救出されているということですよ」
クラリスの視線を追うと三人を置いている木の枝に向かっているエルフが見える。
(こりゃまずったかな)
「今のやり取りであなたがどんな人物か理解できました」
本当にまずいな。
「捕縛する必要がありませんね、放て!!!」
『飛雷身』
矢が放たれると同時に『飛雷身』で回避する。
「っ追え!!」




