厄介な物を生み出したな
再びあの咆哮が聞こえる。
「!!注意しろ魔物が来るぞ!?」
オルドは咆哮を聞いた瞬間そう俺たちに告げる。
「どういうことだ?」
「あの咆哮は魔物を呼び集め、操るんだ!!」
つまりは咆哮の主が魔物を呼び寄せ操り俺たちにけしかけると。
「どうしますか?」
「逃げるに決まっている、俺だったらあの程度の魔物は倒せるがお前たちを守りながらだとすこし厳しい」
基本、俺の戦い方は味方すら巻き込む可能性を持つからな。
「き、来た!?」
「お前たちはそのまま走り続けろ」
キャンプの方向に5人を走らせて俺が殿をやる。
(にしてもすごい数だな)
走りながら後ろの様子を見てみる。
後ろには先ほどの何倍もの魔物の群れが来ている。
(なぜ異種族で争わない?)
いくら魔物とはいえ異なる種族で群れを成すなどあり得ない、それも多種族となるとなおさらに。
つまり協力関係ではなく。
「隷属か、洗脳」
この2つが考えられる。
「っと、まずいな」
足の速い魔物が追い付いてきている。
「仕方ない、そのまま走り続けろ!!」
5人にはそのまま一直線に走らせて、俺は立ち止まる。
(さてやるか)
このまま走ってもいずれは追い付かれるだけだ、なら一番死ににくい俺が足止めをした方がいいだろう。
(それに『飛雷身』を使えば逃げるのは容易だろうからな)
てことで景気よくやるとしよう。
「特大の雷霆槍!!」
いつもの数倍の魔力を込めて発動させる。
雷の槍が魔物の群れに刺さると特大の放電が始まり、遠目からも分かるほどの稲光を放つ。
「う~~ん、少しやりすぎたか?」
魔物を感電死させるどころか小さくない範囲の地形を変えてしまった。
(やっぱり駄目だな、魔力を込めれば込めるほど威力が上がっていく)
雷霆槍の威力は魔力を込めれば上昇する、しかも二次関数並みに上がっていく。
(効率だけ考えても魔術とは比較にならないな)
同じ規模の威力を再現しようとしたら1000倍の魔力量でもおそらく足りないだろう。
「さて、あいつらに合流し」
合流しようと足を向けるのだがとてつもなく嫌な気配がする。
「!?『飛雷身』!!」
瞬時にこの場から距離を取る。
すると俺の居た場所の半径50メートルほどが真っ黒に染まりすべてを飲み込んで行く。
「ふむ、案外勘がいいようだな」
空から声が聞こえる。
「おいおいなんで悪魔がいやがるんだよ?」
蝙蝠のような羽、マグマのように赤くなっている角、一切の光も反射しない黒い肌、人のような形を取っているが本能からアレは敵だとわかる。
「ふむ、ヒューマンにしては強いな」
黒い顔にある4つの目が俺を捕らえる。
「だれか悪魔召喚でもしやがったのか」
「ふむ、ワガハイは呼ばれたのではない」
「じゃあ何でここにいるんだよ」
悪魔は怒りや憎しみなどが一か所に集まったときに発生するか召喚陣を描いて呼び出すしか方法はないはず。
「ふむ、面白そうな魂を見つけたので観察していただけである」
「つまりは元々存在していた悪魔か」
「そうであるな、ワガハイが生まれたのは200年ほど前だったのである」
お互いにお互いを観察する。
「おしゃべりついでに教えてくれや、あの魔物はお前の仕業か?」
「ふむ、さっきの醜い群れのことか?それならワガハイではないぞ」
「へ~、じゃあ誰があの群れを統率しているんだ」
こいつではないなら何が魔物を操っている?
「それなら、ちょうどあの五人が戦っている相手である」
悪魔が指差す。
「……なるほど森鬼か」
「いかにも森の王たるトロールがあの魔物どもをけしかけていたのであるよ」
森鬼、この魔物が見つかったら騎士団が出るほどの危険な魔物だ。
「あの魔物が何をするか見るのも面白かったのでござるが、それよりも面白い遊び相手がいたのでこっちにきたのであるよ」
「それが俺か」
俺の言葉を聞くと口裂け女のように亀裂が入り笑う。
「ワガハイは闘争を快楽とする悪魔である」
「妙な悪魔もいたもんだ」
それから言葉はいらず、俺は槍を悪魔は歪な爪を構え戦闘が始まる。




