急がないとまずそうだ
俺とリンは森の中を駆ける。
(これで死なれたら目覚めが悪すぎる)
リンの最高速度に合わせて移動している。
そしてキャンプ場に到着するのだが。
「荒らされていますね」
テントは崩れて、食器は散乱して、食料には獣の歯形がついている。
「だが血痕がないってことは少なくともけがを負ったわけではないだろう」
証拠に多くの足跡がキャンプ場とは逆の方向にいくつもある。
「なんでキャンプ場の方に逃げなかったんだ?」
普通なら教師や護衛と合流する方向に逃げるだろう?
だがその理由が判明した。
フゴ~~~
鼾のような声が聞こえてくる、それも教師のキャンプ場の方向から。
姿を現したのは二足歩行した気持ち悪い豚だ。
「オークか」
――――――――――
Name:
Race:オーク
Lv:
状態:興奮
HP:220/220
MP:70/70
STR:18
VIT:23
DEX:12
AGI:15
INT:3
《スキル》
【脂肪鎧:】【悪臭:】【剛腕:】【貪食:】【嗅覚強化:】【吸収:】【夜目:】
《種族スキル》
【異種族交配】
《ユニークスキル》
――――――――――
普通の子供なら勝てる相手ではない。
ブゴーーー!!!
オークはリンめがけて突進するが。
「近づくな獣が」
いつの間にかリンはオークの後ろに移動しており、オークはそのまま上下に分断された。
「さて、こいつも急速に発生した魔物だな」
証拠にダンジョンのように体の一部が消えていく。
「さて」
消えていくのを尻目に見ながら痕跡を探す。
「バアル様」
「どうした?」
「これを」
リンが見つけたのはキャンプから離れていく足跡だ。
それも
「別々の方向に逃げたのか」
一つは3つの足跡があり、もう一つは5人の足跡がある。
「どうしますか?」
「多分だけど貴族と平民で逃げ出したんだよな」
組み合わせで言うとそう推測したんだが。
「俺が5人の方を追って、リンは3人の方向に行ってもらうがいいな?」
逃がす人数が多いほど必要な実力は上がっていく。
「わかりました」
ということで二手に別れてそれぞれ追跡する。
(おいおいおい、どこまで奥に進んでいくつもりだよ)
このまま行ってしまうと俺が煙を炊いた場所にたどり着く。
促進剤を使った場所なら魔物がいる頻度も跳ね上がるだろう。
「たく、間に合ってくれよ」
足跡を辿っていくのだが途中から木がなぎ倒されたり、岩が砕かれたりしていてどれほどの戦闘が起こったかを物語っている。
(この戦闘跡からしてオークよりも強い魔物が生まれたのは確かだな)
オークならばこのような破壊の跡は残せない。
(魔法も授業で習った物しか使われていない)
おそらく学生が使ったものだけしかないのだろう。
これらの事から魔物は物理特化だろうと予想する。
オオオオオオオォォォォォーーー!!!!!
「あっちか」
声のする方に急いで向かう。
バアル様と別れて三人の足跡を追う。
「ここは……」
どうやら私たちがキャンプしていた川下にたどり着いた。
そこから足跡は私たちのキャンプ場の方向に向かっている。
(まだ真新しい、ということは近くにいるはず)
足跡が出来ている場所の砂利は乾いていないことからそう判断する。
足跡を追っていくと岩場にたどり着いた。
(まずい、ここは足跡が残ってない……………だけど)
岩盤ならば振動はある程度響く、それを頼りに……。
「見つけた」
微かにだが三つの振動を見つけることができた。
急いで移動すると崖の窪みに身を潜めている三人がいた。
「大丈夫?」
「ひ、人だ!」
「よかった!」
「助かった~」
三人は擦り傷などの小さな怪我はあったのだが大きなけがなどは無く問題がなかった。
「ひとまずここを出ましょう」
「む、無理だ!」
「どうして?」
「外にはあいつらが」
三人は外へ出たがらない。
「あいつらとは?教えてください」
すると三人からポツポツと話し始めた。




