まぁ疑われますよね
学校が終わり寄宿舎に戻ると手紙が来ていた。
まぁ簡単に言うと出頭命令だな。
ということで休日、俺はリンを伴って近衛騎士団長グラスと会談することになった。
「確認なのだが、この報告書に嘘偽りはないな?」
「ええ」
この場には俺、リン、グラス、ルドル、それとアーサー陛下だ。
「ではいくつか質問だが、なぜあのタイミングでルナに禁輸品を探らせるように指示をした?」
まぁ疑うよな。
「いえ、王都のイドラ商会で少しきな臭い噂を耳にしましてね」
「だがそれだけで、命令を出すのか?それに実行犯は元々ゼブルス家に雇われていたようだが?」
完全にグラスは俺を疑っているな。
「まずルナに禁輸品について頼んだのは信憑性がとても高かったからですよ」
「信憑性が高いだと?」
「ええ、実は二つ目にもつながるのですが、私的に雇っている者たちにその仮面を探すように命令していたのですよ、その際に仮面の男が禁輸品に手を付けたという情報が来ましてね」
「ほ~~」
「詳しい情報は伏せさせてもらいますが、どこかの貴族が依頼で禁輸品を使うように指示したようですね」
「詳しいな」
「ゼブルス家の密偵は優秀ですからね」
何も嘘は行ってない。
「…どうやら嘘は言ってないようだな」
壁にかけてある像を見ながらそういう。
「あれは、嘘を発見する魔道具ですか?」
「そうだ」
「………」
おそらくダンジョン産の魔道具だろう、そしてその効果は部屋の中にいる全員に影響すると予想する。
「で、疑いは晴れましたか?」
「ああ、とりあえずは問題ないだろう」
「とりあえずですか」
物証がないから今は信用するということか。
「さすが近衛の隊長、身内でも容赦なく疑うのですね」
「皮肉か?」
「いえ、褒めているのですよ。確証がないのに無条件に信用を寄せる馬鹿よりはよっぽど好感が持てますよ」
俺の疑いが晴れたので今回の要件は終わりだ。
「ああ、バアル殿、10日後にまた召集がかかるはずなのでお忘れなく」
「ああ、例の会議ですか」
表向きは王家主催のパーティーだが、本来は裏の騎士団の援助者が集まり裏の騎士団の情報からの報告を受けるものだ。
「それはそれは楽しみで夜が眠れなくなりそうです」
ということで10日後。
礼服を着た俺とリンはパーティーに参加する。
「いや~~王都主催のパーティーなんて久しぶりだな~」
「ほんとうね、王都も変わってないわね」
なぜだか父上達が一緒に来ている。
「バアル、お母さんたちが来たのは二人がいなくなっても違和感がないようによ」
あれ?
「父上はあの会議のことをご存じなのですか?」
「もちろんだよ、私はかつてアスラ同様に陛下の右腕を務めていたのだよ?」
でも今は二人と距離を置いているのだが。
「まぁ致し方ない理由があったのだよ」
そういう父上の顔は微塵も後悔などはなさそうだった。
つまりは俺たちの代わりというわけか。
パーティー会場に到着すると。
「じゃあひとまずあいさつ回りに行ってくるがバアルたちは……迎えが来たようだな」
「バアル様ですね、陛下からお呼びがかかっております」
ということで父上と離れて、使者について行く。
連れてこられたのは何の変哲もない部屋だ。
「ここが?」
明らかに数人しか入れなさそうな部屋だが。
「いえ、この部屋は入り口にでしかありません」
使者はリズミカルに壁をノックする。
すると壁の一部が動き通路が現れる。
「ではお進みください」
そういうと使者は部屋を出ていく。
「……バアル様」
「ああ、行くぞ」
通路を進むとほんのりと暗く広い会議場までたどり着いた。
「バアル様の席はあちらになります」
通路の横にいた使用人がそう教えてくれる。
教えられた席に着き周囲を見渡す。
(ざっと50人ほどか)
会議場は大きな席が一つあり、それを囲むように配置されている。
(アスラ殿も出席しているのか)
まぁ当然か、グラキエス家は古参らしいからな。
しばらく周囲を観察していると大きな席にアーサー陛下が着席なされた。
「では、裏の騎士団の定例会を始める」
その声で会議が始まった。




