雇ってほしい?じゃあこの仕事をしてもらおうか
セレナの秘密を知ってから、やたら俺たちに近い距離を取るようになった。
「バアル様、あそこは分かりますか?」
「バアル様はなんで槍をお選びに?」
「珍しいお肉が手に入ったのですが今晩一緒に食べましょう!!」
という風に纏わりついてくる。
「リンさん、これ頼まれていたものです」
「ええ、ありがとう」
「いえ、これも後輩として当然です」
後輩?
「はい!!私、セレナ・エレスティナはバアル様の下で働きたく存じます!!」
そういい、綺麗なお辞儀をしてくる。
「………」
セレナの価値を考える。
前世の記憶持ち、専門知識は無いようだがそれなりの書類仕事はできるだろう。まぁこの世界はその書類仕事で十分に文官として働けるがな。礼儀作法の点も大人の記憶があるが故かしっかりとしている。
ここで雇い入れても損がない相手であると判断する。
「わかった、セレナを雇うとしよう」
「はい!!」
ということでセレナに何か割り振らなければならない。
だがその前に
「まずは能力を知りたい、そのために鑑定するがいいか」
「あ、はい」
モノクルを取り出すとセレナのステータスを調べる。
――――――――――
Name:セレナ・エレスティナ
Race:ヒューマン
Lv:5
状態:普通
HP:68/68
MP:77/77
STR:8
VIT:4
DEX:7
AGI:5
INT:19
《スキル》
【剣術:2】【火魔法:2】【水魔法:2】【風魔法:2】【土魔法:2】【雷魔法:2】【光魔法:2】【闇魔法:2】【料理:4】【家事:3】【算術:12】【化粧:8】【礼儀作法:9】
《種族スキル》
《ユニークスキル》
【多重ノ考者】
――――――――――
「“多重ノ考者”か、どんなスキルなんだ?」
「えっと、意識を二つに分けるって言えばいいのかな、剣術のことを考えながら、魔法を構築することができますね」
「なんか、使い勝手がいいんだか悪いんだか、わからんな」
「それはバアル様のユニークスキルが強すぎるだけですよ!!」
普通は発現してもこれくらいなのだと言われた。
「それにしても全属性の魔法を使えるのか」
「ええ、あの世界では魔法というものが無くて、とっても楽しくて覚えました」
「……ならそのまま魔法を鍛えるべきか?」
「ええ、それに剣も使えるように鍛えてもいますよ!!」
こいつは万能を目指しているみたいだな。
「わかった、お前はこの学園で出来るだけ魔法について調べろ」
「え、それが仕事?」
「ああ、そして覚えた魔法を俺のために役立ててもらうぞ」
「わ、わかりました」
ということでセレナの方向性が決まった。
「あの魔導書を見つけるくらい、魔法が好きなんだろ」
「……あはははは」
セレナは素直に白状した。
『ゲームではこれを渡すとバアル様の好感度が上がるから』
だそうだ。
(確かに興味を惹かれる内容だったが)
内容を覚えているのか聞くと。
「大丈夫です、私物覚えだけはとても良くって全部暗記しています」
ということらしい。
「じゃあ、図書館にある魔法のことを全部暗記してね」
「………全部?」
「全部」
その後、セレナは図書館で俺の恨み言を言っている姿がよく見られたとか。
そして夏の長期休暇が訪れる。
「夏休みですか?」
セレナはそういう。
「間違ってはいないな、約二月間は休日となる」
そしてそれに伴った宿題が出される。
(まぁこれくらいなら一日あれば終えることができるな)
生徒に関してはみんな様々だ、故郷に帰省するもの、寮に残りバイトをする者、勉学に励む者。
で俺はゼブルス領まで帰省することになった。
リン含めて5人を引き連れて。




