五人の全力
森鬼は一度動きを止め、とてつもなく大きい咆哮をあげる。
「うっ耳が!?」
僕たち全員が耳を押さえて動けなくなる。
だけど目に刺さった矢と足元の水は続いているので森鬼自身も動けない、そう僕たちは思っていた。
だけどこの咆哮には違う意味があった。
「キャアアア!!」
悲鳴で後ろを振り返るとソフィアが鳥の魔物に襲われていた。
「マズイ!!」
一番近くにいるカリナが剣を取り対処する。
グルゥウウウウ!!
すると違う魔物の声が聞こえてくる。
「なっ!?まだくんのかよ!!」
横から狼の魔物が襲い掛かってくる。
「こっちくんな~~!」
リズも蛇型の魔物に襲われて援護できなくなっている。
こうしてほかの魔物に対処している間に森鬼の視界が戻り、カリナが剣を使っていることで水の拘束が破られた。
「これ最初よりも悪くなっているな」
オルドの言う通りだ、振出しに戻っただけではなく敵は増えてこちらは魔力を消費した状態になっている。
「どうする、アーク」
「……オルドはみんなの援護して」
「一人で相手をするつもりか?」
「耐えるだけなら僕一人でもなんとかなる」
僕のユニークスキルは守りの方が優れている。
「……わかった」
オルドはカリナ達の方に向かっていった。
ガァアアアア!!!
「頑張って時間を稼がないとね」
振り下ろされた棍棒を避けて、先ほどのように腕を駆けあがる。
「おっと」
反対の腕で振り払おうとしてくるのでそちらの腕に飛び乗る。
「あっまずい!!」
腕を揺されて振り落とされた。
その隙を森鬼が見逃すわけもなく殴られる。
ドンッ!!!
僕は殴り飛ばされた……のではなく目の前に現れた五角形の光の盾が森鬼の拳を受け止め自然落下で地面に降りる。
これが僕のユニークスキル『天上の光器』の力だ。
今発動したのは『極光の聖盾』というもので、一度の攻撃を必ず防ぐ。
これだけ聞けば強く感じるだろうがもちろんデメリットもある、消費魔力量は威力次第なのだ。なので計算上魔力量さえ足りていればどんな攻撃も受け止めることができる。だが逆を言えば魔力量が足りなければ受け止めることはできなくなる。
自分の中の魔力量を確認すると先ほどの拳で3割の魔力が消費された。
「あと1発か……」
いままで消費した魔力であと一撃しか防ぐことができない。
それも身体強化を発動しているから徐々に魔力を消費している。
「あっちは……」
オルドたちは少しずつ魔物の数を減らしている。
(もうすこしで何とかなりそうだけど)
もう一度魔物の群れを呼び出されたら、もう勝てる見込みがなくなるだろう。
今度は足甲から膝、腰、背中へと駆けあがっていく。
(できるだけ頭の近くで翻弄して咆哮させないようにしないと)
すると僕がいるにも咆哮をしようとする。
(なら)
首元に剣を突き刺し叫べないようにする。
だけどその代わりに振り払った腕に当たってしまう。
「本当にまずい、魔力もあと少し」
腕を『極光の聖盾』防ぐと自分の魔力が底をつきかけているのが理解できる。
これにより身体強化すら切れる。
森鬼は僕を見下ろして黒く笑う。
そして
オォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!
またあの叫び声が響き渡る。
「ワリィ、遅くなった、だけど」
「ああ、あの叫び声が」
どうやら後ろの魔物がひと段落したようだけどまたすぐにまものが集まってくるだろう。
「アーク、さっきみたいにしていたらいつまでも後手に回るぞ」
オルドのいう通りだ。このままでは先ほどよりもひどくなっている。
「オルドの言う通りだわ」
「そうですね、次の魔物が来るまでに森鬼を倒すべきです」
「うん、それしかないと思うよ」
全員の意見が一致した。
「わかった」
「ちょっと待ってね」
ソフィアが手を当ててくる、すると魔力が流れ込んでくる。
「これで少しは回復できたでしょうか」
「ああ、ありがとうソフィー」
これでもう一度だけ防げるだけの魔力量を渡される。
「それじゃあ行くよ」
「ああ!」
まず僕とオルドが駆けだす。
『泉の精霊よ、我が声が聞こえるならば力をお貸しください“泉の奔流”』
次にカリナが精霊を呼び出す。
「縛りあげなさい!!」
先ほど同様に足元にできた水は触手のような形を成し、全身を縛りあげるようになる。
カリナは精霊魔法に集中する。
『炎の聖霊よ、汝が器に宿りその力を発することを願い奉る“炎霊宿り”』
ソフィアの神聖魔法で僕の剣とオルドの手甲、リズの矢が炎を纏う。
おそらく再生させないために焼き焦がす選択をしたんだろう。
ブンッ!!
振り下ろされる大木を横に飛んで躱し、またそのまま上に上る。
何度も同じ行為をしているので森鬼もすぐに振り落とそうとしてくるが。
「止めなさい!!」
カリナの精霊魔法で腕の動きを阻害しているおかげで振り落とされる事は無い。
「ありがとう!!」
「サンキュー!!」
僕とオルドはそのまま顔までたどり着く。




