晩餐と製作依頼
そのあと店を出るといい感じに日が暮れていたので屋敷に戻るのだが。
「バアァアアルーーー!なんで言うことを聞いてくれないんだぁーーーー!!!!」
帰ると父上が涙目で泣きついてくる。
「晩餐までには戻ったのでいいじゃないですか」
「たしかにそうだが、たまにはちゃんと言うこと聞いておくれよ」
「わかりました、今度から気を付けます」
とりあえず父上が落ち着くのを待つ。
「で、晩餐の件はどうなりましたか?」
「ああ、今日から三日間王城で晩餐間を開くのが決まった。で私たちは2日間だけ参加するつもりだ」
「わかりました」
「では着替えてから王城に向かうぞ」
ということで着替えてから王城に来たのだが。
「バアル様、私はマラク家の長女、エレナと申します」
「私は、カリナと申します。グウィーン家の者です。もしよろしければ今度領地にお越しくださいませ、持て成しますわ」
「ずるい!私はルイーゼと申します。よろしければ王都を探索しませんか?」
なぜだか俺に女の子たちが集まってくる。
「失礼、お誘いはうれしいのですが何分多忙で今度機会があったら」
笑顔を作り相手にする。
なぜだがこれでも女の子は喜んでいるみたいだ。
「父上これはどうなっているのですか」
なぜこんなことになっているのか父上に尋ねに来た。
「ああ、あの人だかりについてか」
「そうです」
「……懐かしいな昔は私もそうだった」
「…………」
その腹で?
「私もずっとこんな感じだったわけではないんだよ?」
「……で?」
「疑っているね…………まぁ、簡単に言うと君の婚約者に名乗りを上げようとしているんだよ」
「5歳からですか?」
「そうだよ、時間がたてば絆も深まることが多いからね早めに縁を結ぼうとしているんだよ」
マジかよ、子供のころからそんなことをするのか。
「まぁ、うちは公爵家だからね、ただでさえ権力狙いでの女性が多いからね……………加えてバアルはかっこよく、ユニークスキル持ちだからね」
「カッコいいですか?」
(…………そういえば転生したから顔も変わったんだったな)
前世の記憶に引きずられて自分は不細工だと認識し続けている。
「で、どうだ?気になる子はいるか?」
父上はニヤニヤしながら聞いてくる。
「残念ながら、下心満載で近づいてこられても」
「ふむ、惚れている子も何人かいるんじゃないか?」
「外見だけで判断する女性に恋愛感情を持つ、なんて俺には考えられませんね」
「残念だね、縁談は山のように来ていたのに」
「全部断っておいてください」
「理由はどうする?」
「俺は修行に忙しくほかに時間を費やしたくないからとでも言っておいてください」
「わかった」
俺は近づいてくる女の子をあしらいながら料理を食べている。
ちなみにこの晩餐会は立食形式をとっている。
「体調は治りましたか、バアル殿」
声を掛けてきたのは紫紺の髪が特徴のエルド殿下だった。
「ええ、おかげさまですっきりとしましたよ」
「それは良かった」
俺は警戒しながら話を続ける。
「清めでバアル君は自分が終わったらすぐに神殿を出ていきましたから心配していました」
「ご心配をかけて申し訳ない」
「いえ、元気なら問題ないです」
何を考えているのか、本当に心配して声を掛けたなんてことは無いだろうし。
「それで殿下、ご用件は何でしょうか?」
「……少しあっちで話せるか?」
俺は誰もいないテラスに来ている。
「それでもう一度聞きますがご用件は何ですか?」
「……ゼブルス領では魔道具が有名だったな」
「そうですね、特産として広く認識されているそうで」
「たしかに魔道具はとても使いやすく便利だ。だがなぜ武器は販売しないのだ?」
「魔道具は誰でも手軽に使えるのが利点です。魔道具を武器に転換してしまう、それは誰でも気軽に人を傷つけられる道具に他なりません」
「つまり武器の魔道具は作らないと?」
問いに頷く。
なんとなく要求はわかった。
どうやら武器の魔道具を作ってほしかったみたいだ。
「残念ですが」
「では防御用の魔道具を作ることはできるか?」
「防御用ですか……」
やろうと思えばできないこともないが……
「それは毒などではなく戦闘でということですよね?」
「そうだ」
「……わかりました、何とか作ってみようと思います」
「おお、それはありがたい。値段は言い値で払うからよろしく頼む」
こうして一日目の晩餐会が終わった。