合流だが馬鹿は死んでも治りそうもないな
「おい、何かおかしくないか」
夜、平民のうちの一人が何かを感じ取ったのか食事中にこんなことを言い出した。
「何を言っているんだか」
だが俺たちはその言葉を戯言だと思い、まともに取り合わなかった。
その後、夜になり見張りを平民にやらせているとなにやら物音が聞こえてくるのだが。
「問題ないようだ!大けがをしたものが出ただけだ!」
そんな声が響いてきた。
これを聞いて俺たちはどこかの班が騒いでいただけだと思い、そのまま騒ぎを無視した。
そうして夜が過ぎ、眠りに落ちたのだが。
「するとあいつが急に現れて」
「あいつ………とりあえず移動しましょう」
私は三人を誘導してキャンプ場に向かおうとするが。
オオオオオオオォォォォォーーー!!!!!
魔物の叫び声が聞こえてくる。
「あ、あいつだ?!」
三人が再び混乱する。
「ふぅ、落ち着け!!!!」
私は三人を一喝する。
「いまここで慌てて何になる!!助かりたければ騒がずに付いてこい!!!」
私の一喝により三人は正気を取り戻したのかこちらを見てる。
そして、おぼつかない足取りだが確かについてこようとする意思がある。
(こちらはこれで大丈夫でしょう、そっちは頼みますよバアル様)
あの声の魔物は気になるが三人のことを考えてみんなの元に戻る。
ギャギァ!!
ガァー!!
シャー!!
咆哮の場所に向かうのだが道中に魔物の数が激増している。
「邪魔!!」
魔物どもを薙ぎ払いながら進む。
(にしても数が異常だな)
弱い魔物が大量発生している。
それも方向の場所に近づけば近づくほど数が増えていく。
(そろそろだと思うんだが)
すると森の隙間から白い光が漏れ出ている。
(あっちか)
急いで移動する。
そこには多種の魔物の群れに囲まれている。
今は大した怪我はしていないが疲労しているのが遠目からでもわかる。
「ふぅ~~」
俺は少し離れた位置に立つ。
「『雷霆槍』」
雷で出来た槍を生み出し構える。
「フン!?」
雷霆槍を魔物の群れに放つと広範囲に放電が迸る。
一瞬全員の動きが止まる、その間に俺は動く。
「『飛雷身』、『放電』」
まずは群れの中にある空白の部分に移動し、自分を中心に強力な放電を使う。
(三分の一は死んだだろう、あとは)
ほんの少しだけユニークスキルを発動させ身体強化する。
(少しずつ潰すしかない)
短槍でゴブリンの頭を潰し、狼の頭に短槍を突き立て、近づいてきた蛇を短槍で薙ぐ。
そうやってここいらにいる魔物全てを排除する。
「さて、大丈夫だったか?」
魔物を総て排除し終わると固まっている五人に近づく。
「え、ええ、大丈夫です」
以前、町でナンパされていた少女が反応してくれる。
確か名は……
「ソフィア・テラナラスだったか」
「私のことをご存じなのですか?」
「ああ、少し前で町でナンパされているのを遠目に見ていた、そのときそこのアーク・ファラクスもいたよな?」
「あ、ああ」
「ほかはカリナ・イシュタリナ、オルド・バーフール、リズ・アーラニルで合っているか?」
「「「はい」」」
全員がいることを確認すると、現状を説明する。
「だから現在は騎士団が来ている、だが人手が足りないから俺が協力したわけだ」
「つまり、あんたは俺たちを助けに来たわけか」
……この男は、威圧してまで教えてやったのに未だに学習してないのか。
「馬鹿!?すみませんバアル様」
「カリナ!?なにすんだよ!」
女の方は何が悪いのかを理解しているようだが、仕方ない。
俺はオルドという少年に近づく。
「フン」
「ガッ!?」
オルドという少年を殴りとばす。
「なにすんだ!!!」
「理不尽な暴力に怒ったか?でもなこの国では貴族と平民には超えようもない格差がある」
周りの4人が動こうとするが威圧して止める。
「だから、俺たち貴族はお前が敬語を使わなかったという理由で処刑することすら許されている」
現にこの数年で似たようなことを何回か聞いたことがある。
「わかるか、貴様の言動でこの場にいる全員が処罰の対象になりえることもあるんだぞ。わかったら今後の言動には注意しろ」
「そんな理不」
「オルド、やめろ!」
オルドが文句を言おうとするのをアークが止めに入る。
「申し訳ありませんバアル様、今回はなにとぞ、この馬鹿の言動は大目に見てやってくれませんか」
そう言って頭を下げる。
「(こいつは理解できているな)わかった、今回は咎めは与えない。だが次はない」
ここが落としどころだろう。
にしても
(親から貴族の対応などは教わってないのか?)
このオルドという人物の思考が歪だ。
この国にいるのならば少なくとも貴族にこのような言動はまず取らない。
貴族に恨みを持つのならばわかるが、その場合は敵意などを見せるだろう。だがこいつはそんな気配すらない。
今でも戸惑いの方が大きいぐらいだ。
「あの……」
「ん?ああ、では移動するぞ」
俺は5人をつれて戻ろうとするのだが。
オオオオオオオォォォォォーーー!!!!!




