(そのままベラベラと喋ってくれよ)
「それで西側にいた痕跡はあった?」
西側にたどり着くと全部隊を拡散し探索させた。
「ええ、いくつかの部隊が痕跡を発見しています」
「ですが、それは人の靴跡のみで、あの光や破壊跡の物かは不明です」
「……一応確認だが、味方と見間違えたりは?」
「ありえません、それに我々の靴跡とは明らかに違いました」
じゃあ光の正体は人族?
(ありえない、人は英雄でもない限りあのようなことができるわけがない)
私たちはレベルを考慮に入れなければ、魔力量は子供でも大人の人よりも多い。
魔力量で劣る人があのようなことができるとは考えにくい。
「……伝説級のアイテムでも手に入れたのかしら」
レア度が高いアイテムは時折このように呼ばれることがある。
レア度が高くなれば高くなるほど特殊性は強くなり、とてつもなく強力にもなる。
「姫様、西側を探索しましたが既にこの場を去っているようです」
「……分かりました、明日は北側にも探索の範囲を広げます。ですがその際に食料が多いこの地に戻ってくる可能性があるので部隊を二つに分けます」
とりあえず今日はこの場で夜を越すことにした。
次の日、起きて残り少ない食料を食べて今後の方針を考える。
(次はどこを探索するか……まぁ今日はとりあえず食料集めだな)
ということで今回は西で食料を可能な限り集める。
さて、簡単な罠でも作ろうとしたけど、自分で追い立てた方が簡単だと考える。
「とりあえず」
ユニークスキルを発動させるとそのまま近くの茂みに腕を突っ込む。
ギュウウウ!?
角の生えたウサギを捕まえる。
「……とりあえず」
そのまま手放し、落下中のウサギの首を刎ね、再び足を掴む。
「血抜き……はこれでいいのか?」
そのまま血が出なくなるまで持ち上げる。
「とりあえずはこれでいい」
そのまま亜空庫を開き、仕舞う。
亜空間では真空状態になっているので一応は腐りにくくなってはいる。だが、殺菌などしていないのでほんの少しだけ保存できる期間が長くなる程度だ。
それからも小動物を狩り血抜きをして亜空庫に仕舞う作業を行っているのだが。
(……つけられているよな)
後ろから一定間隔でついてくる気配があるのがわかった。
「……三つかな」
耳を澄ませて聞こえてくる音を聞き分ける。
すると三方向から枝が揺れる音が聞こえる。
(位置は後ろ、右斜め後ろに左か)
こりゃ、一瞬で終わらせないとすぐに逃げられるな。
「『飛雷身』」
「「!?」」
「『放電』」
後ろ二人の中間地点に移動すると『放電』で麻痺させる。
「『飛雷身』」
そして最後の気配の背後に移動する。
「!?」
「『放電』」
驚いているところ悪いがさっさと気絶してもらう。
地面に倒れる音が聞こえる。
「ん?」
枝の上から下りてきたのは耳の長い女性だった。
とりあえず三人を担ぎ拠点としている木の根元に移動する。
「一応、暴れられたら困るから縛りあげておくか」
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「ん、んん?あれここは」
どうやら一人が起きたようだ。
「ん、ようやく起きたか」
ウサギを串焼きにしている手を止めて起きた一人を見る。
「なぜこんなところに人がいる!!」
「あ~、質問、お前はエルフか?」
「どこからどうみても森の賢者であるエルフだろう!!」
自分から言うのか。
「というか縄を解け!!」
「いやだよ、解いたら暴れるだろう?」
エルフは近くの木に吊り下がっていて、自分の振動で軽く揺れている。
「というか、なんだこの結び方は!!!」
……試してみたかったんだよな亀甲縛りで吊るすの。
(まぁなんの面白みもなかったが)
最初の一人で飽きたのでほか二人は普通に縛って吊るしている。
「おい、答えろ!!」
「じゃあお互いに質問して答えよう」
「はぁ~何を言って」
「だって俺だけが一方的に答えるのって不公平だろ、だから俺が答えたら次に質問に答えてよ」
「いいだろう」
よし、とりあえず情報源になった。
「まずは私からだ、お前は何者だ?」
「俺はバアルだ、種族は人、年は今年で七つになる」
「いや、そういうことを聞きたいんじゃ」
「次は俺の番だ、ここはなんていう国なんだ?」
「………ここはノストニア」
こいつがエルフであることから薄々は勘づいてはいたが………まさか本当に外国に来ていたのかよ。
「では次に私だ、お前は何の目的でこの地に来た?」
目的か………
「目的はない……しいて言うなら事故だな」
「事故………だと、この地がどのようなとこかわからぬのか!!!!」
正直に話したら少女の怒りを買った。
「ここは、神樹を守護する6つの聖樹がおる聖地なのだぞ!そんな場所に人が何の用もなく入る、入れる場所ではない!!!!」
少女の口ぶりから結構な場所に来ていたようだな。
「我々、樹守ですら立ち入るのに聖獣の許可がいるのに人が立ち入れる場所ではないわ!!!」
おお~いろいろ情報が出て来たな。
「ああ~待った、その聖獣ってのは」
「この聖樹を守護する聖なる獣のことだ!」
そんな獣一度も見てないが。
「ちなみに聞きたいんだが………聖樹ってのはこれの事か?」
「え…………え?!」
今いるのは最初に引っかかっていた樹の根元、そしてその樹はここ周辺でずば抜けた高度を保っている樹だ。
予想するにこの樹は
「な……んで………」
「いや、ここは俺の拠点にしている場所だから」
「この無礼者めが」
先ほどよりも激高している状態になってしまった。
それからいくら会話をしようとしても罵声しか飛んでこなくなったので聴取は終了した。




